特集2015.10

組合運動を強くする!女性や若者の悩みに向き合う丁寧な対応が仲間を生み出す

2015/10/30
労働組合にとって「仲間づくり」は永遠の重要課題だ。働くことに対する悩みが多様化するなかで、職場の女性や若者たちの声に真摯に対応することが、今後の「仲間づくり」の大きなポイントになる。
今野 衛 連合東京 組織局次長

女性と若者をターゲットに

-仲間づくり、組織化の現状は?

仲間づくり、組織化を進めるためには、働くことに悩みを抱える層に対する適切なアプローチが必要です。連合に寄せられた労働相談の傾向を見てみると、近年、相談件数が急速に増加しているのが、女性と20代、30代の若年層。非正規労働者の比率の高い女性、入社したばかりの若年層が、働き方に疑問を感じ、相談を寄せるケースが増えています。

相談内容は、セクハラ、パワハラ、マタハラなどのハラスメント関連や、労働時間、退職に関する相談が増加しています。一昔前であれば、賃金未払い、解雇、不利益変更などの相談が圧倒的に多い状況でした。賃金や解雇などは、法律の枠組みのなかで対処できるケースが多いのに対し、ハラスメントなどは、法的にグレーな部分も多く、簡単には解決しづらい問題です。心情的な要素が絡むハラスメントなどの複雑な問題に対し、真摯に向き合い対応することが、組合役員に求められる時代なのだと思います。

「女性の組合離れ」「若者の組合離れ」が問題視されていますが、組合を必要としているのは、女性であり、若者です。実際、新規で組合を立ち上げるときに、中心になって活動する層は、女性と若者です。既存組織であっても、この層を引きつけない運動を行っていては、組織化は進みません。女性と若者にそっぽを向かれた組織に未来はないことを、組合役員は気づくべきだと思います。

-組織化に向け、アプローチするときのポイントは?

組織化を進めるためには、労働者が抱える悩みや問題に対して、労働組合が解決の窓口になり、存在感を示すことが重要だと思います。女性、若年層に限らず、すべての層の労働者が何らかの悩みを抱えています。また、正社員に限定せずに、非正規労働者、パート、アルバイトなどの未組織労働者も含め、それぞれが抱える課題に向き合う必要があります。

ハラスメントなどの問題は、労働基準監督署に訴えたとしても、民事不介入が原則のため、解決には至らないことが多い。また、裁判所がハラスメントを認定したとしても、認定後のフォローまで裁判所が行うわけではないため、本質的な解決が図られたとは言えないでしょう。

労働問題に向き合い、解決を図り、最後まで相談者のケアができるのは、労働組合だけです。ハラスメントなどの労働相談に対する解決方法をもっているのは、唯一労働組合といっても過言ではありません。

集団的労使関係を構築するのに、最大の武器になるのが団体交渉です。団体交渉は拒否することが許されないため、経営者を同じステージに立たせることができます。団体交渉を通して、集団的労使関係を築いていくことで、労働組合は労働者にとって、「なくてはならない存在」であることが示せるのだと思います。

交渉の過程を丁寧に示す

労働者が抱えるすべての問題が団体交渉で一気に解決できるわけではありません。優先順位もあり、時間を掛けなければ解決できない問題もあるでしょう。それらの交渉結果を紙一枚で示すのではなく、交渉の過程や今後の進め方を丁寧に説明していく。労働組合として当たり前のことを、当たり前にやっていくことが、労働組合の価値を示す最善の手段なのだと思います。

従来の職場であれば、上長や同僚などの仲間が相談にのり、悩みを解決していく土壌がありました。けれども、成果主義が当たり前の世の中になったこともあり、職場では相談できず、個々で悩みを抱えるケースが増えてきています。このようなケースで、第三者的な立場で相談にのることができるのが、労働組合です。労働組合が相談窓口としての機能を果たす社会が、今後も進んでいくと感じています。

連合「なんでも労働相談ダイヤル」相談内容(2014年全国結果)

-経営者に組織拡大のメリットをどのように訴えればよいのでしょう。

組織化を進めるためには、労働者だけでなく、経営者の理解を得る必要があります。労働組合をつくることは、経営者側にとってもメリットがあり互いがWin-Winの関係になることを説明できなければなりません。経営者側の具体的なメリットは、「組織の拡大強化」「労働条件」「経営参加」の3点があげられます。

「組織の拡大強化」は、組織が健全化され、組織の統制力が向上することで、組織の意思決定や判断が迅速化、的確化することを意味します。

「労働条件」は、賃金体系を整合性・合理性をもって整備できるだけでなく、働きがいや人間力の向上など、目に見えない報酬にも意識が注げることを指します。

「経営参加」は、統制のきいた組合組織と協働することで、従業員の声を経営に活用・反映させ、合理的思考と手法を通じ、生産性向上、拡大発展が図れることを意味します。

従業員を愛せるか

会社側が制度改定や賃金改定を実施するときには、社員の意見や要望を聞き取る必要があります。そのときに、個別に合意を取っていては、手間も時間もかかり、迅速な意思決定が図れず、経営がスムーズに進みません。従業員の代表となる労働組合と交渉することで、全体の合意を得やすくなります。労使合意の効率性から見ても、経営者側にとってメリットが大きいのです。

経営者側を説得するためには、団体交渉を通して、理論的にメリットを説明することに加え、信頼関係、人間関係を構築することが重要になります。人と人との関係を経営者と築き、「労働組合を認めないことは、自分の従業員を愛せないこと」につながることを、伝え続ける必要があるのだと思います。

-組合役員に向けて、メッセージをお願いします。

組合役員は、複数の業務を抱え、多忙な場合が多いでしょう。しかし組合員の前では、やせ我慢をしてでも、暇なふりをしてもらえればと思います。組合役員が忙しい状況だと、組合員はどうしても相談するのを躊躇してしまいます。「いつでも時間をつくるよ」というポーズをとることで、女性や若者なども相談しやすい環境をつくってもらいたいです。

また、組合役員は、常に組合員から見られているということを意識してもらえればと思います。相談した内容について真摯に向き合ってくれているのか。団体交渉を通して、問題の解決を図っているのか。そういった一つひとつの行動に対して、組合員は目を向け続けています。組合役員は、自分の行動に責任をもつことで、女性や若者をはじめとした組合員との信頼関係を築いてもらえればと思います。

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