特集2025.01-02

情報労連の2025春季生活闘争
産別・加盟組合は何をしているのか/何をすべきか
情報労連は春闘期間中に何をしている?
要求づくりから団体交渉まで
加盟組合を積極的にサポート

2025/01/16
ニュースで「春闘」という言葉を聞くことはあるかもしれないが、そこで産業別労働組合がどのような活動をしているのかは世間にあまり知られていない。要求づくりから加盟組合支援、妥結後の活動も含めて紹介する。
山崎 広幸 情報労連中央執行委員

情報労連の方針確立まで

最初に、情報労連が春闘方針を確立するプロセスから見ていきましょう。

まず、例年10月中旬、連合が各種統計や国内情勢などを踏まえて春闘基本構想を提起します。その後、連合の春闘中央討論集会が開催され、12月上旬の中央委員会で連合の春闘方針が決定されます。情報労連は、安藤委員長をはじめ執行委員を連合の各種専門委員会へ派遣するなどしてこのプロセスに積極的に参画しています。

一方、情報労連の方針づくりは、連合の基本構想を踏まえつつ本部の政策局が中心となって策定します。そこでは情報労連の加盟組合の実情を反映した方針にするため、情報労連独自の調査や昨年の結果なども加味して方針づくりが行われます。

ポイントは、各労組のこれまでの春闘結果の積み重ねが翌年の春闘方針の基礎となるところです。方針づくりの段階では、本部加盟組織やブロック支部と政策委員会などで何度も論議します。

策定プロセスでは賃上げ要求に多くの時間が費やされますが、時代に合わせた制度を情報労連統一の取り組みとして要求する方針も出されます。例えば、「つながらない権利」や「勤務間インターバル制度」などが挙げられます。「情報労連最低賃金要求額」や「情報労連・時短目標」についてもこのプロセスを経て策定されます。

こうした議論を経た上で、例年1月末頃に開催する中央委員会で情報労連の春闘方針を決定します。

加盟組合の要求づくり支援

情報労連の春闘方針が決定すると、その次は加盟組合が自分たちの具体的な要求内容を確立します。

それぞれの加盟組合は、雇用形態・職務・年齢など個々の事情を踏まえ、経営状況などを勘案し、要求を組み立てます。中小企業が多いブロック支部加盟組合は、本部加盟組織や連合全体の妥結状況を踏まえて要求を組み立てる組織もあります。また、会社の決算時期や各種制度の始期などを勘案し、夏季や秋季に取り組む組織もあります。

要求づくり段階でも情報労連は加盟組合をサポートしています。

2025春闘の場合、ブロック支部加盟組合のリーダーを対象に1月中旬にオンラインで春闘方針を学ぶセミナーを開催し、中央委員会終了直後の1月31日〜2月1日にかけて「春闘スタートアップセミナー」で要求獲得に向けた意識醸成や業種別の意見交換を行う予定です。

これまで開催していた業種別グループ会議(情報サービス、運輸、医療・福祉、通信建設、製造、ビルメンテナンス、携帯電話販売店、印刷の8業種)は、「春闘スタートアップセミナー」の中でグループ別に情報交換を行います。また、8業種以外の加盟組合も情報交換を行います。

また、スタートアップセミナーに参加できない加盟組合も各ブロック支部で地域ごとに開催されるブロック支部加盟組合会議に参加し、春闘への意識合わせや要求などについて認識合わせを行います。さらには個別に県協単位でキャラバンを実施するブロック支部・県協もあります。このようにしてブロック支部・県協と一体でブロック支部加盟組合をサポートしています。

要求を提出すると、本部加盟組織は3月中旬に設定される情報労連集中回答日(連合のヤマ場内で設定)をめざして交渉を積み重ねていきます。その後は、中小の加盟組合の交渉が本格化しますが、すべての加盟組合の交渉が決着するまで半年近くかかることもあります。

団体交渉もサポート

次に団体交渉の進め方についてです。会社との作法や交渉のノウハウが脈々と受け継がれている組織もあれば、毎年、取り組み方法を考えている組織もあります。新規結成の組織については交渉の基礎がないため、会社との関係のつくり方や要求・交渉の段取りから始めなければいけません。本部の組織局やブロック支部・県協は、加盟組合の課題解決に伴走して支援しています。

情報労連が加盟組合の団体交渉に同席するケースもあります。会社回答の都度、持ち帰って相談して次の手を考えることもあります。最終的に妥結への判断は当該執行部の決断となりますが、交渉の記録と妥結内容は必ず書面確認を行うよう伝えています。また、交渉の状況・経過や妥結結果などを組合員に共有し、次へ進んでいくことが大切です。

本部加盟組織の大半は妥結時期が情報労連集中回答日前後となります。情報労連は各組織の交渉状況や妥結結果を共有し、連合に報告したり、加盟組合に速報を展開したりといった活動を展開しています。昨年からは情報労連の窓口を担っている加盟組合役員にコミュニケーションツール「TUNAG」でも各種情報の共有を行っています。

加盟組合の要求と妥結結果の状況は、ブロック支部・県協と当該組合の間でやりとりされ、その模様はデジタルツール(キントーン)によりステータス管理と集計を「見える化」しています。

連合と情報労連が把握する項目は延べ226項目にもわたり、単に月例賃金といっても算定基礎・前年実績・要求実績に妥結の率・額や、制度面の要求・妥結など詳細に確認し記録されます。一つひとつの内容を確実に確認していくことが春闘の成果として翌年へつながる数字になります。加盟組合にはその意義を伝え、積極的な情報共有を要請しています。

春闘の裾野を広げる

情報労連にとって加盟組合の春闘の裾野を広げる取り組みが急務です。24春闘では、168のブロック支部加盟組合のうち、春闘を見送りする(要求しない)組織が55組織(32.5%)ありました。

それぞれの事情があることは十分認識するものの、賃上げをしなければ人材確保が困難になっているという経営の目線と、物価高の中で賃金が変わらないことは事実上の賃下げになるという生活者の目線を忘れてはいけません。また、要求が行えていない組織には会社にモノを申してはいけないのではないかという労働側の遠慮や経営側の無理解が労使関係の形骸化になり、それが労働組合の衰退につながってしまうことも懸念しています。要求=団体交渉は労働組合しかできません。ベースアップがダメであれば一時金、それがダメでも労働時間や休暇や制度などと2024春闘よりも一つでも多くの加盟組合が要求と前進的な妥結ができるよう取り組んでいきます。

春闘は毎年の積み重ねです。要求を下回る回答やゼロ回答などがあったからといって諦めることはありません。会社事業も右肩上がりが続くわけではありません。その会社が事業を続け、働く組合員・社員がいれば翌年の春闘がやってきます。また、真に必要な要求であれば春闘の時期にこだわらず団体交渉を行うこともできます。反省を生かして次に挑むことが重要です。次の春闘へ要求の組み立て方や交渉のプロセスを見直してみる、水面下も含めた会社交渉の下地を強化するなど、できることはあるはずです。すべての加盟組合が要求し、前進的な決着が図れるよう信頼される組織として加盟組合対応を行います。

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