LGBT 多様な性が尊重される社会にダイバーシティを受容する会社へ企業の明確な姿勢を打ち出す
NTTは4月27日、グループ内におけるLGBT等 性的マイノリティーに対する取り組みを推進していくと発表した。NTTは2007年から主要各社にダイバーシティ推進室などを設置。女性活躍推進や障がい者雇用促進などに取り組んできた。今回、社会的な課題認識の拡大を背景に、性的マイノリティーに対する取り組みを推進する姿勢を明確に示した。
NTTのダイバーシティ推進室の松村若菜室長は、「今回の取り組みは、ダイバーシティマネジメントの一つとして企業が当然対応していくべき課題です。私たちは、従業員はもちろんのことグループ会社やお客様など、さまざまなステークホルダーの皆様を含めて多様性を受け入れていこうというスタンスでいます」と話す。
その上で松村室長は、「グローバル化の中で企業が事業を拡大していくためには、ダイバーシティマネジメントが不可欠です。多様性を価値として尊重しない企業は生き残っていけません」と強調する。NTTは2020年の東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナーだ。オリンピック憲章が性的指向に関する差別を禁止していることから、社会をけん引していく立場にもある。
ワークショップなどを展開
ニュースリリースでは社内向け取り組みの実施内容として表の項目を掲げた。松村室長は、「企業トップのメッセージを打ち出すことも大切」と話す。理解醸成のために作成した学習資材には持株会社社長メッセージを最初に掲載。グループ全体で取り組んでいく姿勢を明確にした。
理解醸成に関しては2014年12月にグループ会社の人事担当者を集めて学習会を開催。今年2月にもグループ企業を横断するイベントでLGBTに関するワークショップを開いた。この中では5人の当事者に参加してもらうグループディスカッションも実施した。
「グループディスカッションでは社内で実際にあった事例を基に、組織としてどういう対応をすべきか当事者の方にも参加してもらい議論しました。直接、当事者の意見を聞くことで、気付きの多い勉強会になりました」と松村室長は振り返る。アンケート結果では、「差別的な発言をした」と自己認識している人は事前学習の段階では27%だったが、ワークショップ後には「無意識に差別的な発言をしていたことに気付いた」とする人が64%になった。
「自分はわかっている、理解していると思っている人でも、あたらしい気付きがある。学習機会を設けた結果、理解が深まり、より適切に対応できるということ。こうした機会がとても重要です」と強調する。新入社員研修や新任管理職研修にLGBTに関する項目を設けたり、5月にもグループ会社の社長に必要性を伝えるなど、積極的に知る機会・考える機会を設けている。ダイバーシティ推進室ではこうした学習会に参加した役員や社員に、NTTグループオリジナルの「アライ」グッズを配布し、当事者が働きやすい環境づくりに努めている。
制度運用の周知も
こうした取り組みに加えて4月下旬には、「結婚休暇」や「慶弔金」「慶弔電報の発信」について、同性パートナーも利用できるよう制度運用について社内に周知した。松村室長は、「制度も一つのメッセージです。これまでも申し出があれば利用できましたが、あらためて企業の姿勢を伝えるために周知いたしました」と話す。ダイバーシティ推進室では、このほかにも当事者を含む「アライ」のネットワークづくりに取り組んでいて、交流会などを定期的に開催している。
松村室長は「今後の課題は、学習会などの理解醸成の機会をいかに増やしていくか」と語る。「個人の価値観を変えるにはとても時間がかかります。一方では、学習会などで少しずつ理解醸成を進めていき、もう一方では企業の姿勢としてこの課題に取り組むことを明確にし、ビジネスとしての重要性も訴えていきたい」と話す。
「この課題は多様性を尊重する価値観を浸透させるための一つの試金石だと考えています。この取り組みを促進することで、違いを価値として認めて協働する、配慮はすれども特別扱いはしない、という、本質的なダイバーシティの受容を実現する企業をめざしていきます」
NTTが発表した社内向け取り組みの実施内容
メッセージ発信
- 社長メッセージ
- アニュアルレポート等における「ダイバーシティ推進」に「性的指向」「性自認」を明記
理解醸成
- LGBT等 性的マイノリティーに関する基礎知識のイントラネット掲載
- eラーニングコンテンツの制作(1.基礎編 2.接客編)
- 職場におけるトランスジェンダー対応Q&A
- 勉強会開催
人的ネットワーク
- 非公式Allyネットワーク構築
- NTTグループオリジナルAllyグッズ
制度運用
- 重要なライフイベントに関わる「結婚休暇」、「忌引休暇」、「慶弔金」、「慶弔電報の発信」について、同性のパートナーにも適用
※今後、法的制約のあるものを除き、配偶者に関わる制度について、同性のパートナー等にも拡大を検討