特集2015.10

組合運動を強くする!労組が政治にかかわるのは当たり前 地域活動が運動の「本業」になる

2015/10/30
労働組合が政治活動にかかわるのは当然。むしろ、かかわらないのは責任放棄である。政治に対するコンセプトを変え、地域のあり方に労働組合が積極的に関与することを、運動の本丸に据えよう。
篠田 徹 早稲田大学社会科学総合学術院教授

ナンセンスな問い

政治とは、みんなで考えること、やらなければいけないことをみんなで実行することです。

別の視点で言うと、政治とかかわり合いのない人など現実的に存在しません。家族と約束をするときも、友人や恋人との人間関係にも政治はあります。ロビンソン・クルーソーのようにたった一人で生きることなどできません。私たちは、社会の成員として、政治と無関係ではいられないのです。

自分の生き方を選ぶのにも、政治は切り離せないものです。家族や地域、自分のキャリアプラン、社会貢献活動─そのどれもが、みんなで考える問題であり、政治です。ですから政治を考えるとは、自分の人生をどう生きるのかを考えること。あなたの人生を決めるのに政治が大前提としてあるのです。

その意味で、労働組合はなぜ政治活動をするのか、という疑問自体がナンセンスです。誰もが政治にかかわらない生き方をできない以上、労働組合が政治にかかわるのは、当たり前のことです。むしろ、無関心でいることは労働組合の責任放棄だとすら言えます。

フリーライドした労働者

そもそも政治に無関心でいられると思える環境こそ幻想です。そう思えたのは、高度経済成長期において、企業の決定だけで生活できるような環境づくりを政府が企業に担わせてきたからです。働く人たちは、その環境下で政治をしないで済むようにしてもらっていただけ。やるべきことをせず、それを許した戦後政治にフリーライドしてきただけなのです。

しかし、今の企業にそれを担える体力はありません。そればかりか、企業の利益は政治に大きく左右されています。為替の変動や利上げの決定時期などが企業利益に多大な影響を及ぼしていることは見ればわかると思います。つまり「新自由主義」と言いながらも、その内実は極めて政治的なものに支えられています。そういう意味においても、労働組合による政治活動は、より一層重要性を増しています。

地域活動こそ最重要

これからの政治活動で、最も大切なのは、地域・ローカルです。それは、地域を狭い範囲で捉えるのではなく、グローバルとどうつながるかを考えるローカルです。

例えば、グローバル企業が個別地域にある事業所を移転させるかどうかは、その地域のあり方によって決まります。その地域が高付加価値のパフォーマンスを提供できる人材を輩出できるかどうかは、地域のあり方に規定されるからです。

例を挙げると介護・保育サービスは、自治体により大きな違いが生じるようになりました。ワーク・ライフ・バランスが充実していない地域には、いい人材が集まりません。このようにローカルのあり方がヒューマン・リソースを規定してくるのです。

とりわけ中小企業は、地域と一蓮托生の存在です。地域のことを考えている経営者は、地域を顧みず、自社の利益ばかりを考える経営者を仲間だと思っていません。

どういうことかというと、地域を考える経営者は、その地域の付加価値をどう高め、持続可能性をどう高めるのかを戦略として描いています。その観点では、最低賃金を支払えないような企業は地域の付加価値を下げる存在なのです。だから地域を考える経営者からすれば、そういう企業は出て行ってもらった方がいい。その上で、「この地域はこれだけの付加価値がある地域ですよ」と言える環境をどうつくるのかを考えているのです。

労組の「本業」とは何か

こうした中で労働組合は、これまで「余業」としてきた地域活動こそ、「本業」だと理解する必要があります。質の高い地域をつくり、企業経営のあり方が地域に規定される環境をつくることこそ、優先事項なのです。

労働組合の基本的な活動である労働条件の維持・向上について考えてみましょう。その地域に暮らす人たちにとって、そこで必要となる生活資金の総額はおおよそ把握できます。であれば、自治体ごとに異なる介護や育児にかかる負担を地域の高付加価値化によって減らしていく。地域ごとで国よりも高い最低賃金を設定してもいい。そう考えると、これらの活動が立派な労働条件活動であることがわかると思います。

さらに言えば、地域の決まりを守れない企業の営業権を奪ってしまうようなルールを作ってもいい。これはアメリカで実際に検討されています。このように地域のあり方を規定することは、労働組合の基本的な活動である労働条件の維持・向上の本丸になってくるのです。

選挙は「後工程」でしかない

そこで労働組合に期待するのは、地域のアクターともっと関係を持ち、ネットワークを広げること。都道府県にある支部が、地域の加盟組合を地区連合や地域社会のネットワークに参加させていくことが求められます。地域のことを決める場に、加盟組合を積極的に入れていくということです。

地域活動はボランティアだけではありません。行政や福祉やNPOなどのセクターとどうつながるか。ソーシャル・ガバナンスの枠組みの中に労働組合がどう関与するかが求められます。

そこで話し合われるのは、地域のあり方をどうするのか、ということです。アイデアを出し、付加価値をつくっていくための話し合いです。ここに参加することは、政治の「前工程」であり、選挙とはその話し合いをまとめる「後工程」に過ぎません。

この「前工程」に参加することが、労働組合の最優先事項なのです。これからの時代に労働組合が「前工程」に参加しないことは、「自殺行為」とすら言えるでしょう。選挙活動とは、この話し合いをまとめ、解決できる人材=議員を育てる活動なのです。

ローカルがグローバルを変える

このような観点からすると、中小企業や地域の組合支部・分会活動こそが、これからの組合活動の中心になります。中小企業や支部が「弱い」からそう考えるのではありません。むしろ逆で、地域活動こそ組合活動の主になるのです。

グローバル時代において政治はニューヨークやロンドンなど自分から遠いところで決まるように思われがちですが、実はギリシャのように、地域の選択がグローバル社会を左右する時代でもあります。だからこそ、自分がどう生きたいかを決めること。地域がそのあり方を選択することがもっと重要になってくるのです。「Think Globally, Act Locally」と言われるゆえんです。

このように、一つは、政治の見方に対するコンセプトを転換させること。そして、もう一つは地域のあり方にかかわること。これこそが労働組合の「本業」になるということを理解してほしいと思います。

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