【第7編】労働組合〜ジェンダーギャップ最劣悪国でどうしますか〜クミジョの「崖」2
クミジョは、辛うじて「崖」まで行かないようがんばっています。しかし、次々に湧き出す不満や疑念のすべてを否定できません。葛藤の中でクミジョを続け、さまざまな戦術をとります。クミジョが武勇伝を口にすることはほとんどありませんが、それぞれの生きざまがあります。
クミダンと互角の実績を出すことに専念するクミジョがいます。昭和時代に苦労を重ねた先輩たちとは違い、和戦両様で有能なクミダンと関係を築きながら前に進みます。
クミダンの生態を見極め、クミダンを変えようともがくクミジョもいます。試練や挫折があろうとも、面倒くさがられても、少しでも労組をよくしたい、と執拗に意見を述べたり行動したりする生真面目さがあります。
これらは、多かれ少なかれクミダン性善説に基づいています。待遇やキャリア、ハシゴ外し、ハラスメントなど何かのきっかけで途中から性悪説に切り替わることもあります。
クミダンに同化するクミジョもいます。クミダンのように振る舞い、長い会議も何のその、飲み食いしてゴルフして、時に目障りなクミジョを攻撃します。ジェンダーニュートラルの時代だ、もう男性も女性もないと公言し、クミジョ・クミダン問題を消そうとします。無意識でそうするのもクミダンと共通します。
そんな自衛行為ができなかったり、やりたくもないクミジョは、本当の心を閉ざしてしまいます。悪いのはクミダンだから、と我慢したり、調子を合わせたりして任期を生き延びるしかない、と割り切ります。
クミジョは常に労組の敵視者(ユニオン・ヘイター)になり得るという点で、本来は労組にとってリスクなのです。でも、そこまで感知しているクミダンはとても少ない。むしろ、この種の話はご法度で、材料を探して反論したり、声高に非難したり、黙り込んでなかったことにしようとします。そこには、クミダン性悪説ばかりではなく、労組という組織の特質が絡んできます。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。