沖縄・南西諸島視察報告南西諸島進む要塞化
不安高まる島民の声

辺野古新基地建設の状況
3月31日、敵基地の攻撃が可能な長射程ミサイルが熊本市東区の健軍駐屯地に配備された。この長射程ミサイルは、国内で初めての配備であり、政府が、南西諸島防衛の主力として配備計画を進めているミサイルである。
「南西諸島」では、近年、東シナ海情勢の緊張の高まりを背景に、政府が島しょ防衛体制の強化を進めており、沖縄本島における辺野古新基地建設と同時並行的に、石垣島、宮古島、与那国島、奄美大島などで自衛隊施設の整備が相次いでいる。
国土面積の約0.6%しかない沖縄県内に、全国の約70.3%の在日米軍専用施設・区域が依然として集中している。沖縄は長年、大きな負担を強いられていることは周知の事実である。
辺野古新基地建設は2017年から本格的な埋め立て工事が進められている。しかし、その後、軟弱地盤が発覚したことから、地盤改良のため、大浦湾側の深さ最大90メートルに達する泥土層に対し、約7万本ものくいを打ち込み地盤を補強する「サンドコンパクションパイル工法」で工事を進めている。現時点の進捗率はわずか数%程度にとどまり、計画は大幅に遅延しているばかりか、当初約9300億円とされていた事業費は、この補強工事などが影響し、2兆〜3兆円規模に膨らむ見込みとなっている。この膨らんだ事業費を賄うのは、私たちの税金である。
大浦湾は、サンゴ礁や絶滅危惧種で国の天然記念物であるジュゴンなどをはじめとする多様な海洋生物の宝庫であることが知られている。サンゴ礁については、工事に伴い、約8万4000群体の移植を完了したが、一部で死滅や損傷も報告されている。また、ジュゴンについては工事開始以降、姿や食跡、ふんはほぼ確認できていないという。
取材した「じゅごんの里」の西原氏は、辺野古・大浦湾の環境調査や保全活動を行っており、長年大浦湾を見ている経験から、掘削作業などによる騒音やサンゴなどへの影響は、おそらくあると指摘している。
加えて、2026年2月、新基地が完成したとしても、辺野古の滑走路(約1800m)は、普天間の滑走路(約2800m)より短くなるとして、米国側は、代替の滑走路が確保されなければ普天間基地を返さないとの方針であると報じられた。一体、何のために辺野古に新基地を建設しているのだろうか。
与那国島の状況
与那国島は、日本最西端に位置し、台湾まで約110キロメートルの国境の島である。与那国駐屯地が開設されたのは2016年3月。陸自沿岸監視隊が設置され、航空機や艦船の監視を行っている。
取材した与那国町の元町議会議員・田里千代基氏によると、当時、与那国島は、人口減少や経済の問題を抱えており、島の存続と自立に向け模索する中で、「自衛隊基地の誘致」が浮上したという。誘致を巡り、島を二分する激しい論争の末、住民投票が行われたが、賛成632票、反対445票(投票率85.74%)で、誘致賛成となり、「自衛隊のある島」として歩むこととなってしまった、と苦しい胸の内を語ってくださった。
自衛隊の駐屯地整備によって隊員や家族が移住し、一時的に人口が増加したものの、島の住人が島を離れるなど、その後の人口は再び減少し、元に戻ったという。
今後は、島南部の比川地区を中心に、艦船が接岸可能となる大規模な新港湾の整備計画があるほか、2026年度には対空電子戦部隊の配備、2029年度には水平線監視レーダー装備、2030年度には地対空ミサイル部隊の配備が計画されている。与那国島自体が「空母」になってしまうことを危惧していると田里氏は語る。
石垣島の状況
石垣駐屯地は、2023年3月に開設された。石垣駐屯地の敷地は、約47ヘクタール。工事が始まったのは2019年3月だが、沖縄県環境アセスメント条例が改正施工され、2019年4月に適用事案が20ヘクタール以上に引き下げられるのを見据え、それを回避するための強引な着工であったという。今後も基地は拡大する予定であり、一度許せば、なし崩しに拡張されていく。現在、「12式地対艦誘導弾」や「03式中距離地対空誘導弾」のミサイル部隊が配備されている。
石垣駐屯地は島の中央部に位置し、山を背にしながら構えている。住宅近くに弾薬庫が存在するばかりか、有事の際には「住民が戦闘の盾」となると長浜信夫石垣市議会議員は訴える。長浜市議は、誘致の際、基地建設の是非を問う住民投票を求めてきたが、当時の中山市長と推進派議員によって実現には至らなかったという。反対派は多く、住民投票をすれば、住民の意思が十分に反映されたのではないかとも語る。
敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルについて冒頭記載したが、政府は配備先は未定としながらも、将来の石垣駐屯地への配備に対する住民の不安は募る。
まとめ
今回の視察では、基地の現状や課題とともに、駐屯地を設置するまでの地域の課題や住民の思いなど、現地に赴くことで多くのことを知り得た。その実情の多くを、私たちはきちんと把握できていないことも痛感した。
そして、政府は、住民の心配や不安をよそに、はっきり全容を明らかにしないまま、なし崩し的に南西諸島の軍拡を進めていること、高市政権が与党一強の政権運営となっているこの状況で、軍拡が加速する懸念を皆が不安視していることもわかった。
昨年、台湾有事が発生した場合、日本の「存立危機事態」になり得ると高市首相が発言し、中国を刺激したことは記憶に新しい。高市首相は、公約の中で、対中防衛を念頭とした「南西シフト」の加速と、日米同盟の抑止力強化を強調している。防衛費を対GDP比2%(約12兆円)への増額や防衛装備品の輸出ルール緩和などを進めようとしているほか、安保三文書の中で、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則のうち、「持ち込ませず」を容認する見直しや「自衛隊明記」とする憲法9条改正に非常に強い意欲を示している。また、米国・イスラエルのイラン攻撃など世界情勢が不安定である中、トランプ大統領の強い要請も見え隠れする。
沖縄の不安とさらなる負担増、そして莫大な税金の投入による国民への影響が大きい中で、果たして、このまま、辺野古新基地建設を続けるべきであろうか、島民の不安をよそに南西諸島の軍備拡大を加速するべきであろうか。また、高市首相の暴走を許していいものであろうか。本記事で、いま一度、平和について、考えていただくきっかけになることを期待する。
北野委員長コメント
知らされないまま決まる現実
暮らしとの間に横たわる深い溝
東シナ海の防衛強化が加速する南西諸島を巡ると、どの島にも共通するのは「知らされないまま物事が決まっていく現実」への不安だった。
与那国、宮古、石垣、奄美──自衛隊配備は国の方針として急速に進む一方、住民説明は後追いで、計画の全体像が示されないまま工事や部隊配置が既成事実化していく。観光や農漁業で暮らしを築いてきた島々では、ミサイル部隊の配備が「抑止力」になるのか、それとも「攻撃目標」を呼び込むのか、判断に必要な情報すら十分に届かない。避難計画は未整備のまま、台湾有事が語られるほど島民の不安は深まる。
政府は「国防は国の責任」と強調するが、島の生活や将来像に寄り添った対話は十分とは言い難い。防衛強化が進むほど、島民の胸には「私たちの声は本当に届いているのか」という問いが重く残り、国の安全保障政策と地域の暮らしの間に横たわる深い溝が浮かび上がっている。
![情報労連[情報産業労働組合連合会]](/common/images/logo_ictj.png)

