特集2016.11

「第四次産業革命」と労働運動欧州労組は雇用の不安定化を懸念
質の高い仕事の創出をめざす

2016/11/14
「クラウドワーク」といった働き方に対し、UNI欧州地域組織は、賃金低下・雇用の不安定化につながっていると警戒を強めている。
小川 陽子 UNI-Apro東京事務所長

仕事が二極化する傾向

EUの労働市場に、新しい、より脆弱な雇用形態が出現し、欧州の雇用の質を低下させている。UNI欧州地域組織は、「EUはサービス産業の自由化・規制緩和による単一市場の創設に傾注するあまり、強烈なコスト競争の圧力から市場が不安定化し、サービスの質が低下、投資の抑制感がイノベーションを阻み、賃金低下と雇用のさらなる不安定化・収入格差につながっている」と指摘する。

UNI欧州地域組織が大学や研究機関と実施した、欧州サービス産業の最近の調査では、デジタル化とそれに伴う技術革新がサービス産業の仕事を抜本的に変えていること、いわゆるギグエコノミーの実態が明確に示された。

労働力は、高い専門知識を要する仕事と必要としない仕事に二極化する傾向にあり、かつスキル不足に直面している。サービス産業はEUの生産高および雇用の70%以上を占めており、欧州全体の経済・労働市場の発展と成長はサービス産業の健全性にかかっていると言える。

政府がデジタル化を推進する中で、企業は事業を人件費の安い国に移転または外注化する。事務作業や運輸等の非熟練業務は機械化される。一方でスキル不足に直面する分野も出てきており、労働者には新たなスキルが求められるが、再訓練の機会の有無やそのコスト負担についてははっきりしない。パート、有期、フリーランス、派遣といった非典型雇用に加え、オンコール労働、ゼロ時間契約といった新たな雇用形態も増えている。こうした不安定な労働条件に苦しむのはたいてい女性、外国人、高齢者、新入社員といった弱者グループである。

質の高い仕事をマニフェストに

非知識集約型の産業や、特に中級スキルレベル以下の仕事は標準化され、厳格に反復的ルーティン作業に従うよう求められる傾向が強い。他方、知識集約型の仕事でも、管理手法、ワークフロー、プロセスにおいて標準化が起きている。そしてプロジェクトベースで働く労働者が増えた。競争の圧力から、厳しい納期に追われ、支援も乏しく、労働時間が管理されない中で、イノベーションを生み出す能力も蝕まれていく。新興の安価な労働市場にアウトソースし、バックオフィス業務を分離する経営戦略を採る企業に加え、デジタル化、ロボット化の進展に伴い、シェアリングエコノミーのような新たなビジネスモデルを採用する企業や、クラウドワーカーが増えている。

UNI欧州地域組織は「質の高い仕事、質の高いサービス、持続可能な欧州サービス産業成長」をマニフェストに掲げ、単一市場において公正な競争の下、消費者、労働者、企業に利益をもたらす産業づくりをめざしている。

すでに英国、スウェーデン、オランダ、オーストリア、ドイツでのクラウドワーキングの実態調査報告が発表されており、これらの結果をまとめた「デジタル足跡プロジェクト」と題する第1弾の報告が11月にBBC5ライブで公表される予定だ。その後、調査を東欧や南欧でも実施し、欧州全体での比較分析を行う。来年には欧州以外での調査も予定している。

※1 ギグ(短期の仕事)を請け負う非正規労働者が多い労働市場

※2 呼び出し労働

※3 保証される就労時間がゼロ、つまり使用者が必要とする時だけ就労

※4 典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある(総務省平成27年版情報通信白書)。

※5 比較的オープンな人的ネットワークに仕事や課題を発注、募集、問い掛けすることで、知的労働力を相対的に安い価格で調達する方法、いわゆるクラウド(不特定多数の群衆に)ソーシング(ネットを介して業務委託する)で働く、フリーランスや主婦、退職者等。

クラウドワークで得た収入の割合(英国調査)
「クラウドワーカー」の収入額(年収・英国調査)
Base: 238 UK adults 16-75 who have found paid crowd work online
引用:http://www.feps-europe.eu/en/publications/details/363
特集 2016.11「第四次産業革命」と労働運動
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