特集2025.10

仲間を増やし組織を強くする組合づくりの核となる人材が重要
会社には不当労働行為をしっかり説明

2025/10/14
情報労連には、労働組合づくりをサポートする専門家であるオルグ団が配置されている。組合づくりのプロから見た結成までのポイントとは?
木原 学 情報労連オルガナイザー

組合結成の課題とは

労働組合づくりの際に直面する大きな課題は、会社から一定の理解を得ることです。多くの会社は今も、労働組合に対して「闘争」というイメージを持っています。そのため、労働組合からの働きかけがあった場合、多くの会社は労働組合に対して構えるか、つぶそうとするかのどちらかです。

一昔前までは、労働組合をつぶそうとする会社が多く、対応に苦慮しました。しかし近年では、企業イメージを重視する経営姿勢が広がり、警戒感こそあるものの、よほどワンマン経営でない限り最初から労働組合をつぶしにかかるケースは減ったと思います。

ただ、それもあくまで表向きの対応に過ぎないことが多く、会社からの不当労働行為は、組織づくりにおいて避けて通れない課題です。会社から本当の意味で一定の理解を得るには、多くの時間を要するのが現実です。

核となる人材の重要性

労働組合づくりのもう一つの課題は、核となる人材、つまり執行部として活動するメンバーを見つけることです。現在活動中の労働組合でも、後任の育成や後継者不足が課題となっています。新規結成の際には、その選出がより大きな課題となります。

特に労働組合の執行部になる場合、会社業務に加えて組合活動を担うことになり、そのことに対する抵抗感もあります。さらに近年は転職市場が活性化しており、会社との交渉で労働環境の改善を実現するよりも、転職を選択する人が増えていることも、執行部の選出が難しい要因の一つではないかと感じます。

過去には会社から一定の理解を得られたとしても、核となる人材が見つからず、労働組合の結成に至らなかったケースもあります。逆に、核となるメンバーがそろえば組織化は可能です。仮に会社の理解がなくても労働組合の結成自体はすぐにでも実現できます。

しかし、労働組合の最大の強みは過半数の同意を得て、健全な労使関係の構築を目的とした活動を行うことです。そのためには会社との信頼関係の構築が不可欠です。その環境整備が本格的な組織化に向けた最大のステップです。

仲間づくりの中心となる人は、職場の中で信頼を得ており、管理職からも一定の評価を受けていることが大切です。

結果論になるかもしれませんが、健全で力強い労働組合では、職場で働く仲間(組合員)のために、よりよい環境を整えるという使命感を強く抱き、リーダーシップを発揮できる人が執行部として活動しているように思います。

加入説明のポイント

執行部が選出された後の次のステップは、職場の従業員に対する組合加入の呼びかけです。その際、大きな課題となるのは組合費です。加入説明の際には、組合費の使途に関する質問が必ずといってよいほど出ます。組合費を理由に加入しない人も少なくありません。

また、加入説明の際は、加入の意思を示さない人が一定数必ずいます。その人が他の従業員の加入に影響を及ぼす場合もあるので、従業員同士のネットワークを事前に把握し、対策を講じておくことが重要です。

会社対応のポイント

会社からの不当労働行為にはしっかり対応することが重要です。そのポイントは、何が不当労働行為にあたるのかを明確にすることです。具体的には、不当労働行為は非組合員(管理職以外)でも対象となる旨を人事担当者に伝え、会社からも組合に対してネガティブな発言をしないよう注意喚起してもらいます。その上で労働組合へのネガティブな発言などは不当労働行為に該当することを、しっかりと従業員に伝えることが重要です。

成功事例として、加入活動に入る前に管理職に対して対面方式で説明を行ったケースがあります。内容は、不当労働行為とは何か、これによって会社が被る損害、そして過去の具体的な事例について紹介し、注意喚起を徹底しました。

事前にこのような説明を行ったことで、不当労働行為に対する危機感が社内全体に浸透し、ネガティブな情報が出ることなく加入活動を開始することができました。最終的に、その組織では過半数を大きく上回る加入希望を得ることに成功しました。ただし、不当労働行為はいったん収まっても再び生じる場合があります。会社への説明で予防を図るとともに、迅速に対応できるよう心がける必要があります。会社との信頼関係は重要ですが、一定の緊張感も必要です。

成功事例を生かすには?

成功事例を活用する際には、「成功事例はあくまでも一つの事例に過ぎない」という前提を持つことが大切です。会社ごとに利用できる社内ツールや施設、ロケーションなど、事情や環境は異なります。そのため、同じ方法をそのまま適用しても成果が出るとは限りません。

大切なのは、執行部が自分の会社と社員をしっかりと分析することです。その上で、分析の結果に基づき、効果的な手段として過去の成功事例を応用することが望ましいと思います。

外部からのサポート

労働組合づくりには、産業別労働組合や上部団体をはじめとして外部からのサポートが大切です。そのサポートとしては、執行部の悩みに常に耳を傾け、全力で支援する体制を整えることが重要です。執行部が安心して活動に専念できるよう、情報労連のオルグ団として的確なサポートを提供していきます。

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