職場のダイバーシティ施策を進めよう
ジェンダー、LGBTQ、外国人材、ニューロ、年齢「理解進む」一方で職場の施策は停滞
同性婚の実現こそ必要


代表・理事長
調査データを全文公開
私たち「虹色ダイバーシティ」は2013年に法人化した翌年から研究者と一緒にLGBTQに関する調査を行っています。その一環として今年2月、「LGBTQの仕事と暮らし白書2026」を公開しました。今回の白書では、2022年、2023年、2024年に累計6593人のLGBTQとその周囲の人たちにオンラインで任意のアンケート調査を実施しました。3年分のデータを用いて量的な分析を行っています。
調査データに関してはウェブサイトで全文を公開しています(https://nijiirodiversity.jp/11584/)。というのは、国の調査の参考になってほしいという願いがあるためです。国が施策を行うには根拠となるデータが必要ですが、LGBTQを対象にした国レベルでの本格的な実態調査はまだ実施されていません。その際の参考になってほしいという願いを込めて調査票も含めて全文を公開しています。
変わらない現実
では、白書の中身を見ていきましょう。今回の調査の狙いには、「LGBTQへの理解が進んでいる」という一般的なイメージが定着する一方、その実態はどうなっているのかを明らかにすることがありました。2022年からの3年間でパートナーシップ制度を導入する自治体は増えましたし、2023年6月には「LGBT理解増進法」が成立・施行されました。さらに各地で同性婚裁判が実施され、その多くで違憲判決が出されています。こうした流れを受け、企業の取り組みがどう進んだのかにも注目しました。
調査をしてわかったのは、そうした一般的なイメージとは違って、取り組みが思った以上に進んでいなかったことです。例えば、2023年に「LGBT理解増進法」が成立しましたが、そのあとでも職場での「施策ゼロ」にとどまる割合は54.9%に上りました(グラフ)。これは法施行の前年の2022年から2.3ポイントしか減少していません。
さらに学校や職場でカミングアウトする人は増えていない実態もわかりました。加えて、2022年から2024年にかけて、学校や職場でトランスジェンダーに関する否定的な言説が増加していることもわかりました。差別的な言動が増えていることは、学校や職場における心理的安全性の低下にもつながります。そうした環境ではカミングアウトは当然難しくなります。調査では、差別的言動の多い学校・職場ほど、トランスジェンダー当事者のメンタルヘルスが悪いこともわかりました。このように、LGBTQに関する施策は、社会的なイメージとは違って思ったより進んでおらず、差別的な言動の増加に伴ってメンタルヘルスを悪化させる人がいまだ多くいる現状が明らかになりました。当事者の実感からすると自分の身の回りが変わっていない感じがするという声を聞いてきましたが、まさにそれを裏付ける結果になりました。
認定NPO法人虹色ダイバーシティ編
トランスジェンダーへの差別
職場において特に問題になるのは、トランスジェンダーに関する差別的な言説が増えていることです。国外では、トランスジェンダーに関する差別的な言動は体系化され、インターネットで流布されており、その動きは、第2次トランプ政権以降強まっていると感じます。そうした言説を日本で見聞きした人が職場においても同様の発言をしたり、職場のダイバーシティ施策に疑問を挟み込んだりすることがあります。こうした環境では当事者はカミングアウトしにくいことはもちろん、メンタルヘルスを悪化させます。企業にとって大きなリスクだと認識し、労働組合としても危機感を抱いてほしいと思います。
その意味で、今回の調査結果は、社会に対する警鐘だと捉えています。先進的な大企業ではe-ラーニングをはじめ社員に対する研修が進んできましたが、それでも差別的な言動を防げていません。そのため最近では、差別的言動が実際にあった場合の対応方法など、より実践的な対応をするための研修を、企業などを対象に行っています。加害者にならないだけではなく、傍観者にならないことが大切です。
残る制度の課題
カミングアウトしにくい問題の背景には、差別的な言動とともに制度的な問題もあります。最近では、異性パートナーと同じように育児休業を取得できる企業が増えてきました。しかしそこには課題も多く残されています。例えば、同性パートナーの場合、同性婚が認められていないため、カップルの一方は法律上の親になることができず、国の育児休業給付金の対象になることができません。休業補償がなければ仕事を休むのは難しいため、会社の制度を利用せず、カミングアウトもしないという人も数多くいます。また、育児休業だけではなく、介護の問題もあります。
先進的な企業としては、独自の取り組みを進めてきたにもかかわらず、カミングアウトする人が増えないことに対して、これまでの取り組みを問い直す動きもあるようです。しかし、その背景には、こうした制度的な事情があることを理解してほしいと思います。これらの課題は企業の独自制度だけでは対応しきれません。この問題を解決するためには、国が同性婚を法制化することが不可欠です。現状は、企業と国で二つの制度が存在し、従業員間に格差が生じている状態だといえます。そうした状態は、はっきりとよくないといえます。こうした格差の解消のためには同性婚の実現が必要です。
同性婚の実現こそ必要
同性婚に関しては、最高裁が大法廷での審理を決定しており、早ければ2026年度中にも結論が出る見通しです。ここで同性婚を実現できれば社会は大きく変わります。企業としても手間やコストをかけて独自の制度をこれからつくるより、同性婚の法制化を後押しした方が効率的です。労働組合も含め、同性婚の実現を積極的に後押ししてほしいと思います。
私自身、これまでの活動を通じて制度に対する考え方が変わりました。当初は、企業や自治体のパートナーシップ制度をうれしく思ってきましたが、今では不十分だと感じるようになりました。むしろ、パートナーシップ制度があることで、「同等ではない」という格差を実感することすらあります。法的な保障がないままでは、怖くて声を上げられない人も数多くいます。権利の保障のためにも同性婚の実現がどうしても必要です。
他方、同性婚の議論が進む過程では、差別的な言動が増えるということが国外の事例から報告されています。日本でも最高裁での審理が進む中で、そうした言説が広がる可能性があります。同性婚への理解は一般には広がっても、SNSでは一部の反対の声が大きく取り上げられることがあります。それに対して傍観者にならず声を上げてほしいと思います。
同性婚の実現は、社会を変える大きなトリガーになります。その実現に向けて一緒に行動してほしいと思います。
![情報労連[情報産業労働組合連合会]](/common/images/logo_ictj.png)

