仲間を増やし組織を強くするグループ会社統合から組織拡大
過半数割れ危機から8割超を組織化
過半数割れの危機
ミライト・ワン労働組合は、グループ会社の統合をきっかけに組織拡大を実現した。統合したグループ会社5社のうち3社には労働組合がなく、そのまま統合すれば過半数割れの危機に直面する事態でもあった。労働組合の熱心な取り組みの結果、組織化対象のうち8割超が組合員となる組織化に成功した。どのような取り組みが展開されたのか。ミライト・ワン労働組合の担当者に話を聞いた。
2023年11月、通信建設大手のミライト・ワンが東日本管内のアクセス系グループ会社5社の統合に向けた準備を進めると発表した。統合した会社は全国のアクセス系グループ会社の中で最も大きく1000人規模になる。業務の集約化や効率化、ビジネス領域の拡大などがその狙いだった。
これに対してミライト・ワン労働組合はその翌月、新組織準備委員会を早速発足させた。統合する5社のうち3社には労働組合がなかった。従業員規模が2番目と4番目の会社には労働組合があったが、一番大きい会社も含め、そのほかの会社には労働組合がなかった。そのため、組織拡大をせず統合した場合、新たな会社での労働組合は、過半数を下回ることになってしまう。
「グループ全体で一体感を持って働ける環境の整備のためにも組織拡大をする必要がありました」とミライト・ワン労働組合の藤原宣・副委員長は振り返る。
会社訪問で理解を得る
労働組合は、すぐさま具体的な行動に取りかかった。年が明けた2024年1月から、労働組合のなかった企業を訪問し、組合づくりに対して理解を求めた。これまでにも組織化をアプローチしたことはあったが、組合結成にまで至らなかった。
労働組合は、組織化のメリットを経営者に伝えた。例えば、従業員の声がボトムアップで経営層に伝わること。経営者の思いを組合員に伝えられること。風通しの良い組織になるとともに、福利厚生のメリットも伝えた。その結果、労働組合の説明に対して、労働組合のなかった会社も理解を示した。「組合をつくったとしても、つくりっぱなしにせず、職場を回って従業員の声を拾ってほしいと要望する経営者もいた」と藤原副委員長は振り返る。親会社であるミライト・ワンや、業務の結び付きが強いNTTの労使関係が安定していることも経営者の理解を得る上で役に立った。
20カ所で加入説明会
その後、会社は2024年7月に統合を正式に発表し、2025年1月に新会社を発足させた。
この間、会社側と歩調を歩わせつつ、2024年11月から12月にかけ労働組合は、労働組合のない会社の職場を中心に新組織の加入説明会を展開した。統合会社は、東北地方も含めロケーションが関東全域に点在し、職場訪問にも時間がかかった。しかもアクセス系の業務は現場仕事が多く、夕方の加入説明会までに現場から戻れない人も多いため、説明会に人を集めるのに苦労した。そのため技術センターの理解を得て従業員が現場に行く前の早朝から説明会を開催したり、2部制で説明会を開催したりと工夫を凝らした。
説明会は20カ所で開催した。ミライト・ワン労働組合の執行部メンバーが手分けをして各地のロケーションで加入説明会(オルグ)をした。説明会では、労働組合の機能や福利厚生のメリットなどをアピールした。
「強調したのは、労働組合の発言機能です。みんなが組合に加入し、みんながこう言っていると訴えるからこそ、経営者に届きます。『数は力』です。みんなが労働組合に入るからこそ要求が実現します。そのメリットを強調しました」と藤原副委員長は話す。そのほか、ミライト・ワン労働組合が勝ち取ってきた賃上げの実績などもアピールした。
加えて、経営者の理解を得た上での組合結成であることも伝えた。会社との良好な労使関係は、組合員の不安を払拭し、組合加入の促進につながった。
労働条件の引き上げへ
2025年1月、新会社が発足した後、労働組合も同月、新組織を立ち上げた。従来、北関東支部として活動していた組織に統合する形で、新たにミライト・ワン労働組合関東総支部を結成した。これにより、統合したグループ会社の従業員は、親会社であるミライト・ワン労働組合の組合員となった。
「グループ会社のうち1社が、親会社の労働組合の支部として長年活動し、労働条件もなるべくそろえるようにしてきました。その歴史を引き継ぐ形で、単組ではなく、支部という形をとることにしました」と藤原副委員長は説明する。
グループ統合によって、労働組合のなかった会社の労働条件は引き上がった。
「ミライト・ワン労働組合の一員になったからこそ、今後も労働条件は合わせていこうという話は出ています」と話すのは、関東総支部の山田延江書記長だ。グループ会社への業務移管に伴う出向が増える中で、個社で使えていた制度を各グループ会社でも使えるようにする必要性が増している。今後も単一組織としてのメリットを生かした要求をしていく方針だ。
職場の声を集める
今後の課題は、統合した組織間の交流だ。労働組合のなかった会社から組合役員を選出することも重要になる。
労働組合はすでに説明会(オルグ)やレクリエーション活動を実施している。レクリエーション活動は、他のグループ会社の労働組合も含めたソフトボール大会や、会社のロケーションを生かした花火大会レクを開催した。ソフトボール大会は約200人が参加。花火大会レクは女性組合員から人気だった。
オルグ活動では「職場にきてくれてうれしい」という声が寄せられている。
「最初は、相談内容が会社に伝わることを心配する組合員もいましたが、丁寧に説明し、会社への相談との違いを理解してもらうようにしました」と山田書記長。実際、対話会ではさまざまな要望が組合に届いている。対面でのオルグ活動のほか、「TUNAG」アプリを活用した「組合ほっとらいん」を展開し、現場の声を集めている。
「アンケートをとってくれるようになってうれしいという声も届いています。労働組合にこんなことも話していいんだと思ってもらえる存在になりたい」と山田書記長は話す。
このような取り組みの結果、統合会社の組織率は8割を超えた。さまざまな機会を通じて組合員の声を集め、会社との交渉に反映させる方針だ。
「統合して1年も経過していないので、旧会社間の壁を取り払うのも労働組合の役割です」と藤原副委員長。
山田書記長は、「職場の声を機関紙などを通じて発信することで互いの情報が伝わります。多くの人たちとのコミュニケーションを通じて、みんなが参加できる労働組合にしていきたい」と話す。
ミライト・ワンには、組織化されていないグループ会社がまだ存在する。グループ一体感を築き上げるため組織拡大に向けて今後も働きかける方針だ。