【第7編】労働組合〜ジェンダーギャップ最劣悪国でどうしますか〜カンターの本
労働組合のジェンダー平等推進計画の担当者に会うと、「クリティカル・マス」を意識していると言います。クミジョも一気に増やすための目標です。
クリティカル・マスって何やねん。手繰っていくと、ハーバード大学のカンター(Kanter,R.M.)の説とされています。組織の中でマイノリティーが一定割合を超えて勢力を伸ばすと、ようやく組織が変わるという理屈です。その境目がクリティカル・マスです。「黄金の3割」という言い方もありますから、30%なのかなと思っていました。
1970年代の古い本ですが読んでみると、いろいろな発見がありました。アメリカ企業の中に出現した女性は、最初は「お飾り」で、男性に支配されています。でも、20〜35%に増えると、ようやくマイノリティーになり、40%を超えると男女ともサブグループになります。
しかし、すんなり割合が高まるわけではなく、マジョリティーの男性が徹底的に女性割合を抑え込みます。40%までは、女性は軽んじられ、偏見にさらされ、分断され、性差別を受けて、増えていかない。女性にとって職場は真っ暗闇の底なし沼みたいなものです。だから、女性の責任ではなく、組織の能力の問題だというのです。
カンターは、実はクリティカル・マスという言葉は使っていなくて、しかも4割が境目です。もっと驚いたのは、社会学者なのに経営学の組織論の古典を総動員して、明らかに男性リーダーに向けて書いていることです。わかっとんのかいな、組織をつくるアンタら男性の責任なのだぞ、と。
この説はアメリカ企業の話ですが、日本の労組にもすんなり応用できます。クミジョって何だよ、無理だろう、育っていない、悪平等だ、増やすって誰が決めたんだ、迷惑だ、ちょっと違うんだよなあ……。そう言いながら絶対に40%に達しないよう見張っているクミダンはいませんか? まだマイノリティーになったかどうかも怪しいクミジョにとっては、労組は真っ暗闇の「1970年代のアメリカみたいな」組織のままです。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。