仲間を増やし組織を強くする嘱託社員の組織化を実現
「誰もが安心して働ける職場」の実現へ


中央執行委員
嘱託社員の組織化の背景
KDDI労働組合が嘱託社員の組織化に取り組むにあたっては、長い経緯があります。KDDI労働組合は、2011年にユニオン・ショップ協定を締結しましたが、当時の嘱託社員は管理職相当として再雇用されるケースが多く、組合員の対象としていませんでした。
その後、高年齢者雇用安定法の改定を踏まえ、KDDIでも2013年4月から60歳以降の就業を希望する社員の継続雇用制度を導入し、定年再雇用者は嘱託社員の区分となりましたが、その時点で組合員の対象とはしないままとなっていました。
定年再雇用を選択する社員は年金受給開始年齢の引き上げに伴い増加していきました。加えて、事業の拡大等により、保健師や薬剤師などの特定の業務に従事する社員等も嘱託社員として雇用され、いずれも組合加入の資格を有しない状況にありました。
嘱託社員の組織化の必要性が徐々に高まる
定年再雇用制度や嘱託社員の処遇改善等も、労使協議を通じて制度改定をしてきましたが、当事者である嘱託社員の声を直接集約できないことは大きな課題でした。また、高年齢雇用継続給付金の減額や長く続いたデフレからの物価高騰など社会情勢が変化する中、その働き方や生活防衛の観点からも組織化の必要性が一層高まっていきました。
また、非組合員である嘱託社員からも、労働組合に対して相談が寄せられるケースも増えてきたこともあり、組織化の必要性の機運が徐々に高まってきました。
嘱託社員の組織化に向けて
こうした背景を踏まえ、2024年度から本格的に「嘱託社員の組織化」に取り組んできました。まずは、当事者である嘱託社員の皆さんと意見交換を行い、処遇や働き方に関する課題を直接伺いました。その中で組織化に対する意見を確認したところ、多くの前向きな声が寄せられる一方で、まもなく65歳を迎える嘱託社員からは「あと1年しかないから声を上げても無駄」との消極的な意見もありました。しかし、職場の改善には当事者の声が不可欠であることを丁寧に説明し、当事者の声が制度改善につながることを訴えてきました。
そして、2025年2月の「第29回臨時全国大会」において「嘱託社員の組合員範囲の見直し」が決議され、翌3月には、労働協約の改定を会社と締結し、組合員としてともに活動できる環境が整いました。直後の2025春闘では、嘱託社員も含め、3%以上の月例賃金改善要求を行い、満額回答を得ることができました。
意義と展望
嘱託社員が組合員の対象となった以降、加入促進活動に取り組んでいます。
嘱託社員の組織化は、単なる人数の拡大にとどまらず、労働組合の基盤を強化し「誰もが安心して働ける職場」を実現するための一歩だと考えます。
嘱託社員は、定年再雇用者に限らず、専門職として長年培った知識や経験を生かし、職場を支える重要な存在です。その声を労働組合が受け止め、社会情勢や業界の違い等も含め、労働条件や処遇の改善を進めていくことが重要であると考えます。
おわりに
KDDIグループで働くすべての労働者が安心・安全に働ける職場環境を作るためには、会社と対等な立場で議論できる労働組合の存在が不可欠であると考えます。引き続きKDDIグループにおける健全な集団的労使関係の構築に向けて、取り組みを進めていきたいと考えます。