トピックス2026.01-02

座談会
情報労連委員長&全国単組委員長
「対話」を通じた労働組合運動の強化へ
ネットワークを広く張り巡らせよう

2026/01/15
組合員の働き方が個別化し、価値観が多様化する中で、労働組合は組合員とどう向き合い、信頼関係を築くことができるのか。情報労連と全国単組の委員長が、組合活動の基盤となる「対話」の重要性と、その実践に向けた課題・ビジョンを語り合った。
十川 雅之 NTT労働組合中央執行委員長
(情報労連副中央執行委員長) 北野 眞一 情報労連中央執行委員長 浦 早苗 KDDI労働組合中央執行委員長
(情報労連副中央執行委員長) 髙代 守 通建連合議長
(情報労連副中央執行委員長)

組合員との距離の変化

北野本日は、全国単組の委員長の皆さんと「対話」をテーマに意見を交わしたいと思い、集まってもらいました。最初になぜ「対話」をテーマにしたのか、簡単に説明します。

労働組合の組織率が低下し、その存在意義が問われる中、情報労連は加盟組合や組合員との接点強化に力を入れています。そこで重要なのが「対話」です。連合総研の月刊誌「DIO」10月号が、「今こそ『対話』を組織の力に」という特集を組んでいました。その内容を少し紹介します。この特集では、デジタル技術が進化する中で、人々が異なる視点や価値観に触れる機会が減少していると指摘した上で、労働組合は過去の成功体験や専門的知見では対処しきれない課題に直面していると分析しています。そこで注目されるのが「対話」です。ここでの「対話」は、ただ単に言葉を交わすという意味ではなく、互いの世界に理解と共感の橋を架けるプロセスであるとされています。そのプロセスを通じて、違いは壁ではなく、可能性として受け止められ、新たな気付きと創造の源になるとされています。

こうした「対話」の可能性は、私たちが組合員との接点を強化し、労働組合運動を前に進めるために非常に重要なものだと捉えています。これが「対話」を座談会のテーマにした理由です。

はじめに、皆さんが組合員との距離をどう感じているか教えてもらえますか。

髙代まず言えるのは、物理的な距離の変化です。「新型コロナウイルス」の流行後、特に首都圏の職場では、リモートワークやフリーアドレス制が普及し、紙の配布物が配りづらくなりました。それに伴い組合の機関誌や共済の資料を仕分けたり、配布したりする作業がなくなったことで、職場委員や組合員との接点が少なくなりました。

一方、ウェブツールを活用した組合活動が増えていますが、活動量には組織の間に濃淡があります。例えばウェブアンケートを行う場合でも、全員に対して一声かけて回答を促す組織もあれば、1回メールを流して終わりという組織もあります。ツールの問題というよりも、活動量の問題だと感じます。

それはKDDI労組でも同じです。しかもコロナ前に比べて支部や職場間の差が広がった気がします。その差は、組合役員の行動いかんで生まれます。

なぜそういう差が生まれるのかを考えたのですが、以前の組合活動は、活動方法が「対面一択」でそれ以外の選択肢が限られていました。そうした中、さまざまな活動ツールが出てきたことで、その使い方の濃淡によって差が生まれているのではないでしょうか。その差を是正することも十分にできていないので、ばらつきが生まれています。

対話会の難しさ

北野連合総研「DIO」での「対話」とは、自分の価値観をいったん脇に置き、異なる意見を持つ相手と語り合うことであり、そのことを通じて、お互いが以前とは異なる視点を得て、集団としての思考プロセスが変わり、創造的な解決策を生み出す協働の営みとされています。ウェブを用いた新しいツールは、こうした対話を生み出すことができるでしょうか。というのも、組合員の皆さんの価値観が多様化する中で、一人ひとりの悩みや不安、意見と向き合うためには、より深い「対話」が必要だと感じるからです。

十川組合員との距離感という点では、コロナ禍以降の働き方やオフィスのあり方などの物理的な変化だけではなく、組合員の意識やニーズの変化も踏まえる必要があると思います。多様化するニーズ等を把握し、組合活動につなげるためには「対話」が必要ですが、同時に、コミュニケーション能力が求められます。今は何でも検索できる時代であるがゆえに、役員からの明確な説明と即時の答えが求められるのではないでしょうか。

