AIと就活のモヤモヤを考える

採用担当をしていた頃に、大失敗し、猛反省したことがある。それは、就職情報誌の「就職ジャーナル」の人気企業内定者エントリーシート公開企画に協力したことだった。写真の写り方、文体まで模倣したエントリシートが大量に届いた。同誌が休刊する直前の出来事だったのだが、影響力を感じるとともに、学生たちの熱を感じた。ただ、形式だけをまねすると内定は遠のいてしまうのだが。
その頃、同様に何度も聞いたのは「納豆のように粘り強い人間」「最初は営業で現場を学びたい」という表現だ。誰もがまねするノウハウだった。
就活は昔も今も情報戦である。納得のいく内定に近づくために、学生たちは創意工夫をする。これは今に始まったわけではない。初の就活マニュアル本が登場したのは1930年代である。その後もネット上の掲示板、SNSなどさまざまなツールで学生たちは就活に関するノウハウを得ていたし、キャリアセンターなどで就活について相談していた。
そんな就活をAIが変えている。AIを就活に活用する学生が増加している。インディードリクルートパートナーズの「就職白書2026」によると、2026年卒の学生のうち就職活動において生成AIを使用した学生の割合は63・3%だったことがわかった。中には、エントリーシートの作成をそのまま丸投げしている学生も一定数いるようだ。エントリーシートだけでなく、自己分析、面接対策などでAIをフル活用し、大手企業の内定を総なめにした学生も、SNSなどで注目を集めた。
このことをどう捉えるか。立ち止まって考えたい。いかにもズルをしているように感じるが、就活において誰かに、何かに頼るのは今も昔も変わらない。エントリーシートの「添削」を超えた「代筆」はすでに問題になっていた。
これまでは就活について相談する相手が周りにいない上、キャリアセンターに相談に行くことに踏み切れない学生もいた。生成AIはいつでもどこでも相談にのってくれる。
もっとも、生成AIの利活用も簡単ではないし、わなも潜んでいることを確認しておきたい。生成AIを活用しようとも、問われるのは自分である。説得力のあるエントリーシートを代筆してもらったとしても、面接で本人との乖離がバレることもある。学生をエントリーシートでふるい落とさず、必ず全員と会う企業も増えつつあるようだ。活用の仕方によっては内定したところで、ミスマッチに悩む。
AIは常に、私たちに問いかける。人間の過去・現在・未来である。便利になったときに、私たちは何をすればいいのか。便利になった先に、自分たちの作業、仕事、さらには雇用がどのように変化するのか。
最近、学生の間ではやっている言葉が「ギュられる」だ。シンギュラリティ、簡単にいうとAIが人間を超えていく、仕事が置き換えられていくことを指す。学生からの就活相談も、内定が出るのか否かよりも、この先も自分たちの仕事は存在するのかというものに変わりつつある。そして、選考にAIを活用する企業も増えつつある。AI対AIの就活が広がる。活用する側は常に存在意義が問われる。
AI就活の是非を論じるその先に、AIと人間の共生について考えよう。そして、人間の仕事を守り、創り続けなくてはならない。

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