情報労連の2025春季生活闘争
産別・加盟組合は何をしているのか/何をすべきか2025春闘で情報労連は
どのような要求を掲げるのか

基本的な考え方
2025春闘を取り巻く情勢認識については、中央委員会議案書に詳細を記載していますので加盟組合の皆さんは、ぜひ議案書もお読みください。
その上で、揺れ動く国際社会の中で、日本経済・社会を安定させ、四半期にも及ぶ慢性デフレに終止符を打ち、経済・賃金・物価を安定的に上昇させる「新たなステージ」を定着させていかなければなりません。日本は、超少子・高齢化による生産年齢人口の減少などの影響により、特に中小企業での人手不足が深刻な課題となっています。連合の2024春闘では、33年ぶりに5%超えの実績となりましたが、中小企業との賃上げ状況の格差が広がっていることが課題となっています。この課題の背景には、労務費の価格転嫁などのサプライチェーン全体の成長・発展に向けた取り組みが道半ばとなっていることがあり、「人への投資」を継続的かつ積極的に行う必要があります。
2025春闘の要求を考えるにあたり、まず情報労連の2024春闘の要求と妥結結果を詳細に分析するとともに、総合労働調査や賃金実態調査などの各種調査結果との比較、加えて、今年度初めて実施した生活実感調査などの組合員の皆さんの生活実態など、多角的な検討を行うとともに、連合方針も踏まえて、すべての加盟組合が参加・結集し、未組織労働者も含むすべての労働者の「総合労働環境の改善」をめざす闘いと位置づけ、「賃金改善」の流れを継続し、「底上げ」「格差是正」「底支え」を図るべく春闘方針を策定しました。
全体的な底上げ
取り組みの重点として、大きく五つを掲げています。(1)は「全体的な底上げ」として、月例賃金改善を中心とした要求、(2)は「格差是正」として、中小加盟組合の賃金引き上げや「取引の適正化」に向けた取り組み、(3)は「底支え」として、すべての働く仲間のセーフティーネットとした「情報労連最低賃金協定」、(4)は「働き方の改善」に向けて「人への投資」につながる11項目の取り組み、(5)はすべての加盟組合が春闘に結集できるよう「裾野を広げる」取り組み──を提起しました。
すべてについてご紹介することは紙面の都合上かないませんので、強調したい点のみをご紹介したいと思います。
まず(1)の「全体の底上げ」については、冒頭にも記載したとおり、2024春闘の要求と妥結結果ならびに各種調査や情報通信産業や情報サービス産業などの賃金センサスなどとも比較を行うとともに、生活実感調査から物価上昇の影響や家計収支の実感なども加味し、月例賃金改善を昨年と同様の定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)の確保を前提に、3%以上(定期昇給相当分を含め5%以上)とし、各単組の置かれた状況等を踏まえつつ、積極的な要求によるさらなる賃上げをめざす要求としました。数字的には昨年と同様ではありますが、まずは掲げたこの要求を全体でしっかり確保することにこだわりたいと思います。
次に、(2)の「格差是正」では、サプライチェーン全体の成長・発展に向けて、労務費の価格転嫁や取引適正化に向けた具体的な取り組みとして、連合作成の「取引適正化・価格転嫁に関するチェックリスト」を活用した対置企業の現状や課題の把握や、2022春闘から「パートナーシップ構築宣言」への参画を要請し、2024年11月時点で情報労連加盟組合の対置企業は130社を上回るなど、2024春闘で大幅に増加したことから、宣言が現場段階までしっかり浸透し実施されているかのチェックなどを強化する取り組みが必要だと考えています。
また、情報労連には多くの中小企業の加盟組合の仲間もいることから、人手不足への対処など、労使で積極的に論議し、労働条件改善につなげる環境整備を行っていくことを支援していきたいと考えています。
企業規模間格差是正に向けた取り組みとしては、中小企業に対置する加盟組合は、連合が示す「企業規模間格差是正に向けた目標水準」(表1)および、情報労連「2025春闘・賃金水準指標」(表2)などを踏まえ、賃金の引き上げをめざします。


「つながらない権利」も要求
次に、(4)の「働き方の改善」に向けては、『情報労連21世紀デザイン』に掲げる「時間主権の確立」を意識した労働時間に着目した取り組みを展開したいと考えています。「時間主権」とは、暮らしやすさや生きがい・自分らしさを実感して生きていくために「時間」を捉え直し、まず「時間」の内実(時を過ごすこと、時間を消費すること自体)に価値を置くことで、個々人の自立・自律的な生き方の充実を可能とする条件整備と定義しています。
これは本誌10月号の特集で圷由美子弁護士が提唱している「生活コアタイム」にも通じる考え方であり、時間に価値を見いだすことで「人たるに値する生活を営む」ためにいかに時間を確保し、働く人のウェルビーイング向上を実現していくのかということでもあります。そのためには、「情報労連・時短目標」を踏まえた労働時間の適正化や年間休日の拡充など「時間」にこだわった要求を検討することが重要です。
これまでの春闘でも所定労働時間を短縮する要求を勝ち取った加盟組合などもあります。生産性の向上を「賃金」だけではなく「時間」に置き換え、時間の価値を高めることで実質的な賃上げとなる好事例だと認識しています。
また、2024春闘から情報労連の統一要求として掲げた「つながらない権利(勤務時間外の連絡ルール)」については、一部加盟組合の前進にとどまり、多くの加盟組合で具体化にまで至りませんでしたが、これら取り組みについても「時間主権の確立」を意識した取り組みですので、労使でしっかり論議していただきたいと考えています。
中長期的視点を持って臨む
最後に、(5)の「春闘の裾野を広げる」取り組みについては、すべての加盟組合が賃上げを中心に「最低1つの自主的要求」を掲げていただきたいと思います。2024春闘でもブロック支部加盟組合の要求提出数は伸び悩んでいます。企業業績など置かれている環境はさまざまではありますが、賃上げ要求のみならず「働き方の改善」なども含めて要求確立に向けて中央本部も事前の春闘方針説明会の実施や春闘スタートアップセミナー等を開催するなど、加盟組合の春闘要求の策定・確立にブロック支部・県協と連携して支援していきます。
2025春闘では「賃金も物価も上がらない」という社会的規範(ノルム)を変えるためにも、中長期的視点を持って「人への投資」と月例賃金改善をめざし、ともにがんばりましょう。