特集2017.01-02

分断社会を乗り越えろ!「共闘」に大切な「大人」の流儀
連携は「話せる人」を探すことから

2017/01/17
政治を変えるためには、社会運動が幅広い人たちからの支持を得なければならない。労働組合が公益性を代表するために、市民社会とどのように連携すべきか。成熟した「大人」の流儀が大切だ。
中野 晃一 上智大学教授

社会党・総評ブロックの地盤沈下

中道左派政党と労働組合が連携関係を持つことは、世界で広範に見られることです。労働運動のかかわりなしに世界で民主化は進みませんでしたし、経済的・社会的な平等の追求も進展しませんでした。その役割は歴史的に見ても非常に重いものがあります。近年、労働組合が既得権益としてバッシングされることがありますが、労働運動が政治にかかわることは、民主的な観点から正当性があります。ひるんだり、臆したりする必要はありません。

ここでポイントとなるのは、労働運動の代表性です。労働組合が企業・業界の枠にとどまらず、より幅広い公益性を代表できているかが問題です。労働組合に加入していない労働者から支持を得られないと、政党も労働組合も既得権益として批判の対象になります。ソーシャルユニオニズムという言葉がありますが、労働組合がどれだけ社会性の高い運動を展開できているかがポイントです。

このような意味で、かつての社会党は幅広い公益性を代表できませんでした。総評の支持を得た社会党の議員は、中選挙区制の下で選挙活動に注力せずとも当選できる面があり、総評との関係の中に安住してしまったところがありました。

総評との関係があったおかげで、社会党の議員は選挙活動ばかりせずに済み、政策論争に専念できる面もありました。しかし、その一方で、社会党も総評も、社会基盤、経済構造が変化する中で、より幅広い人たち、女性や若者たちに積極的に加わってもらうことをしませんでした。革新勢力であるにもかかわらず、保守性を強め、自ら新機軸を打ち出せなかったことが、政党の地盤沈下につながったと言えます。

民進党と市民社会

民主党は、幅広い公益を代表することで支持基盤を広げようとしました。ただ、民進党になっても地方レベルでの市民組織とのつながりは強くないと感じます。連合とのつながりは各地域でもちろんありますが、それ以外の市民運動とのつながりがあまり見られません。総評と社会党の関係が、縮小再生産されたことを反省して、より開かれた支持を得ようとしていたにもかかわらず、そのねらいは実現したとは言い難いところがあります。かつての失敗を繰り返さないためには、外向きの発信、新規参画を求める働きかけをもっとしなければいけません。

既存政党や労働組合が市民とのかかわりに成功していない中で、アメリカの「サンダース現象」や、スペインの「ポデモス」のような既存の組織とは別の新しい運動が展開され始めています。

こうしたグループは確かに、既存組織に対抗する形で出現した面もあります。ですが、それだけではありません。既存政党や労働組合の先行した運動があったからこそ、新しいグループが参入できた面もあります。例えば日本では、「総がかり行動」と「シールズ」は対抗的な部分はありました。けれども、「シールズ」の若者たちは、「総がかり行動」の先行する運動を見て、「自分たちもやってみよう」「やるなら自分たちのやり方で挑戦してみよう」と考えたのです。

また、既存の労働組合には、経験の重みや持続力があります。一方で、若い人たちには、伝えることに関する研ぎ澄まされたセンスやデザイン力がある。両方組み合わさると強い力になります。こうした関係は、排他的である必要がありません。互いの良さや弱点を踏まえた上で、リスペクトしあう運動ができるかどうかが問題です。

運動をつなぐ共通のニーズとは

何が運動をつなぐための「共通のニーズ」になるでしょうか。二つのポイントがあると思います。

一つ目は、個人の尊厳が守られ、育てられる政治が、「共通のニーズ」の原則になるということです。トランプ現象に見られるように、政治の世界では今、分断と排外の手法が横行しています。これに対して、人びとが分断されないように連帯する。一人ひとりの尊厳を守るために連帯することが求められています。

二つ目は、このような原則の方向性を共有した上で、運動側が粘り強く話し合っていくことが大切です。なぜかというと、個人の尊厳を守ろうとする勢力と、分断統治をする勢力との間には、力の非対称性があるからです。

どういうことか説明しましょう。分断統治の政治は、ヘイトスピーチまでも用いて過激な政治要求を打ち上げ、それを少し穏健化させて決着し、現実路線に転じたと見せかける手法を多用しています。

一方でリベラル左派はどうでしょう。例えば、サンダースが大統領になったとしましょう。彼が大統領になったとしても、その公約のすべてを果たすことは難しいでしょう。このとき、サンダースに対する希望は失望に変わる。日本の民主党政権が、裏切ったとか、マニフェスト総崩れと攻撃されたように、仲間内からも鉄砲玉が飛んでくるようになるのです。

このようなことを続けていれば、リベラル左派はいつまでたっても勝てません。問題が一足飛びに解決しないと失敗と決めつけることは、社会の右傾化に加担する結果にすらなります。リベラル左派は、成熟した態度で、匙を投げず、漸進的で多元的な議論を心掛けないと、この状況を覆せないのです。

もっと女性と若者の視点を

個人の尊厳とは突き詰めれば、戦争反対や立憲主義の保護につながります。ただ、大きなテーマだけに雲をつかむような感じになってしまうことも否めません。そのため、経済や雇用・労働、消費・生活などの場面で個人が安心して生活できるかということに課題を落とし込む必要があります。雇用の不安定化や長時間労働、過労死・過労自死等は、こうした側面からも野放しにしておけません。

さらに具体的に言えば、女性や若者の視点が重要になってくると思います。その人たちの視点から雇用・労働問題を伝える努力がこれまで以上に求められます。

「話せる人」を探すことから

人は、関係が遠くなるほど、相手を非人間化する傾向があります。しかし、相手と生身の人間として接すると、見方が変わってくる。運動も同じです。異なるもの同士の交流は、誤解が起きることもあります。ですが、その関係は中・長期的にプラスになります。お互いの団体で「話せる人」を見つけて、共通点を探っていけば良いのだと思います。

運動体同士で違和感を持つのは当然です。それをことさら言い立てるのか、この部分は一緒にやれると考えて、大人の関係を結ぶのか。成熟した態度が求められます。さらにこうした共闘は、互いの組織を同一化するものではありません。過剰の同一化は不要です。個人の尊厳、立憲主義、平和という土俵がここまで壊されようとするときに、他者性を受け入れた上で、まずはその土俵を一緒に守るつもりで行動してほしいと思います。

労働組合には、市民社会との連携を通じて、幅広い人たちから支持を得ることで、自分たちの代表性をひるまずに訴えていく運動を期待しています。

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