賃上げを勝ち取るための
仕事の難易度、負荷という視点

仕事に値段をつけるという考え方がある。そういえば、会社員時代は管理部門で働いていたことがある。管理部門のシェアードサービス化が推進されていた頃だ。事業部などに管理部門のサービスを提供する際の価格は明確に定義されていた。仕事の責任、難易度、重要度などについて明確に定義する人事制度が導入されたこともあった。仕事は「量」だけでなく、「質」でも議論するべきだと認識した。
春闘がやってくる。ここ数年、労使ともに賃上げ実現の空気が漂ってはいるし、満額回答も相次いでいる。ニュースを見ていても、新卒初任給のアップや各種手当の充実などの話題が目に入ってくる。もっとも、高い賃上げ目標を掲げ、満額回答を勝ち取っただけでよいのかも問わねばならない。われわれは、本当に「勝っている」のか。
物価は上昇している。人手・人材不足は慢性化している。賃金を上げなくては生活も苦しくなる。人材も採用できないし、定着もしない。ただ、論点はそれだけだろうか。見落とされている最大の論点は、仕事の難易度と負荷の上昇である。企業はビジネスモデルを変え続け、顧客の要求水準は際限なく上がる。商品・サービスは複雑化し、スピードは加速し、責任は重くなる。仕事は確実に「重く」「難しく」なっている。
仕事の難易度、負荷という視点から見ると、見え方がまるで変わる。5%の賃上げを要求し、勝ち取ったところで、実は50点くらいではないか。5%程度のアップでは釣り合わないのである。難易度が1.2倍、負荷が1.5倍になっているなら、その賃上げは実質的には目減りである。これは勝利ではない。静かな敗北だ。
情報通信産業はその最たるものではないか。提供する商品・サービスが変化するため、仕事の中身も変わる。難易度も上がる。顧客の要求水準も上がる。その顧客も広がり、入れ替わっていく。気付けば、大変に難しい仕事をこなしているということもよくある話である。企業の業績が好調であるというニュースをよく見かけるが、これは従業員の努力によって成り立っているという視点を忘れてはならない。このように新しいこと、難易度の高いことに挑戦し続け、業績に貢献している従業員がいるという事実も忘れてはならない。
春闘の論点は賃上げだけではない。仕事の難易度が上がる中で、安全・安心に働くことができる環境が確保されているだろうか。論点は多々あるが、長時間労働を容認する空気が感じられる中、いかに快適な労働環境を確保するかは重要な論点である。顧客からの過剰な要求を避け、カスタマーハラスメントから労働者を守らなくてはならない。
ぜひこの機会に、あらためて自分たちの仕事の価値を考えよう。仕事は増え、複雑になり、責任は拡大しているのに、「前と同じ給料で頑張れ」がまかり通ってはいけない。労働の価格破壊、投げ売りをしてはいけない。

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