特集2016.06

LGBT 多様な性が尊重される社会に職場で進む理解浸透
継続した機会の提供がポイント

2016/06/16
KDDIは、当事者からの相談をきっかけに本格的なLGBTへの理解促進の施策を展開。全社員を対象にしたeラーニングの継続的な提供などでLGBTフレンドリーな職場づくりを進めている。

当事者からの相談がきっかけ

KDDIがダイバーシティ推進の取り組みをはじめたのはおよそ10年前。2008年にはダイバーシティ推進室を設置し、社長を最高意思決定者として、全社的な取り組みを実施してきている。

KDDIは、(1)ワークライフマネジメントの推進(2)多様な人財の活躍推進(3)働きやすい職場づくり─の三つをダイバーシティ推進の大きな柱にしている。LGBTへの理解促進は、(2)の取り組みの一つとして、女性社員や障がいのある社員の活躍推進とともに各種施策を展開している。

LGBTへの理解促進について本格的な取り組みをはじめたのは、 性同一性障がいの社員から会社に相談があったことがきっかけだ。2014年1月には、企業倫理や人事の担当者を主な対象としたLGBTに関する基礎知識を学ぶための、ロールプレーによるケーススタディーを交えた社内セミナーを開催。

さらに社員の意識啓発を図っていくため、KDDIでは全社員を対象にしたeラーニングのコンテンツを作成した。第1弾は2015年1~3月にかけて実施。第2弾は今年2~4月に実施した。第2弾では、当事者のインタビューやその上司・同僚の声を掲載して、LGBTの存在がより身近であることを知ってもらう内容とした。

継続して学習機会を提供

eラーニングを行った際のアンケートでは、第1弾の学習前にLGBTの意味を知っている社員は約25%しかいなかった。それが第2弾の学習前には約75%に上昇した。差別的言動に関しても「見聞きしたこと」が「ある」と答えた人は第1弾の段階では約11%いたが、第2弾時には約6%に減少した。これらの結果について、総務・人事本部の山本裕幸人事部長は、「LGBTへの認知度や職場での配慮は年々高まっている」と話す。一方で「『自分がアライとして協力・支援していきたいか』をeラーニングの中で尋ねたところ約35%の人が『どちらとも言えない』『協力できない』と答えました(協力したいは約65%)。協力したいと思っていただける方をさらに増やしていくことが今後の課題です」と語る。この点に関しては、「理解促進には継続が大切だと考えています。一つ一つ繰り返していくことで理解を浸透させていきたい」と話す。

職場の理解はスムーズ

山本人事部長は、「これらの取り組みがカミングアウトのきっかけになっている場合もあると聞いています。当事者の中にはカミングアウトして自分の思いを周囲に伝えられたことで、生き生きと働けるようになったと話す人もいます」と語る。カミングアウトに対する上司や同僚などの理解もスムーズで、「カミングアウトがあった際に職場で啓発活動を行っても、抵抗なく受け入れてくれている」と打ち明ける。トランスジェンダーの人のトイレの問題に関しても、当事者とコミュニケーションを図ることで、トラブルになった事例はこれまでのところ報告されていないという。

「取り組みを始めた際はどう対応すればよいか悩むこともありました。ですが、いまとなっては杞憂でした。LGBTへの理解促進は企業にとって大きな負担になるものではなく、抵抗感を持つ必要はないと思います」。今後は社内制度の見直しなどをさらに検討していきたいと話す。

KDDIでは、こうした取り組みのほかに、今年4月1日には、企業の行動指針において性的指向による差別を行わないことを追加したほか、性別変更に伴う名刺や社員証、年金や健康保険の手続きに対応したり、健康診断の個別受診に配慮したりしている。また、公的な同性パートナーシップの証明書があれば、同性パートナーの方のau家族割の適用を開始したり、新入社員採用時のエントリーシートに性別記入の欄を設けないという対応も実施している。

山本人事部長は「この取り組みは緒に就いたばかり。職場でカミングアウトしている人はまだごく少数です。現場で悩みを抱えたり、様子を見たりしている社員もたくさんいると思います。これからも理解促進の活動を継続し、労働組合とも連携しながら、相談を受けられる環境を整えていきます」と展望を語る。

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