この問題意識から、NTT労働組合の人材育成コースでは、組合役員の説明力や聴く力、相手の気持ちを考える想像力、それに加えて創造力・交渉力を磨くためのカリキュラムを実施しています。

組合員との対話会は確かに難しいですよね。どうしたらうまく答えられるのか、答えられないまま、もやもやした気持ちを抱えることはよくあります。それでも、職場での対話活動は、労働組合として欠かせない機能なので頑張ってきました。そう感じてくれる人が減っているのかもしれません。

髙代組合役員になって初めての対話会で組合員からコテンパンにされて、それをバネにして一生懸命勉強すると、次第に組合員からの質問に答えられるようになり、やりがいを感じられるようになる。そういう組合役員の実体験はよく聞きますし、それを若手役員にも伝えるようにしています。

組合員の個別化と多様化

北野対面のコミュニケーションが減るとそういう体験も少なくなってしまうかもしれませんね。

そこはツールのせいだけではなく、やり方次第の気もします。例えば、ウェブを使って効果的にアンケートを集計する一方で、必要なときに対面を用いて、職場の理解を得ている組合役員もいます。職場環境や組合員のニーズが変わる中で、従来と同じやり方だけでは、この先は続かないのではないかと思います。

十川オンラインの対話会で参加率が上がった組織もあります。時間や場所の制約から参加できなかった人が参加しやすくなったというメリットはありました。

北野ポイントは、その対話会の開催日時などの情報が組合員にきちんと伝わっていることですね。そのためには職場委員や連絡員の役割が大きいといえます。

十川そのとおりです。ただ、仕事でより一層専門性の発揮が求められる中で、会社業務を優先せざるを得ない傾向にあり、少なからず労働組合の活動に影響していると思っています。「職場を原点」に組合員との接点を重視しているだけに危機感を持っています。

北野通建連合ではどうですか?

髙代通建連合の構成組織の職場でも成果重視の処遇制度が導入されています。そのため実績評価につながらない組合活動が敬遠されるという動きはあります。ただそこで組合役員の皆さんに言っているのは、仕事をしながら組合活動をするという「二足のわらじ」を履くことで、人間力が確実に高まるということです。

十川仕事をしながらの組合活動は、大変かもしれませんが、視野が広がり、自身のキャリアアップにもつながるということは常に強調しています。

印象に残った「対話」は?

北野組合員との「対話」で印象に残っていることはありますか?

十川私が一番印象に残っているのは「東日本大震災」の際の出来事です。震災後、被災地に赴き、組合員の皆さんに困っていることや不安に思っていることを聞き取りました。特に、福島県では原発周辺で通信の復旧作業に従事する組合員から話を聞きました。その上で、働き方を巡って会社と論議したことが印象に残っています。

振り返って失敗だったと思うのは、こちらが一方的に話してしまった対話会です。一方で充実した対話になったと感じたのは、職場の課題解決のために設けられた対話会です。育児短時間制度に関する対話会だったのですが、具体的なニーズに基づいて開催されたので活発な対話会になりました。本来の対話会はこうあるべきだと感じました。

髙代二つあります。一つは、対話を通じて組合結成や処遇改善につながった事例です。具体的には、保守保全の業務で働く人の話を聞いて、そこから組合結成へと至り、さらにはアンケート調査を実施して、手当の新設にこぎつけました。

もう一つは、交通誘導員の組織化です。労働相談をきっかけに全国各地で加入説明会を実施し、組合結成へとつなげました。経験豊富な交通誘導員の皆さんと個別で対話しながら労働組合活動の意義を説明し、500人規模の組織化を実現しました。

その後、別の会社で交通誘導員の死亡事故が起きた際、交通誘導員の就労実態に関するアンケートができたのも、労働組合を組織化していたからでした。交通誘導員の「声」について、この春闘時期を捉えて組合員や工事長、現場第一線の班長へフィードバックしつつ、2026年6月に安全フォーラムを企画・開催し世の中へ伝えたいと考えています。このように、個別の「対話」が組合結成や、組合員の処遇改善につながっています。

