書記長対談「楽しい」が人を動かす
労働組合を再定義する
2026年へ



組織率の上昇?
中村労働組合活動への参加に関して、労働組合の存在感の低下がいわれてきました。厚生労働省の「労働組合基礎調査」では労働組合の組織率は年々低下しています。連合総研の「勤労者短観」のデータでも、20年前に比べ「職場に労働組合があるかわからない」と回答する人が倍増しています。
一方、労働組合の組織率に関して興味深い結果があります。私は2025年12月、他の研究者と一緒に労働組合の組織率に関する論文を発表しました。厚生労働省が労働組合に対して行う調査と、他の機関が個人に対して行う調査では、労働組合の組織率に大きな差が生じているということがわかったからです。端的に言えば、労働組合の組織率は、厚生労働省「労働組合基礎調査」では過去最低を更新しているにもかかわらず、個人調査では2000年代半ばから下がるどころか上がっています。
組織率の違いはなぜ生まれるのでしょうか。一つには、「組合基礎調査」では労働組合に回答モレがあっても、行財政改革で行政側の調査体制がぜい弱化し、組合員数を正確に把握しきれず、組合員を過少集計しているということがあります。ただしこれだけでは個人調査で組織率が上昇する理由を説明できません。
もう一つの背景には、労働組合の参加に関する個人の意識のあいまいさがあります。特に注目すべきは、組合費を払っていないのに労働組合の勝ち取った成果の恩恵を受けている「フリーライダー(ただ乗り)」の存在です。労働組合に入っていないフリーライダーの存在が、個人調査における労働組合の組織率に影響を与えています。さらに、労働組合への加入を誤解している人も一定数います。実際、組合費を払っていないのに労働組合に加入しているといった回答が2割以上ありました。
このように実際は組合員ではないのに、労働組合に加入していると勘違いする人の増加が、組合調査と個人調査の組織率のズレを拡大していると考えられます。働く人と労働組合のかかわりを考え直す必要があると思います。
「越境の場」としての労働組合
春川労働組合からするとそうした人たちは組合員になるポテンシャルを持つ人たちといえそうです。
中村フリーライダーは、労働組合の恩恵が広く波及するという点では、集団的労使関係の傘を広げ、社会的に意義があります。しかし労働組合の持続性や職場の公平性の観点からは問題があります。突き詰めると、職場における労働者代表のあり方の議論にいきつきます。フリーライドを防ぐ一つの方法は、ユニオンショップで職場の労働者を全員組合員にすることです。
春川ユニオンショップ制は、加入説明に対する労力は少なくて済む一方、組合活動への参画を促すための努力も必要です。組合員の間にも温度差があります。
中村やりがいを感じ、熱意をもって、楽しみながら活動している人と、そうではない人との温度差が大きいという課題は、社会運動全般でみられます。組合活動の面白みをどう感じてもらえるかが重要です。
春川単組の役員時代に組合員から言われたのは、「組合員の労働組合のイメージは、身近にいる組合役員」ということでした。そのため職場の組合役員が変わると労働組合へのイメージも変わってしまう。職場の組合役員をどう育成するかが重要だと感じます。
近年は自らの専門性を高めながらステップアップを図る働き方へのシフトが進む中で、仕事をしながら組合役員として活動するには相当な時間とエネルギーが必要です。使命感がなければ組合役員を続けるのは難しく、人材確保の課題に直面しています。
中村組合活動は「究極の副業」ともいえますし、「越境学習」としても非常に効果的です。
春川組合活動を人材育成のプロセスとして位置付けることができれば、将来的にマネジャーなどの役職に就く際にも大きな経験になります。そうした点を会社にも評価してもらいたいと思います。
組合活動にもっとねぎらいを
中村個人として成長したいとか、外の世界をもっと知りたいという思いを持つ人が増えています。組合活動もそうした「越境の場」として捉えれば、新たな面白さがたくさんあります。
例えば、ザ・サントリー・ユニオンは、組合員アンケートで「組合活動に参加したい」が50%を超えています。「We will enjoy」を労働組合のバリューに掲げており、楽しみながら組合活動をするという意思が込められています。実際、組合活動を展開する際に「手上げ方式」でプロジェクトメンバーを組合員から募るようなこともしています。興味深いのは、組合内部で支部単位の活動を表彰していることです。
春川ねぎらうことはとても大切ですよね。表彰することでその活動を全体化することにもなるし、励みにもなります。
中村学術的に、他者からの「承認」は「報酬」の大切な要素です。労働組合の活動は「やって当たり前」とみられがちですが、周囲の人たちから認められたり、感謝されたりすることはとても重要です。組合活動に「ねぎらい」をもっと組み込んでもいいような気がします。
「楽しさの追求」
春川身近にいる組合役員の姿を見て、「この人と一緒に何かやってみたい」と思ってもらえれば、自然と後輩の役員も増えるように感じました。
中村やはり「楽しさの追求」はとても大事だと思います。組合員に一番共感を生むのは、組合役員が楽しそうに活動している姿です。そういう雰囲気があれば、「自分もやってみたいな」と思う人が自然と出てくるでしょう。逆に、役員が疲弊して「時間の無駄だ」と感じていたら、組合の求心力はなかなか高まりません。
労働組合は使用者との対立を乗り越えて発展してきました。そのため、新しい取り組みに対して、「それは大丈夫?」「リスクはない?」という慎重な会話になりがちです。リスクがゼロになるまで動けない状態が続くと、学習性無力感に陥って、挑戦する意欲が失われてしまいます。「まずはやってみよう」「応援するよ」という姿勢を持つことが大切だと思います。労働組合を通じて新たな取り組みができるようになると、求心力が高まると思います。
語る言葉のアップデート
春川最後に労働組合に対するメッセージをお願いします。
中村賃上げや労使コミュニケーションの再構築が問われる2026年は、労働組合が自分たちのあり方を再定義する年になり得ます。労働組合は自分たちを語る言葉をあまりアップデートしてきませんでした。「労働組合はこんなことができる」「こんなやりがいがある」という今の時代の言葉を持ちたいですよね。
その際、大切なのは、組合役員一人ひとりが充実感をもって活動できることですが、近年、組合が活性化している国々では政策的な後押しも行われています。組合活動を後押しするためには、労働組合を支える政策や制度の見直しも、両輪として重要です。
春川組合員と一緒になって活動するためには、組合役員が楽しそうに活動していることが重要ですね。いただいたメッセージを実践していきたいと思います。本日はありがとうございました。
![情報労連[情報産業労働組合連合会]](/common/images/logo_ictj.png)

