志進2016.07

孤立主義の潮流に立ち向かい「分かち合い」モデル構築の議論を

2016/07/19

英EU離脱に見る世界の現状

企業や金融が拡大・成長をめざす道に、寄り道や後戻りという選択肢が必要になっているのではないか。グローバルレベルで需要をいかに奪い合うかという競争の反動により、経済格差が発生していること、移民・難民の拡大により雇用を奪われることに国民が反発し、エスカレートすれば、暴力をも誘発する事態にもなっている。アメリカ大統領選にみる世論の現状、イギリスのEU離脱等にも表れているとおり、世界は排外主義・孤立主義的な色合いを強めている。

人間の本能とも言うべきか、経済的豊かさを求める行動は収まらない。帝国主義化における侵略や二度の大戦も、大企業が世界を股にかけて活動することも、タックスヘイブンにペーパーカンパニーをつくることも、その背景は同じだ。それに対し、何らかの規制や秩序を形成すれば、自らのアイデンティティーを失うことに反発する者が出現する。今回、規制や秩序を形成した者がEUで、反発した者がイギリスということになった。成長を求めて国外に展開したが、成長の果実を共有するためにやってきた移民は受け入れられないとは、虫のいい話にも聞こえる。一方、EU側に問題はないのであろうか。

世界的に需要が減っている中、既存の社会システムのもとで成長を無理やりにでも持続させなければならないのだろうか。翻って、日本では、財政出動により円安・株高が効果を発揮したが、トリクルダウンが機能しないことは明らかとなった。それでもなお、消費税増税を先送りした上に、「アベノミクスのエンジンを吹かす」とし、財政出動することを模索している。必要以上の速度も出せない車に、借りてきたガソリンを入れて、ガタガタな「この道」を安倍政権はいつまで走らせるのか。将来の国力に影響する経済格差・教育格差のようなガタガタ道を補正しなければ意味はない。

負担をどう分かち合うかパラダイムシフトへ議論を

先の伊勢志摩サミットで、財政出動を主張した日本に対し、ドイツのメルケル首相は財政規律を維持すると主張した。第1次大戦後に招いた膨大な赤字が国の混乱を招き、第2次大戦の引き金になったことが念頭にあるのか、負担をいかに受容するかということに向き合っているように見える。日本は、右肩上がりの成長モデルから抜け出せない為政者が、負担を分かち合うことを避けてきた結果、GDPに対する債務残高が世界最大の2倍以上の水準という爆弾を抱えている。

「負担をどう分かち合うか」という議論が起こる将来、勇気をもって、戦後の成長モデルからのパラダイムシフトができるのか、労働組合においても、同一労働同一賃金、長時間労働の是正とワークシェア、定年のあり方などの働く期間の問題等の課題について、大いに議論しておく必要がある。EU離脱派のような後悔が起きないように。

柴田 謙司 情報労連中央本部書記長
志進
特集
トピックス
常見陽平のはたらく道
ビストロパパレシピ
渋谷龍一のドラゴンノート
巻頭言
バックナンバー