カスタマーハラスメントから労働者を守る
防止措置義務施行に向けた対応のポイント加盟組合で起きているカスハラの実態
現場任せにしない対応を

起きている(写真:ももも/PIXTA)
コールセンターのカスハラの実態
現場任せから組織対応への転換を
現場任せだったカスハラ対応
情報通信産業の現場でもカスタマーハラスメント(カスハラ)は起きている。そのうちの一つが、コールセンターだ。
「夜の10時から深夜2時までお客さまの電話対応で拘束されたことがあります」。こう話すのは、コールセンターでの勤務経験が長いAさんだ。「お客さまは神様」という理由でなぜこれほどの不条理に耐えなければならないのか──。Aさんは、そう感じてきた苦しい胸の内を明かす。
コールセンターは対面と違って直接的な暴力の恐怖は少ないものの、相手が見えないことによる恐怖がある。実際、長時間にわたる拘束や、暴言、不当な要求のほか、さまざまなカスハラが起きている。例えば、Aさんが経験した事例に限っても、商品を購入する意思がないまま長時間にわたり自分の知識をひけらかすケースや、酒を飲みながら嫌がらせ目的で電話をかけてくるケースがあった。ほかにも「SNSにさらす」と圧力をかけたり、センターの住所を調べて押し掛けようとしたりする事例もあった。かつてはセクハラまがいの電話も少なくなかった。
こうしたカスハラへの対応は、現場任せの側面が大きかったとAさんは振り返る。以前は従業員を守るという会社の認識が乏しく、「クレーム対応も仕事の一つ」とみなされていた。電話を切る基準も整理されておらず、「お客さまが切るまで対応するのが当然」とされていたという。クレーム対応は「できて一人前」といった意識も根強く、クレーム対応に適応できず早期に離職する人もいた。
現場の声が大切
Aさんの会社では、ここ1〜2年でカスハラ対策が進んだ。カスハラに該当する言動には注意喚起を行い、改善が見られない場合は通話を終了できるようになったほか、長時間通話にも一定の制限が設けられた。録音やリアルタイムのモニタリングに加え、通話内容の文字化や生成AIの活用も進み、問題のあるやりとりには管理者が対応しやすくなった。
さらに、営業時間を縮小したことで、トラブルにつながりやすい入電も減少した。Aさんは「カスハラ対策をすることで以前に比べ不当な要求は減っています」と話す。
ただし、課題も残る。例えば、カスハラの判断基準が曖昧なため、結果的に現場任せの対応が残っている点だ。Aさんは、組織として対応するためにはエスカレーションの仕組みを整備することが重要だと指摘する。あわせて、発生件数や対応状況を把握し、経営層まで共有することが必要だとしている。
今後の対策としてAさんはまず、現場で働くオペレーターの声を丁寧に聞くことが必要だと訴える。
「実際にカスハラ対応をしているのは現場のオペレーターです。その声を聞かなければ、対策は実効性のあるものになりません。カスハラ対策は従業員を守るだけでなく、採用やサービスの品質にもかかわります。対策が不十分であれば人が集まらず、サービス品質にも影響し、お客さまも離れてしまいます。お客さまとの良質な関係を保つためにも、会社としてしっかり取り組む必要があります」
交通誘導員が受けるカスハラ
通信建設現場の声を聞く
「車に傷がついた」と不当クレーム
私たちが普段利用しているインターネットやSNS、動画配信といったサービスは、通信インフラが支えている。街頭では回線の敷設や保守の工事が日々行われており、その工事の安全を確保するために働いているのが、交通誘導員だ。
しかし、通信建設現場の交通誘導員が日常的にカスハラを受けている実態は、あまり知られていない。
「交通誘導員が通行人などの第三者から暴言を浴びせられる実態があります」
通信建設工事の警備にかかわるBさんはそう話す。交通誘導中に「邪魔だ」「どけ」などと強い口調で言われるだけでなく、駅前や人通りの多い場所では、休憩中や待機中に絡まれることもあるという。中には、酔った通行人から絡まれるケースもある。
実際の現場で多いのは、交通誘導とは無関係の事故であるにもかかわらず、通行者から不当な要求を受けるケースだとCさんは明かす。例えば、工事現場を通行した後に、実際の接触とは無関係であっても、「誘導が悪かった」「交通誘導員のせいで車に傷がついた」などと責任を押し付けられ、修理代の負担を求められることがあるという。
Cさんによれば、交通誘導員は警察官のように通行を強制する権限を持たない。あくまで安全確保のために協力を求める立場だ。にもかかわらず、事故やトラブルの責任を一方的に押し付けてくるケースが少なくない。
ただ、こうした被害は会社に上がりにくい。交通誘導員が「会社に迷惑をかけたくない」「現場の仕事を止めたくない」と考えて我慢してしまうことが多く、暴言などのカスハラ行為を報告すべきことだという認識が十分に広がっていないことも背景にある。
「B to B」のカスハラも
企業としても対策は進めている。全国警備業協会が策定したカスハラの基本方針に基づき、不当な要求には応じない研修を実施したり、警察OBや顧問弁護士と連携した対応体制を整えたりしている。
今後の対策としては、ウェアラブルカメラを配布して対応時の記録を残す取り組みや、カスハラ対応に関する社内勉強会の実施などが重要だとCさんは話す。また、相談窓口の整備を進め、現場で抱え込まない環境づくりも重要だと強調する。
こうした課題の一方で、工事を実際に担う作業班から受ける「B to B」のカスハラもある。背景には、人員配置の不足や役割分担の曖昧さ、現場慣行の問題などがあり、第三者からのカスハラとともに今後対応すべき課題だ。
街頭で行われる通信建設工事は、通信インフラを守るために不可欠な作業だ。その安全を守る交通誘導員が、安心して働ける環境づくりが求められている。
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