情報労連の2025春季生活闘争
産別・加盟組合は何をしているのか/何をすべきか情報労連「最低賃金協定」の
取り組みの意義
賃金の「底支え」へ法定最賃に上積み

最低賃金とは
最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度です。最低賃金は、「最低賃金法」という法律で決められています。最低賃金額より低い賃金で契約した場合は無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。また、使用者が最低賃金以上の賃金を支払っていなかった場合、使用者は労働者にその差額を支払う必要があるとともに、罰則が適用されます。
最低賃金の金額は、都道府県ごとに設置されている、最低賃金審議会による審議を経て毎年改定されます。審議会は、公益委員・労働者側委員・使用者側委員で構成されていますが、情報労連が加盟する連合は労働者側代表として参加し、毎年の引き上げに注力しています。
最低賃金は、都道府県ごとに定められている「地域別最低賃金」と、特定の産業ごとに定められている「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。「地域別最低賃金」は、2024年10月以降、全国加重平均で1055円(時給)になります。
情報労連最低賃金協定の取り組み
情報労連では、最低賃金協定の取り組みとして、「情報労連最低賃金協定」(以下、労連最賃)と「企業内最低賃金協定」(以下、企業内最賃)の二つの取り組みで構成し、加盟組合に対置するすべての企業との間で、当該組織と連携し、いずれかの協定締結をめざしています。
とりわけ、労連最賃については、前述の地域別最低賃金近傍で働く仲間の底上げに資する取り組みとして、地域間格差の是正をめざし、地域別最低賃金に1円から10円程度の上積みを要求しています。
企業内最賃については、当該企業で働く労働者の底支え・生活保障をめざし、企業の賃金や産業全体の状況に基づき、より高い水準を要求するものです。
労連最賃協定の変遷
労連最賃は、「労働者全体の賃金水準を向上させるためには、低賃金労働者をなくすことが必要であり、多数の未組織労働者が存在していることからも、組織労働者の果たすべき社会的役割である」との考えに立ち、情報労連に集うすべての働く仲間のミニマム・セーフティーネットとして1968年にスタートしました。最賃協定では、金額と対象範囲がポイントとなりますが、全国一律の金額で会社が雇用する者に適用するという形でスタートしました。1988年には単純軽易な労働者を除くこととしましたが、1998年には協定の仕組みをすべての労働者を対象とする「労連地域最賃」と基幹的労働者を対象により高い水準を設定する「労連産別最賃」の2本立てへ移行しました。
労連地域最賃は、現在の労連最賃の原型ですが、すべての労働者を対象とし、水準は現在より高く、地域別最低賃金に10%上積みした設定としていました。
一方で、労連産別最賃は、基幹的労働者を対象として、より高い水準をめざし、情報労連に集う者として公正な賃金を求めていくことを志向しました。
しかしながら、基幹的労働者の定義として外形的な勤務時間などで定めていたため、単純軽易な業務に従事する労働者も対象となり、高い水準を維持することが困難になるなどの課題が生じました。その後、複合産別化したこともあり、労連産別最賃の適用業務を設定することが困難となり、2003年には、労連産別最賃は企業別最賃へ移行することとしました。当時は、通建連合と電話帳のみが移行し、それ以外は従来どおりとなりました。
現在の労連最賃協定へ
2009春闘においては、労連産別最賃を廃止して、労連地域最賃に一本化することとしました。これは、本来、高い水準で設定すべき労連産別最賃に対して、対象範囲を広くしたため水準を低く設定せざるを得なかったことから、労連地域最賃との逆転現象を回避するため、水準は地域別最低賃金に10%の上積みを図ることとし、ミニマム水準として700円の最低額を設定しました。
2011春闘では、地域別最低賃金に10%上積みする仕組みから、地域間格差の是正を目的に一定額の上積みに見直しを行い、ミニマム水準は廃止しました。
2015春闘においては、政労使で合意した全国平均1000円という目標をもとに組み立てを行い、地域別最低賃金に一定額ではなく、地域ごとに算出した額を上積みするという考え方に見直しました。
その後、2020春闘においては、地域別最低賃金の大幅な引き上げにより1000円を超える地域が発生したことや前年の地域別最低賃金の改定額に上積みする要求方式では効力が実質半年となってしまうことなどの課題を踏まえ、2021春闘では上積み額の算定式について、1000円をベースとするのではなく、指標となる額から算出する方式に見直してきました。現在もこの間の考え方に基づき、労連最賃の水準は、地域別最低賃金に地域間格差是正を意識した上積み額を加算するとの考え方のもと、設定しています。
最低賃金を巡る動向
地域別最低賃金については、2024年度10月の改定の結果、全国加重平均1055円に達しましたが、連合が掲げる「誰もが1000円」はいまだ実現していません。当該水準では年間2000時間働いても年収約200万円とセーフティーネットとして不十分な状態であり、最高額である東京の1163円でも年収約230万円であり、相対的貧困ラインが1286円であることからしても、いまだ地域別最低賃金は低く、地域間格差についても大きな課題です。
連合は、昨年12月に決定した最低賃金取り組み方針において、「2年程度で全都道府県で1000円以上」「中期的には一般労働者の賃金中央値の6割をめざす」としており、最低賃金の着実な引き上げを継続する必要があります。また、政府は、これまでの目標を大幅に前倒しにし、最低賃金「2029年までに1500円を実現」という目標を掲げ、最低賃金の決定プロセスの見直しも今後の検討課題とすることが確認されており、これらは今後の方向性に大きく影響を与えるものと考えられます。
情報労連は、これらの最低賃金を巡る動向に注視しつつ、取り巻く状況を踏まえた今後の情報労連最低賃金等のあり方について、次期定期大会に向けて検討を進めます。
その上で、2025春闘においては、この間の考え方を踏襲し、引き続き、加盟組合に対置するすべての企業との間で、「情報労連最低賃金協定」と「企業内最低賃金協定」いずれかの協定締結をめざします。加盟組合の皆さんのご理解とご協力をお願いします。