特集2025.01-02

情報労連の2025春季生活闘争
産別・加盟組合は何をしているのか/何をすべきか
結成から約10年 春闘交渉本格化への道のり

2025/01/16

ケーブルテレビ大手JCOM株式会社の労働組合であるジェイコムグループ労働組合は、2011年の結成以降、春闘とその要求実現のために一歩ずつ努力を積み重ねてきた。春闘交渉が本格化し、賃上げを獲得するまでの約10年の道のりを紹介する。

結成から約1年後の2013春闘。ジェイコムグループ労働組合は、正社員登用の制度化や時間外労働のみなし労働時間制の見直しなどを要求し、一部で成果を勝ち取った。

しかしその後、会社の窓口と労働組合執行部との距離が広がり、春闘交渉が停滞した。事務折衝は続けていたものの、労働組合に会社の経営状況や人事制度に関する情報が少なかったことも影響し、本格的な交渉を展開できなかった。

流れが変わったのは、2022春闘。この年の春闘で賃上げ水準を明記した要求書を会社に初めて提出した。背景には、2021年から新しい人事制度がスタートしたことがあった。人事制度を巡って会社とのやりとりが増え、その中で会社の制度に対する理解が深まった。それが具体的な要求提出に結び付いた。この時期、会社が「働き方改革」に取り組んだり、新制度の導入で従業員の間に不安の声が広がっていたりしたことも、労働組合が声を届けやすい環境につながった。

しかし、この年の春闘は、ゼロ回答だった。労働組合の加美秀樹委員長は、「この段階では賃上げが世の中的に広がっておらず、労働組合としても要求の根拠を固めきることができなかった。会社との交渉がかみ合わなかった」と振り返る。

この反省を踏まえ、翌23春闘では、要求の根拠となるデータをより精緻化して交渉に臨んだ。自社の財務諸表や同業他社の状況を分析するとともに、組合員アンケートの結果を会社にも伝えた。社会的にも賃上げの流れが広がり、組合員からも賃上げを求める声が高まっていた。また、秋口から春闘交渉の準備を始めたことも奏功した。さらに、会社の体制が変わったことも影響した。風通しが良くなり、労働組合の声が社長などの上層部にも伝わるようになった。

その結果、23春闘では、満額回答とはいかなかったが、定期昇給相当分2%とベア相当分1%を含む3%の賃上げを勝ち取った。

加美委員長は、「春闘交渉のテーブルにようやく着くことができた。社会的な賃上げの機運にもうまく乗れた。職場の管理職や従業員からも労働組合に対する関心が高まり、追い風を感じた。このことで未加入者にも自信を持って説明できるようになった」と話す。

翌2024春闘では、7%の賃上げを要求。結果的に5%の賃上げを勝ち取った。労働組合の三浦正和事務局長は、「要求段階では、人材確保や人的資本への投資など賃上げの考え方を整理し、会社の社会的な責任を果たす面からも要求した。自分たちの会社でも賃上げができるという実感を得られた」と話す。

25春闘では、賃上げを継続して訴えるとともに、65歳定年への見直しなどを要求する方針だ。

今後の課題は、組織拡大だ。「まだまだ少数組合なので仲間づくりが最重要課題。組合の成果をもっとアピールしていきたい」と加美委員長は話す。三浦事務局長は、「労働組合が声を届けることで会社が変わっていくということをもっと実感してほしい。組合員が増えるほど会社への説得力が増す。頑張って仲間を増やしていきたい」と意気込む。労働組合の地道な努力が処遇改善に結び付いている。

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