仲間を増やし組織を強くする「労働組合に入っていてよかった」
寄り添いながら安心感を高め組合結成へ


オルガナイザーの仕事
私は連合長崎で組織拡大を担当するオルガナイザーとして働いています。オルガナイザーの仕事は、①労働相談対応、②労働組合のない会社に労働組合をつくるサポート、③連合長崎内の組織や役員に「組織化するんだ」という機運を高めていくことです。
私はNTT労組の出身です。労働組合のない企業で働く人からの相談を受けるたびに「NTT労働組合に守られていたことのありがたさ」を痛感します。労働組合があれば相談者も企業もこれほどつらい思いをしなくてもいいのにとつくづく思います。ですから私は、職場に労働組合が絶対にあったほうが良いという強い思いでこの仕事をしています。
飛び込みで企業訪問をしていますが、ほとんどが門前払いで名刺をもらえることはまれです。「労働組合」を毛嫌いしている経営者もたくさんいます。外から見る労働組合の現実を思い知らされます。皆さんの職場には飛び込み営業をしている人もいると思いますが、ねぎらいの言葉や成功した時の声掛けは励みになります。
仲間を増やすためのポイント
組織拡大には大きく次の三つの切り口があります。
①企業内の未加入者の組織化
一言で言えば「同じ職場で働く仲間」を労働組合が守るということです。職場にはいろいろな雇用形態の人がいて、一人ひとりがさまざまな役割・仕事を果たすことで、その企業のサービスや製品が提供できます。正社員だけ、組合員だけで職場がまわっているわけではありません。その現実を直視し、すべての人の加入をめざしながらも、まずは職場で過半数代表を維持・拡大することが重要です。法的には雇用形態にかかわらず、過半数代表には一定の権限が付与されていますから、組合員の声を反映し職場改善につなげるためにも、すべての職場で過半数かどうかのチェックと過半数の確保を連合の組織内に呼びかけています。
②グループ会社、関連会社の組織化
企業の成長・発展のためには、それを支えるグループ会社、関連会社の存在が不可欠です。「同じグループで働く仲間」という視点、そしてグループ全体での労使信頼関係の構築がグループ全体の発展につながるとの視点をもって具体化してほしいと思います。
③一般未組織企業の組織化
情報労連オルガナイザーと一緒に行動することもありますが、皆さん本当に勉強していますし頑張っています。でも飛び込みから信頼関係を築くまでに時間がかかり、そこから労働組合をつくるまでにはさらに時間を要します。都道府県協が連携している企業などとオルガナイザーをつないで、可能であれば帯同訪問してもらうことで企業との信頼関係は一気に深まると思います。また、組合員の家族や知人・友人などが勤める企業のさまざまな情報提供も企業との関係づくりに役立ちます。ブロック支部・県協や各単組とオルガナイザーがもっともっと連携することで成果につながると確信します。
組合立ち上げの際のポイント
まずは職場の問題点の把握です。その職場で働いている人は仮に法律違反であっても当たり前と思って仕事をしています。労働時間管理やハラスメント、賃金未払いをはじめ具体的事例を示しながら問題点を明確にしています。
次に、会社の組織図と人員配置名簿から各職場代表を選出して準備会を立ち上げます。結成趣意書、役員体制、規約(組合費含む)、組織体制など基本的な事項を議論します。
具体的な手順や作業などはひな型がありますので、その職場に合わせてアレンジしますが、結成に向けての大きな壁は、役員のなり手と組合費です。準備会メンバーとの話し合いを重ね、安心感を高めるとともに寄り添いながらの準備を心がけています。
実際の事例から
「労働組合をつくりたい」という相談から組合結成に至った事例を紹介します。相談者は前職の職場で労働組合を経験し、「この会社に労働組合があればもっとよくなる」との思いを持っていました。会社は、九州をエリアとする大手企業の代理店でした。大手企業には労働組合があり、連合本部を通じてその労組と連携し、現地の人たちと一緒に組織体制や課題、諸準備などを進めてきました。親会社労使の信頼関係が後押しし、九州各県・各拠店の中心人物から全従業員への働きかけの結果、ほぼ全員加入で結成できました。現在は、九州以外のエリアでの組合づくりが進められています。
オルガナイザーの心構え
労働組合があったとしても一筋縄ではいかない厳しい時代です。労働組合をつくり、苦しんでいる働く仲間を守ると同時に、企業にも大きなメリットがあるとの信念の下、日々活動しています。
労働相談への対応は、まず労働組合に相談すること自体ものすごく勇気がいりますし、自分のつらいことを話してくれているわけですから感謝の気持ちをもって対応しています。労組結成までには多くの課題にぶつかりますが、経験豊富な人や連合本部などに聞きながらみんなで相談しながら解決しています。
労働組合がなぜ大切か
「働く一人ひとりは弱い」。バリバリ仕事をこなしている人は「労働組合は必要ない」と思うかもしれません。でも病気や事故は不意に襲ってきますし、介護や育児など働くことを最優先にできない場面は人生に幾つもあります。セクハラやパワハラに悩んでいる人もたくさんいます。誰にも相談できずに体調を崩して退職に至るような最悪のケースもあります。「労働者は弱い、だから労働組合があるんだ」という根本的なことを組合員はもちろん組織全体で考えてほしいと思います。
若いとき「労働組合の役割は、組合員の雇用を守り労働条件の維持・向上」と教わりました。企業内での団交等による役割は大きいですが、企業の枠を超えて、情報労連を中心に情報通信産業における政策実現や政治的解決、平和や人権、環境など地球規模での活動、またUNIの一員として国際的な連帯活動にも参加しています。こうした活動は、個人では限界があります。労働組合に多くの仲間が結集することで大きな力になり、ひいては組合員とその家族を守ること、そして幸せにつながるものと確信しています。
最後に、組織拡大を進めるためには、まずは「役員・組合員が労働組合に入っていてよかったと実感できる」ことが大事だと思います。「労働組合の原点が職場(現場)・組合員」を基本に、組織強化を職場で展開し、その周りにいるすべての人たちを「同じ働く仲間」として広げていきましょう。皆さんの活躍を楽しみにしています。