志進2017.05

モノを言わせぬ監視社会につながる恐れ
「共謀罪」法案に反対する

2017/05/17

「一般人は対象にならない」保証はどこにもない

先月から組織的犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」にかかわる法案の審議が衆議院法務委員会で始まった。安倍首相は「テロ対策のため、法案の成立は必要」と述べており、マスコミによっては、本法案を「テロ準備罪法案」と銘打ってはいるものの、犯罪対象とされる277件のうち6割がテロと無関係である。法案の本質は一般市民を巻き込んだ監視社会、モノを言わせぬ社会につながる危険をはらんでいるものと言わざるを得ない。

政府は、法案の対象を組織的犯罪集団と規定し「一般の人は対象にはならない」と答弁しているが、あくまでも捜査当局の判断が尊重される。一般人が対象にならない保証はどこにもなく「疑わしきは罰せず」とする基本原則すら覆るかもしれない。火もなく煙すら出ていないにもかかわらず、「この人はある組織とつながっている」と架空のタレこみにより、SNS、GPS、カメラ、盗聴等のあらゆる手段・ツールにより監視の対象になる可能性は免れない。いっそのことスマホを持たない方がいいという人も出てくるかもしれない。情報・通信を扱う産業に携わる私たちには皮肉なことだとしか言いようがない。

沖縄の米軍基地建設反対をめぐって、運動のリーダーである山城博治さんが威力業務妨害罪などで逮捕・起訴されたことは記憶に新しい。情報労連は、毎年6月に沖縄平和運動を展開しており、そのこと自体に問題はないと思いたいところであるが、行動のあり方、講演の題材が「威力業務妨害罪にかかわる“準備”」として取り締まられる可能性も捨てきれない。その可能性だけで、「沖縄の実相を認識するために参加しよう」とする参加者の気持ちを萎縮させることも十分にあり得る。

異議を唱えられない社会で民主主義は機能しない

犯罪は断じて許されるものではない。ただ、あえて述べるが、犯罪対象の“準備”にかかわっているとして嫌疑をかけられる恐怖が流布された社会が、本当に素晴らしいのだろうか。これまで現政権は、戦争ができる国にするため、関連する法案を成立させてきていることからしても、今回の「共謀罪」については、名前を変えた戦前の治安維持法だとする識者も多い。政府のやることに異論を唱えなくなった社会の末路を、およそ70年前に経験してきたばかりであり、忘れてはならない。

民主主義は、主権者の意見を政治に反映させるものとして機能されるべきものではあるが、いわれもないレッテルを貼られるくらいなら、異を唱える表現や行為は自制した方がましであるという考えが拡散すれば、民主主義は機能しなくなるのかもしれない。担当大臣ですら理解できていないものが国民に理解できるはずもない。そのような「共謀罪」法案は再度廃案にし、現行法に照らしてテロ対策がどうあるべきか、その点に絞った議論を行うべきである。

柴田 謙司 情報労連中央本部書記長
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