税を考える

「税」は怒りを誘発する。自分の生活にかかわることであり、負担感もある。ついつい、何か言いたくなるものだ。つれづれなるままに書くことにする。
税に関する書道コンクールなるものも存在する。税金に関する啓発とも言えるが、少年少女を利用した税の美化ではないかと毒づきたくなる人もいることだろう。実際、頑張っている少年少女たちとその保護者や指導者には申し訳ないが、「税金」「納税」「身近な税」などを書かされている状況に、違和感を抱いてしまった。
地下鉄サリン事件から30年が経った。今年は、大学の卒業式と重なった。未来ある若者を送り出す日に立ち会えたわけだが、あの頃、すでに東京に住んでおり、事件に巻き込まれた可能性もあったわけだ。「生かされている」のだと感じた。
歴史に残るテロを起こしたオウム真理教だが、「暴力革命」の前に、政治への進出によって社会を変えようとした。1989年に真理党を結成し、1990年の衆議院選に教祖の麻原彰晃を含む25人で出馬した。メインとなる政策は「消費税廃止」だった。教祖の名前である彰晃と、消費税の韻を踏む「麻原彰晃マーチ」も話題となった。
同じ時期に、忌野清志郎は覆面バンド、ザ・タイマーズを結成した。ザ・タイガースと大麻を想起させるバンド名だ。土木作業員や全共闘学生運動の活動家をモチーフとした、ヘルメットにサングラスに作業服といういでたちで、政治家や資本家を批判する曲を披露し、放送事故スレスレのパフォーマンスで社会をざわつかせた。皮肉なことに、最も売れた曲はモンキーズの『デイドリーム』を日本語カバーしたラブソング『デイ・ドリーム・ビリーバー』で、CMソングに何度も起用され、商業的に大成功した。個人的なお気に入りの曲は『税』だ。消費税、固定資産税などひたすら税金の名前を連呼し、納税をしたくないという庶民の気持ちを代弁した。
このように、税金は常に庶民の怒りを誘発する。特に消費税は段階的に引き上げられており、負担感も大きく感じる。貧富の差に関係なく、消費税はやってくる。物価も高騰する中、税の重さを日々感じる。
ただ、庶民の立場からすると、負担感があるものの、一方で税金のない社会というものも考えにくいのではないか。国家を家庭に例えると、収入が入ってこない、企業に例えると売上がない状態にも似ている。これでは、未来はない。税金がない、少ない社会というのも想像しにくい。
特に消費税については、減税を掲げる政党が存在する。これは可能なのか、どのような副作用が生まれるのかを吟味しなくてはならない。増税にしろ、減税にしろ、実現可能性、納得感が必要だ。
税はポジティブに考えるならば、社会、さらには政治に関心を持つ入り口になり得る。「税金の無駄遣い」「われわれの血税を無駄にするな」という批判を政府は真摯に受け止めるべきだし、私たちも主張するべきだ。
一方、税収とその使い道については常に冷静な議論が必要だ。「税」は怒りを誘発しやすいがゆえに、人を扇動しやすい。立ち止まって考えること、さらには、不都合な真実から目をそらさないことも大切だ。
さて、税金を誰の何に使うべきか。税はどうあるべきか。自分ごととして考え、主張しよう。
