特集2026.06

職場のダイバーシティ施策を進めよう
ジェンダー、LGBTQ、外国人材、ニューロ、年齢
高度外国人材が職場で抱える疎外感とは
個別性に基づくマネジメントの実践を

2026/06/15
日本人の正社員と同様の処遇で働く高度外国人材が増えている。そこには日本人と同じマネジメントをすることの課題がある。組織の成果を上げるためには何が必要か。識者に聞いた。
小山 健太 東京経済大学教授

平等と公平

日本企業が高度外国人材を採用する基本的な目的は、優秀な人材確保によるビジネスの発展です。とりわけ、少子高齢化で若年世代の人口が減少していることで高度外国人材を採用するニーズが高まっています。

実際、高度外国人材の人数は増えています。高度外国人材の多くを占める「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ就労者は、2021年の約29万人から2025年の約47万人へと18万人以上増えました。

高度外国人材を議論する上でのポイントは、そうした外国人材が、日本人の正社員と同じ処遇で働いているということです。同じ処遇で働くという点にダイバーシティの課題が生まれます。順を追ってみていきましょう。

まず、整理したいのは、平等(equality)と公平(equity)の違いです。平等とはわかりやすく言えば、差を設けないということです。労働基準法第3条も、国籍による差別的取り扱いを禁止しています。そのため多くの日本企業は、高度外国人材に対して、日本人と同じように採用試験を行い、新入社員教育や人材育成を行っています。これらは平等な取り扱いという点では正しい対応だといえます。

しかし、公平という観点から見ると、それだけでは十分とは言えない場合があります。外国人材の場合、日本語能力や文化的背景の違いで、同じ説明や研修であっても理解度や適応度に差が生じることがあります。公平の観点からは、外国人材に対してより丁寧な説明や研修を行うことが求められます。

公平は、マイノリティを特別に厚遇することではありません。そうではなく、企業として多様な従業員一人ひとりが活躍できるよう、従業員それぞれの事情に応じた対応が求められます。つまり、公平性とは全員に同じ対応をすることではなく、全員に対して個別性に基づいた支援をすることだといえます。

外国人材が抱える疎外感

高度外国人材はどのような不安や不満を抱えているのでしょうか。インタビュー調査でよく聞くのは、同調圧力に対する不満です。多くの高度外国人材は、職場で日本人と同じような行動をすることが求められます。例えば、日本の多くの職場では、何をいつまでにどうすべきかという指示や期待があいまいです。外国人材にとって、そうしたコミュニケーションは難しい場合がほとんどです。それにもかかわらず、上司は日本人と同じ水準を期待するため、外国人材がその期待に応えられないと、評価を下げられてしまうことがあります。それは外国人材にとって自分が期待されていないという気持ちにつながり、離職にも結び付きます。

また、私のインタビュー調査では「日本人社員化させられている気がする」という声をよく聞きます。せっかく外国人材を採用したのに、日本人と同じようにすることを求められるという意味です。こうした職場の同調圧力が外国人材の疎外感を生み出している現状があります。

加えて、日本型のいわゆる「メンバーシップ型」雇用に対する不満も少なくありません。この働き方では、自分の仕事内容があらかじめ明確ではなく、チームワークが常に求められるため、自分の努力だけでは成果が評価されづらくなります。加えて、年功的な賃金制度や昇進の遅さに対する納得感の低さがあり、企業の都合による頻繁な異動は将来的な不安にもつながります。

これらの結果、外国人材のモチベーションやパフォーマンスが下がり、経営側も「やっぱり日本人を採用すればよかった」となるケースは少なくありません。しかしそれは、問題の責任を外国人側に押し付けているだけで、優秀な人材を獲得したいという課題の解決にはつながりません。外国人材を生かすためには、日本人と同じ対応をするのではなく、個別性に基づいたマネジメントを実践する必要があります。

個別性に基づくマネジメント

では、企業は何をすればよいのでしょうか。重要なのは、個別性に基づいて誰もが活躍できる組織をつくることです。

事例を紹介します。例えば、とある小売業の会社では、日本人管理職のXさんが、中国出身の入社3年目のYさんの上司になりました。当初、Xさんは日本人と同じような方法でYさんに接していましたが、うまくいきませんでした。そこで、Yさんの強みを捉え直し、その強みを生かせる役割を設定したところ、売上が大きく伸び、部門全体が社内で表彰される成果につながりました。それだけではなく、異文化のチームワークが生産性を向上させることを学んだXさんは、社内の制度を使って海外駐在に応募し、中国での事業展開に大いに貢献しました。つまり、国内で外国人材をマネジメントする経験は、グローバル人材を養成するという副次的効果もあるのです。高度外国人材を採用し、個別性に基づくマネジメントを実践することは、企業が成長し、海外事業の推進を果たす意味でも重要だということです。

「メンバーシップ型」の強み

このような個別性に基づいたマネジメントは、日本企業には難しいというわけではありません。むしろ、私が調査を通じて見いだしたのは、「メンバーシップ型」だからこそ取り組めるアプローチがあるということです。

欧米の「ジョブ型」では、あらかじめ職務記述書によって仕事内容や必要スキルを定義して、それに見合う人を採用・配置します。つまり、採用の段階で、本人の個別性と職務内容がある程度一致します。これに対して日本の「メンバーシップ型」は、「ジョブ型」のような職務記述書はありませんが、その代わり「役割」があります。役割は、文書化されていなくて、現場の管理職が部下一人ひとりに応じて設定するものです。

高度外国人材が活躍している企業の事例を見ると、管理職が部下それぞれの個性や得意分野を把握し、それに合わせて役割を設定しています。その結果、国籍に関係なく誰もが力を発揮しやすい環境が生まれています。こうした企業では、組織全体の活力が高まり、成果にも結び付いています。すなわち、職務が固定されていない「メンバーシップ型」だからこそ、個別性に基づくマネジメントを実現できる可能性があるのです。

覚悟を持った取り組みを

こうした取り組みは、外国人材だけのためのものではありません。多様な人材を採用している以上、一人ひとりの個別性に基づいたマネジメントをしなければ成果につながりません。企業はそうしたメッセージを組織として明確に打ち出す必要があります。

当然ながら、日本人であっても自分が活躍できないと思えば、転職してしまいますし、優秀な人材は確保できません。個別性に基づいて誰もが活躍できる組織をつくることこそが重要です。

日本人を採用できないから高度外国人材を採用するという発想だけではうまくいきません。外国人材を雇用する際には、個別性に基づいたマネジメントを実践する覚悟を持ってほしいと思います。

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