2024年の能登半島地震の後にはインフラ復旧作業に従事する人のトイレや宿泊環境などに関する意見を情報労連の組織内議員を通じて国会で取り上げてもらいました。その結果、「改正災害対策基本法」の附帯決議に私たちの意見が反映されました。これも「対話」を通じた活動成果の一つだと思います。

声をどう集めるか

北野「対話」を進める上でどこに課題があると感じていますか。皆さんのお話を伺っていると労働組合はさまざまな活動をしていることがわかります。ただしそれが伝わっていない現状があるのかもしれません。

対面でのコミュニケーションは確かに強力なのですが、その半面、組合役員の親しい人に声掛けが偏っているような気もします。自分が少し苦手な人でも声をかけるというメンタリティが薄れているのかもしれません。

その点で最近、課題を感じているのは、組合役員の同質性が高まっていることです。組合役員のスカウトも声をかけやすい人になりがちで、組合役員のダイバーシティーをどう確保するかが悩みです。

一方、組合員の側も評価や成果を求められ、時間を効率的に使うことを優先する中で、自分の困りごと以外に労働組合が取り組む社会的な課題への理解度が下がっているのかもしれません。

十川会社の組織見直しなどは組合員の関心も高く、対話会の参加率も高くなる傾向はありますね。

北野組合員の皆さんは、さまざまな困りごとを抱えていると思います。その思いを職場から本部へとエスカレーションできるかが課題で、職場委員や連絡員といった職場に近い組合役員の機能をどう発揮させるのかが重要なポイントだと考えています。

めざす労働組合運動

北野最後になりますが、どのような労働組合運動を展開していきたいと考えていますか?

髙代処遇の個別化が進み、組合員の多様化が進む中で、労働組合の「対話」活動も個別化・多様化する必要があるように感じます。具体的には、「伴奏型」「一対一」の「対話」活動をもっと取り入れたらよいのではないでしょうか。

なぜそう言うのかというと、これも自分の経験によるものです。通建連合の機関誌で現場第一線の班長などと一対一で話す連載企画を実施しています。実際にやってみるといろいろな思いを話してくれます。それが個人的な課題のように見えても、実は組織全体の課題とつながっていることもあります。こういう「対話」活動を連載企画のように組織のルーティンに組み込んでおくことも大切だと思います。

北野話してみると組合員が抱える思いが伝わってくるということですね。組合員の困りごとが減っているわけではなくて、労働組合がそれを聞けていないだけかもしれませんね。

髙代一対一で話すと相手に嫌がられるように思えますが、やってみると意外と喜んでもらえます。「来てくれてありがとう」と。相手からもそう思った方がいいといわれました。こちらが勝手に遠慮しているだけかもしれません。

北野私もブロック支部加盟組合を訪問すると同じことを感じます。相手に会いに行き、話を聞くことが大切ですね。

いろいろな取り組みを遠慮せず、まずは取り組んでみることが大切だと感じています。例えばオンラインツールを使って匿名の職場座談会を開催しようと思っているのですが、さまざまな方法で組合員の声を聞いていきたいと考えています。これまでの枠にとらわれず、活動していきたいですね。

十川私はもともと130人くらいの小さな分会の出身なので、組合員のために何ができるのかということを常に考えてきました。組合員のための労働組合運動を続けるからこそ、組合員から信頼され、共感される労働組合になるのだと思います。このことは次代を担う組合役員の皆さんにも伝えていきたいです。

北野皆さんのお話を伺って、組合員との「対話」を強化するには、ネットワークを広く張り巡らせる重要性を強く感じました。組合員が100人いれば100通りの困りごとや悩みがあり、その中には労働組合だからこそ解決できる課題もたくさんあります。そのためには、本部だけが頑張るのではなく、現場を含めた組織全体の「対話」力を高める必要があると感じました。

職場課題は、対話を通じて生まれるエネルギーがあってこそ解決される。そう感じます。情報労連としても役員一人ひとりがビジョン、ミッション、そしてパッションを持って運動を進めたいと考えています。これからも「共に頑張りましょう」。本日はありがとうございました。

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