特集2024.07

政治のなぜ?を考える
政治にまつわる疑問を考察
女性議員を一人にしない
ハラスメントをなくし支える仲間を増やす

2024/07/12
日本の女性議員の割合は低い水準が続いている。課題の一つは女性議員や候補者に対するハラスメントだ。政治にかかわろうと立ち上がった女性をどう支えればいいのか。支援団体の代表者に聞いた。
濵田 真里 Stand by Women代表

女性議員が受けるハラスメント

女性の政治参画を妨げる課題の一つとして、女性議員などが受けるハラスメントがあります。現状を見てみましょう。

2021年に内閣府が公表した地方議員などを対象にしたアンケート調査(「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」)によると、立候補を検討中または立候補準備中に有権者や支援者、議員等からハラスメントを受けた人の割合は、全体で61.8%、性別ごとでは男性は58.0%、女性は65.5%でした。

この数字は「議員になる前」のものですが、「議員になった後」の数値もあります。「議員になった後」、すなわち、議員活動や選挙活動中に有権者や支援者、議員等からハラスメントを受けた割合は、全体で42.3%、男性は32.5%、女性は57.6%でした。

これを見ると「議員になる前」よりも「議員になった後」の方が、全体のハラスメント被害が減っていることがわかります。しかし、女性のハラスメント被害を見ると、男性と比べてあまり減っていないことがわかります。

このアンケートでは、ハラスメント被害の有無で回答しているので、一度でもハラスメント被害を受けたことがあれば「被害あり」になります。しかし、ヒアリング調査をする中で、女性議員の方が圧倒的に被害数が多い状況が浮かび上がってきました。

女性議員などへのヒアリングでよく聞く話は、「自分は議員として見られていない」ということです。性的対象として見てくるメッセージや、自分の相手をしろ、話を聞け、とケアの役割を一方的に押し付けてくるようなケースも散見されます。プライバシーに土足で踏み込んでくるような行為を、これまでたくさん見聞きしてきました。

よくある具体的な事例では、「市政相談があると言われて会ったら、延々と人生相談をされる」「突然、婚姻届けを渡してくる」「人前で罵倒し続ける」などがありました。理不尽な要求を断ると、「自分の話に対応しないのであれば、そのことをインターネットに書いてやる」というように、有権者の立場を利用して議員をコントロールしようとしてくる「票ハラスメント」も起きています。

選挙ボランティアの
ジェンダーギャップ

選挙ボランティアの支援者からの、議員や候補者に対するハラスメントもあります。選挙活動の多くは、平日の日中帯に行われます。そのためボランティアに参加できる支援者は、高齢者に偏りがちで、性別でみると男性が多いです。さらに選挙活動ではボランティアに対価を支払えないため、候補者がお願いをする立場になりがちです。このような立場の弱さから、特に若い女性の候補者がハラスメントを受けるケースがよくあります。

ボランティア現場でのジェンダーギャップも大きく、年長の支援者から若手ボランティアに対するハラスメントもあります。こうした課題を解消するためにも、選挙事務所における多様性の確保が重要になると思います。選挙にはたくさんの人がかかわります。だからこそ、ハラスメントを防ぐためのグラウンドルールを選挙事務所の中で共有するなど、対策を取る必要があります。例えば、選挙事務所にハラスメント防止のポスターを張っておくだけでも効果があると思います。

選挙ボランティアとはいえ、多くの人が一緒に行動するのは会社と同じです。ハラスメント防止のためのルールと責任を決めておく必要があります。

議会内でのハラスメント

議員が受けるハラスメントには、加害者が同僚議員であることもよくあります。議員が受けるハラスメントの約半分は同僚議員からという結果が多くの調査から出ています。背景には、地方議会が非常に閉ざされた空間であることがあります。地方議会はこれまで、中高年層の男性という同質性の非常に高いメンバーに偏ってきたため、若者や女性などが新しく入ってくると排除の論理が働きがちです。地方議会におけるハラスメントをなくしていくためにも、議会の透明化が重要だと思います。議会における倫理条例やハラスメント防止条例等のある議会は、まだ全体の5%未満です。

一方、議会におけるハラスメント研修は少しずつ増えています。私もこの約半年だけで約800人の議員に対するハラスメント研修を行ってきました。背景には、2021年に改正された候補者男女均等法によって国や地方公共団体にハラスメントなどの予防措置が義務化されたことがあります。その影響でメディアも地方議会でのハラスメント発言などを取り上げるようになりました。この傾向が続けば一歩ずつ改善していくと思います。

議員へのハラスメントを減らすためには、議員や候補者を1人にさせず、第三者が介入することが重要です。

旧態依然の選挙スタイル

女性議員が増えない背景には、現在の選挙スタイルの問題もあります。朝から晩まで多くの有権者と直接触れ合ってアピールする選挙スタイルは、ケア役割を担っている人にとって不利となります。女性議員を増やすためには、有権者と握手した回数よりも、政策で選ぶような選挙スタイルに見直すことも大切です。

しかし、政策で選ぼうとしても誰がどのような政策を訴えているのかがわかりません。そのため私は、昨年の統一地方選挙の後、「子育て政策チェック隊」という活動を始めました。これは都内の複数の区議会の子育て政策に関する質問の議事録を収集して、答弁と一緒にデータベース化する取り組みです。こうすることで、誰がどのように子育て政策にかかわっているのかがわかるようになります。選挙の際の判断基準に使ってほしいと考えています。

この取り組みを始めて驚いたことは、区議会によっては議事録が出るまでに半年かかるということ。区議会の情報がいかにオープンになっていないかがわかりました。こうしたことも含めて議会の透明化を進めることが大切だと思います。

議員・候補者を一人にしない

女性議員を増やすためには、立候補した人を一人で戦わせるのではなく、みんなで支えることが必要だと思います。

そのためには選挙ボランティアのハードルを低くして、議員や候補者を支える人を増やすことも大切です。こうした理由から選挙ボランティアをしてみたい人向けに「選挙ボランティアのしおり」という冊子を作成し、無料でダウンロードできるようにしました。ぜひ活用してほしいと思います。

統一地方選挙後、落選した女性候補者たちにヒアリングをしたところ、選挙は大変なことも多かったけれど、もう一度挑戦したいという人が一定数いました。他の候補者や議員とつながって、一緒に頑張ろうと思える仲間ができたからだと話してくれました。私たちは、2021年に女性議員・候補者をサポートする「Stand by Women」という団体を立ち上げました。女性議員を増やすために、政治にかかわるために立ち上がった女性を一人にせず、それを支え、仲間とつないでいくことをやっていきたいと思います。

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