巻頭言 UNITE To the next stage2026.05

分断と緊張が顕在化する世界

2026/05/15

「平和と労働の祝祭」

本巻頭言の執筆を始めて9カ月が経過する。この巻頭言が皆さんの手元に届くころには、中東情勢が危機的状況を脱していることを願うばかりである。さて、これまで日本や世界の情勢等を踏まえ、執筆してきたが、どうも世界情勢は混とんとし、日本の政治もいま、どこに向かおうとしているのか、そんな不安が募るばかりである。

先日、頂いたチケットで「クロード・モネ 風景への問いかけ」展に足を運んだ。まったく絵画に造詣もない私であったが一枚の絵に引かれた。画題は『パリ・モントルグイユ街、1878年6月30日の祝日』。モネの代表作で、1878年の第3回パリ万博の期間中に開催された「平和と労働の祝祭」の様子を描いた作品だそうだ。ネットでもろもろ調べると「背景には、普仏戦争とパリ・コミューンの動乱を経て、国家の再建と国民統合を図ろうとする政治的意図が存在している」とあった。

協調と分断

なぜ、この絵に引かれたのだろうか。通りを埋め尽くす三色旗と群衆の熱気、「平和と労働の祝日」との紹介に興味が湧いたのかもしれないが、現在の世界秩序の変容とも重なり合う気がした。

国際秩序が揺らぎ、多極化が進む中で、各国は改めて自らの「旗」を掲げ直している。経済の相互依存が深まる一方で、安全保障や価値観の対立はむしろ顕在化し、国際社会は一見すると協調の枠組みを維持しながらも、内実は分断と緊張が潜んでいる。日本の政情も、戦後、国際協調と経済成長を軸に安定した秩序を築いてきたが、近年は安全保障環境の変化や経済構造の転換、さらには格差拡大、人口減少といった課題に直面し、こうした中で、国家としての方向性やアイデンティティーを巡る議論が活発化している。

政治において掲げられる理念やスローガンは、しばしば国民統合の象徴として機能する。しかし、それが現実の多様な利害や価値観を十分に包摂できているかどうかは別問題である。モネの描いた群衆のように、一見同じ方向を向いているように見える社会も、実際には異なる思惑や不安を抱えた個人の集合体である。その意味で、日本の政治もまた「祝祭」を演出している気がしてならない。祝祭の旗が翻る光景は、秩序の回復と希望の象徴であると同時に、その脆弱さをも内包している。

世界は、政治・経済・技術・気候といった複数の領域で課題が同時進行し、国際秩序が不安定さを増す中、「多重危機」の局面に入ったとの論評もある。労働組合は、かねてより、国際的情勢が世界平和や組合員の生活、雇用、権利擁護に直結する課題であるとの認識の下、世界の労働者との国際連帯を重視してきた。もとより、多くの課題・難題が一つの国家では、解決困難であり、地球規模、世界全体を俯瞰した共存・共栄の理念と国際協力が不可欠であることは論をまたない。

昨年の7月の定期全国大会で「2025〜2026年度中期運動方針」を決定し、はや9カ月。取り組みの経過や成果などを真摯に振り返りつつ、取り巻く情勢等を踏まえ、さらに「信頼と共感」で働く仲間の心と力をつなぎ、“情報労連らしい”運動を展開していくこととしたい。

北野 眞一 (きたの しんいち) 情報労連 中央執行委員長
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