常見陽平のはたらく道2025.01-02

加齢について考える

2025/01/16
年が明けた。今年もみんな等しく年を取る。一年の初めに加齢について考えてみる。

「加齢」について考える。「年齢を重ねる」ことは人間が生きている限り必ず直面することだ。ただ、この人間としてごく当たり前のことについて変化が起こっている。加齢とは身体的、精神的なものだけでなく、社会的、組織的なものである。そして、自分でコントロールできる要素が増えている。健康、美容においては「アンチエイジング」という言葉もある。社会的、組織的には「生涯現役」という言葉もある。見方を変えると、年を取ることにあらがうことができる社会であり、年を取らせてくれない社会でもある。

今どきの中高年は、見た目も、健康面も昔よりも10年若いと言われる。もちろん、世代内での差は存在する。私の髪色は金髪に近い茶髪である。40代以降に、大学の教員になってからむしろ髪色が明るくなった。実は理由の一つは「加齢対策」である。髪色が明るいと白髪が目立たないのだ。白髪染めをするくらいなら、明るくしてしまおうという発想だった。会社員時代の同期と会った際に話題になったのは「白髪染めをいつまで続けるか」だ。若々しく見える同期は、実はかなり前から白髪染めを常用していたのだという。

年齢によるファッションの差はなくなってきていると言われている。オフィスでも服装のカジュアル化が進み、ジャケットにカットソーに、デニムのパンツにスニーカーというスタイルが増えた。見た目をどうするかということは、本人の意志、創意工夫によってなんとかできる。髪色、ファッションをどうするかなど、まさにそうだろう。

「おっさんくさい」という言葉がある。この言葉は見た目ではなく、言動や価値観に関する意味になった。例えば、セールの時期になり欲しかった服が安くなったときに、買いあさり、「自分にご褒美」などと言い出すのは立派な「おっさんくさい」しぐさである。なお、「自分にご褒美」という言葉を考えたのは、作家であり現・日大理事長の林真理子氏である。飛行機に乗る際に思わず写真を撮り、SNS投稿する様子などは「エアポートおじさん」などとやゆされる。おっさん、おじさんの価値観が職場で猛威を振るっていること、一部はげたを履かせてもらっていたのは事実として、おっさんならたたいていいというのもいかがなものか。

問題は社会的、組織的加齢だ。50代以降の働き方は大きく異なる。個々人の差もあれば、勤務先の制度、風土にもよる。「黄昏研修」と呼ばれる今後のキャリアに関する研修を受ける。早期退職制度や、役職定年などが待っていることもある。だんだん、役職も年収も下がっていくという人たちがいる。一方、役職定年を廃止するとともに、ポジション、担当業務、収入など働き方を個人の意志で選ぶことができる企業も登場している。

年下が上司になることも増えている。一方で、番頭として若い経営者や管理職のもとで活躍する中高年も増えている。スキルだけでなく、人脈、経験などを生かし、職場で活躍している。

自分で年の取り方を選ぶことができる社会になっている。年を取っても、働きがいを確保できる社会、年を取ることに希望を持つことができる社会になることを願ってやまない。おっさん、おじさんいじりもそろそろやめてほしい。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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