副委員長対談核兵器廃絶を「夢」で
終わらせない
期限のある目標が行動を生む


前平和市長会議会長

大方 2045年までの核兵器廃絶を最終目標とする「2045ビジョン」を掲げていらっしゃいます。
核兵器廃絶運動では、意図的に期限付きの目標を設けています。そのために、2045年までの核兵器廃絶を最終目標とする「2045ビジョン」を提唱しています。
期限を設けるのが大切なのは、核兵器廃絶が実現可能な目標であることを強調し、共有するためです。核兵器を推進する人たちは、有限の期限を設けないことで、核廃絶は夢見る人たちの戯言だという印象操作をしています。アメリカの作家ナポレオン・ヒルは、「期限のない目標は、ただの夢に過ぎない」「夢に期限を付けると目標になる」と述べました。核兵器廃絶を夢にしないためには、期限を設けることが重要です。
平和市長会議は2003年に、2020年までの核兵器廃絶をめざす行動計画「2020ビジョン(核兵器廃絶のための緊急行動)」を策定しました。目標は実現できませんでしたが、その中間目標である2015年までに「核兵器廃絶条約」を国連で採択するという目標は、2017年に「核兵器禁止条約」が採択されたことで2年遅れの許容範囲で実現できました。
こうした取り組みを踏まえ、2045年までに核兵器の廃絶をめざす「2045ビジョン」を掲げています。2045年は被爆から100年の節目に当たります。この年を目標にすることで多くの人が結集できるはずです。また、このビジョンでは、中間目標として、2035年までの核兵器先制不使用の実現を掲げています。
大方 オバマ大統領時代に高まった核軍縮への機運は、近年後退しているようにも感じます。
周囲の環境が変わっても自分たちの信念を持ち続けることが大切です。核兵器廃絶という人類共通の大目標を再確認して運動し続けなくてはなりません。核兵器による人類の滅亡を警告した「ラッセル=アインシュタイン宣言」(1955年)を読み返せば、私たちが選ぶべき答えは明らかです。核兵器による人類滅亡を回避するため、しっかりした軸足をもって運動を展開する必要があります。
大方 秋葉さんは被爆者を中心とした運動の重要性を訴えています。
日本被団協がノーベル平和賞を授与されたことは本当に喜ばしいことです。
その一助として被爆者も含めた日本の平和運動の記録を英訳し、ノーベル平和賞委員会に送る活動も行いました。それだけではなく、1970年から1980年代にアメリカの大学で教えていたときから、世界のジャーナリストを広島・長崎に招待し、被爆者の声や被爆の実相を伝えてもらうプロジェクト(通称「アキバ・プロジェクト」)に取り組んできました。
それは国外に日本での平和運動やそれをけん引する被爆者の声が伝わっていなかったからです。当時、アメリカで原爆の話をすると「パールハーバー」が持ち出され、原爆が正当化されていました。だからこそ同じアメリカ人が広島・長崎を訪れ、原爆の実相を伝えることが重要だと考えました。
日本被団協がノーベル平和賞をもらい国際的な影響力が高まった今だからこそ、被爆者が各国の首脳と直接面談し、思いを伝えられる可能性が高まっています。被爆者が面会して思いを伝えるだけでも世界的なニュースになるはずです。
その中で、具体的成果が望めるのは、「2045ビジョン」の中間目標でもある、2035年までの核兵器先制不使用の実現です。2022年からのロシアのウクライナ侵攻では、プーチン大統領に核兵器を使わせないための署名活動も行いました。ロシアに核兵器を使わせないという要求は、他国の核兵器の先制不使用を伴わないと説得力がありません。この動きをすべての核保有国による核兵器の先制不使用につなげることが重要です。中国とインドは、核兵器の先制不使用を宣言しています。また、ラテンアメリカやカリブ海などでは、非核兵器地帯条約が締結されています。核兵器禁止条約もできました。核兵器の先制不使用の実現は、こうした点からも実現可能性が高いといえます。
核兵器の先制不使用は、宣言しさえすれば成立するため、意志さえあれば実現可能です。その目標を達成した上で物理的な核兵器廃絶につなげる。それが「2045ビジョン」のシナリオです。
大方 秋葉さんは、「非被爆者」による運動の重要性も指摘されています。
被爆者の運動が核兵器廃絶の出発点となるのは、被爆者の体験を踏まえれば当然のことです。一方、世界の圧倒的多数の人が「非被爆者」です。社会を変えるためには、「非被爆者」が核兵器の問題を自分ごととして捉え、当事者として運動に参加することが大切です。
とはいえ、日常生活と核兵器の問題を結び付けることは容易ではありません。労働組合は、その二つを結び付ける重要な役割を担っています。
大方 自分ごととして捉えてもらうために何が大切でしょうか。
例えば、海外で核兵器廃絶運動に取り組んでいる人たちは、核兵器がもたらす被爆の実相を学ぶことで核兵器の非人道性を強く認識し、人類の存続にかかわる問題という意識を持ってくれます。核兵器の実相を伝えることが行動につながります。
その上で、核兵器廃絶というビジョンを前に進めるため、あえて「一人から行動を始めてほしい」と伝えています。組織による動員的な取り組みも大切ですが、最も重要なのは、一人ひとりが自ら動き出すことです。個々の行動こそが力となり、社会を変える原動力になるということです。例えば、国際司法裁判所に核兵器の合法性を問う勧告的意見の発出を働きかけた「ワールド・コート・プロジェクト」は、ニュージーランドの主婦たちの井戸端会議から始まった草の根の運動でした。市民の小さな一歩が国際社会を動かした象徴的な例です。
美空ひばりの歌った『一本の鉛筆』という楽曲があります。一本の鉛筆があれば戦争は嫌だと書く、で表される反戦・反原爆の名曲です。平和を創るのは一人の人間が一本の鉛筆でその気持ちを書くことから始まるというメッセージが心を打ちます。
そのメッセージとして「2045年までに核廃絶!」を一人から三人、職場や町から全国へ世界へと広めていきたいですね。
大方 私たちは毎年8月、組合員を広島・長崎に集めた平和行動を展開するなど、原爆被害の実相や平和の尊さを伝えてきました。また加盟組合であるNTT労働組合には被爆二世協があり、核兵器廃絶の運動を展開してきました。これからも語り継ぐ運動を大事にしていきたいです。
情報労連やNTT労働組合がこれまで原水禁運動でリーダーとしての役割を果して来られたことに敬意を抱いていますし大いなる感謝を捧げます。今後もリーダーとしての役割を世界的規模で広げ続けていただきたいと願っています。
大方 秋葉さんのお話を伺うと目標をきちんと設定して取り組むことの重要性を感じました。
核兵器廃絶は、人類共通の課題です。日常生活は、核兵器廃絶という理想と離れているように感じられますが、実はもっと密接に結び付いています。生活に直結する課題に取り組む労働組合が、核兵器の問題を自分ごととして考えられる機会をたくさん提供してほしいと思います。
![情報労連[情報産業労働組合連合会]](/common/images/logo_ictj.png)

