特集2026.10

「支え合い」の大切さを見つめ直す湯浅誠さんに聞く「支え合い」
こども食堂から学べることとは?

2026/10/14
そもそも「支え合い」とはどのようなことなのだろうか。こども食堂やホームレスの人たちの居場所づくりなどの活動に取り組んできた湯浅誠さんに「支え合い」とは何かについて聞いた。
湯浅 誠 社会活動家
東京大学先端科学技術研究センター特任教授

「支え合い」の定義

私の持つ「支え合い」のイメージは割と明確です。それは「支え手」と「支えられ手」が固定化しないということです。

これを実践するのは頭で考えるほど簡単ではありません。例えば被災地ボランティアへ行く場合、支える側と支えられる側の関係は固定化しがちです。そうした関係性が続くと、支えられる側はいつも感謝する側になって萎縮してしまい、結果的に本人の持つ力を引き出せなくなってしまいます。こうした関係性は「支え合い」というより、「支援」の関係性です。もちろん被災地支援が必要ないということではありません。その関係性を固定化させないことが重要だということです。

「支え合い」の関係をコミュニティーの観点から考えてみましょう。コミュニティーとは、「支え合い」が循環する空間のことです。その関係性は一方的なものではありません。例えば、AさんがBさんを支えたら、BさんはCさんを支える。CさんはDさんを支えて、DさんがAさんを支える。こうやって誰かを支える関係が一方的ではなく循環し合う。こうした関係性が「支え合い」のイメージの一つです。

このように「支え合い」を考える上でまず大切なのは、それが一方的な関係ではないと認識することです。「支え手」と「支えられ手」の関係が固定化せず、コミュニティーの中で循環するものと理解することが、第一歩だと思います。

役割と出番をつくる

では、そうした関係づくりのために何が必要になるでしょうか。そこにはいつも決まった正解があるわけではありません。ただ、一定のスキルやノウハウは存在します。例えば「役割と出番をつくる」ということがいわれます。これは、本人が支えられたと感じるだけではなく、支える側に回れる役割と出番をつくることです。東日本大震災後もそうした関係性を意識した活動が行われました。それらのスキルやノウハウをさまざまな場面で実践することが重要です。

こども食堂では、そうした関係づくりが意図的というより、自然とできあがっています。実際に、こども食堂に行くとそのことがわかります。運営する側と参加者の区別がほとんどなく、サービスする側とされる側がはっきりと分かれていません。例えば、手が空いている人がいれば、参加者でも一緒に机を運んだり、片付けをしたりします。すると、参加者はいつも感謝する側にいる必要がなくなり、自分も一緒にその場を切り盛りする担い手なのだと認識するようになります。こうした関係が意識的ではなく、自然とできあがっているところに、こども食堂の魅力があるのだと思います。

つながりを求める人々

こども食堂の数は、全国で1万2600までに増えました。これは全国の公立小学校の数の3分の2に匹敵する数です。

こども食堂がこれだけ広がった理由の一つは、子どもと食という誰もが関心を持つ課題に対して、誰もが参加しやすい活動をデザインしたことです。社会運動と聞くと一歩引いてしまうところを、こども食堂では、「自分にもできる」と感覚を持つことができます。どんな人でも参加しやすく、多くの女性や若者が活躍しています。子どもたちにとって、多世代の人とかかわることで「誰とでも仲良くなれる」という自己肯定感が生まれます。また、意外に聞こえるかもしれませんが、月に1〜2回という開催頻度もちょうどよいのではないかと考えています。つながりにはなるけれど、しがらみにはならない。そのくらいの頻度が人々の来やすさ、活動者の負担のバランスよく適切なのではないかと感じています。

こども食堂を運営している団体にアンケートを取れば、「ヒト・モノ・カネ」が足りないという答えが返ってくると思います。ただ、だからといって、こども食堂を閉めている団体がたくさんあるわけではありません。それは、こども食堂を日々、運営しながら手応えを感じているからです。子どもたちの笑顔とか地域とのつながりとか、やりがいがあるから皆さん続けているのだと思います。

単身世帯が増えたり、地域の関係性が希薄になったりする中で、人とのつながりの少なさに物足りなさを感じる人が一定数いることも、こども食堂が広がる背景にあるのだと思います。

労働組合の「支え合い」とは

労働組合も含め、非営利組織の活動は、自分が払ったお金分のモノやサービスが返ってくる、という受益者モデルでは成り立ちません。つまり、AさんがBさんを支援したとしても、BさんからAさんに何かが直接戻ってくるという関係性では成り立ちません。支えられる側が支える側になって、それが循環していくのが、「支え合い」のモデルです。

労働組合もそうした「支え合い」の組織の一つです。ただ、組織が大きくなるほど、組合費を払う側と、サービスを提供する側に分かれ、「支え合い」の関係が見えづらくなってしまいます。すると組合員からは「高い組合費を払っているのに何もしてくれない」という声が増えるようになります。

こうした課題は労働組合だけが抱えているわけではありません。自治会も同じです。そのため自治会の中には、新しい活動を始める際には、まず自治会費を使うのではなく、有志で活動を始めるところもあります。正式な活動からあえて枠を少しずらすことで、これまでとは違う活動を展開しようとしています。

こうした活動を見ていると、労働組合としても組合員の有志による活動を何らかの形でサポートすることが大切になるように感じます。例えば、こども食堂の運営に携わっている組合員の活動支援を行う「プロボノ支援」もその一つだと思います。金銭的な支援より非金銭的な支援で組合員の活動を支えることが、「支え合い」の循環につながるのではないでしょうか。

多様なつながりをビルドインする

私自身としては今後も、こども食堂やホームレスの人たちの居場所づくりなどに携わっていきたいと考えています。

それらを通じて実現したいと思うのは、人々が分断しにくい地域や社会の環境整備です。社会の分断が指摘される中で、「意見や立場の異なる人と対話しましょう」と言われても、頭で考えるほど簡単には実現できません。そのため、気付いたらいつの間にかさまざまな人とかかわりを持っているような環境を、人々の暮らしの中にいかにビルドインできるかが重要なのだと思います。意識せずとも多様な人とかかわっている状態があった上で、多様性の大切さを意識する。そういう順番の方が多くの人たちにとって受け入れやすいのではないでしょうか。

労働組合がそうしたつながりの一端を担ってくれることを期待しています。

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