「支え合い」の大切さを見つめ直す相次ぐ災害、減少するNPO
地域を支える労働組合のチカラ


訪問研究員
地域課題の担い手が減っている
人口減少が進むわが国では、さまざまな仕組みが機能不全を起こし、社会課題が山積している。特に地方では超高齢化や人材の流出により事態は深刻だ。加えて、災害も相次ぐ。2024年の能登半島地震、今年、再び大地震に見舞われた熊本県、全国各地の豪雨災害など、甚大な被害をもたらした災害は数えきれない。突如発生する大規模災害では、自治体職員も被災するため、復旧・復興には外部のチカラが不可欠となる。
だが、こうした役割を担ってきたNPOは減少している。1995年の阪神・淡路大震災を契機に特定非営利活動促進法(NPO法)が整備され、以降、NPOは右肩上がりで増加した。ところが、設立メンバーの高齢化等により活動休止や解散が増え、2018年からNPOの数は減少に転じている。
そのため、地域や社会の困難や課題に誰がどのように取り組んでいくのか、社会の仕組みをあらためて考える必要が生じている。こうした問題意識の下、筆者が主担当となり連合総研で『なぜ取り組む? どう続ける? 労働組合の社会貢献活動』(以下、『労働組合の社会貢献活動』)というリポートをまとめた。企業別労働組合、産業別労組、地方組織、ナショナルセンターの取り組みからいくつか紹介しよう。
労働組合は支え合いの連帯
労働組合が昔から災害や困難に直面している人々への支援活動を行ってきたことは、世間からはほとんど知られていない。労働組合は平時からカンパを集め、福祉施設などに寄付している。また、地震や豪雨で被害が出れば、地元の労働組合が中心となり、支援活動を機動的に展開する。こうした支援活動は無数に行われており、阪神・淡路大震災や東日本大震災では、民間団体としては最大規模の支援活動を行ったとの記録も残る。
図表1は連合の主な取り組みである。政府への要請、ボランティア、寄付金など、活動は多岐にわたる。寄付金は億単位である。また、記録によれば、労働組合のボランティア活動に対しては、一定期間、継続的に、技術や現場対応力を兼ね備えた人々が柔軟性と統制のバランスをもって活動することが、被災地でも評価され感謝されている。
災害時の支援活動では、全国から寄せられるあまたの善意を、それを必要とする人や場所につなぐ「中間支援組織」が必要となる。だが突然の大惨事の中でこうした機能を確立するのは難しく、災害支援における大きな課題となっている(内閣府防災情報のページ「災害中間組織」)。しかし、労働組合であれば中間支援機能の一部を代替できる。
困窮する人・場所への橋渡し
労働組合が中間支援機能を担えるのは、産別労組による社会貢献活動を見ても明らかである。以下は『労働組合の社会貢献活動』で紹介した取り組みである。
【自動車総連】ひとり200円の小さな善意が支える、50年の社会貢献活動
【情報労連】毎年、47都道府県で数千人の環境保全活動を展開
【電機連合】ひとりの組合員の声から生まれた、50年続く障がい福祉
【生保労連】地域密着の強みを生かし、子どもや高齢者の安全を見守る
例えば、自動車総連は毎年、組合員ひとり200円のカンパを集め、児童養護施設や障がい者施設などに福祉車両や物品を寄贈し、障がいのある方々とのスポーツイベントを開催している。イベントは交流を通じて組合員が「自立と思いやりの心」を育むことを目的とし、開催地域の労働組合の役員や組合員がボランティアとして運営を担う。イベントの規模は1992年から2024年にかけて、のべ820会場、のべ24万人参加となっている。
寄付金も1972年からの累計で77億円に達している。車両や物品の寄贈先は、地方協議会が県内で困窮する小規模福祉施設を探し対象としている。寄贈先は突然の申し出に驚き、時には警戒することもあるが、労働組合であることを説明すると、安心して受け取り、喜んでくださるそうだ。自動車総連の取り組みは80万人近い組合員のチカラを、地域ネットワークを生かして、必要な人々に届ける仕組みになっている。
情報労連も結成以来、社会貢献活に力を入れている。情報労連は1995年の阪神・淡路大震災では、約4億円のカンパを集め、のべ1184人の組合員がボランティア活動に従事した。2024年の能登半島地震でも、連合の救援ボランティアに産別労組として参加した後、情報労連として単独でボランティア派遣を行い、加盟単組から定員を上回る参加希望者を集めている。
加えて、環境保全活動にも熱心に取り組む。毎年、47都道府県それぞれで、海岸や野鳥園での清掃、山林の草刈りや間伐、3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動など、内容を企画し、実施している。レクリエーション的要素を加えて、参加者集めを工夫し、2024年の参加者は約4500人だった。こうした全国津々浦々で人の手が回らず、放置されがちな課題に対し、産別労組が旗を振ることで、毎年、数千人の規模で活動を続ける社会的意義は大きい。
組織力と持続性という強み
長期にわたり社会貢献活動を続けているのは、電機連合や生保労連も同じだ。全国に拠点のある労働組合だからこそ、組織力を生かし、活動を継続できている。地域課題が深刻化する中、1000万人近い組合員を擁す労働組合は地域活動の有力な担い手となり得る。
連合の調査によれば、連合が災害支援やボランティア活動を行っていることを知っている人たちは、連合を身近だと思う割合が際立って高い。また、組合員の中には伝統的な組合運動よりも、社会貢献活動に高い関心を持つ人がいる。ボランティア活動をしている個人は、会社に閉じこもっている人に比べ、キャリアを前向きに切り開けると感じている割合も高い。さらに近年、企業側も社会貢献活動に積極的に取り組み、そこに人事施策としての意義も埋め込むようになっている。
地域への取り組みは、地域社会、個人、労働組合、企業の「四方よし」になる可能性さえ秘めている。他方、社会貢献活動がマンネリ化したり、リソース制約から活動を縮小・廃止せざるを得ない労働組合も出てきている。『労働組合の社会貢献活動』リポートでは、そうした課題に対する対策も載せている。労働組合のチカラを解放する一助にしていただきたい。
![情報労連[情報産業労働組合連合会]](/common/images/logo_ictj.png)

