特集2018.10

暮らしから考える社会のこと 「社会への投資」が暮らしを変える連合組合員の暮らしから見える
将来不安と節約志向、自己責任論

2018/10/16
連合組合員の暮らしはどのように変化しているのだろうか。その変化から読み取れることとは何だろうか。労働組合の調査活動を数多く分析している労働調査協議会に聞いた。

共働きの増加

連合組合員の家計はどう変化しているのだろう。特徴的な変化の一つが、世帯構成の変化だ。労働調査協議会の湯浅論・主任調査研究員は「ここ10年間ほどで共働き世帯が増えている」と指摘する。加えて、夫婦がともに正社員の「正社員カップル」が増加する傾向も見られる、と同会の中川敬士・調査研究員は解説する。

「個人の賃金は増えなくても、共働きが増えると世帯の収入は変化します。家計の変化を捉える場合、世帯構成の変化を見ることは大切です」(中川さん)

実際、連合が実施した『2016年連合生活アンケート調査』(2016年6月調査)によると、共働き世帯は、2006年の37.9%から2016年には44.2%にまで増えている(表1)。「本人の収入と配偶者の正規雇用収入」と回答した人の割合は、18.8%(06年)から24.3%に増加している。湯浅さんは「教育や住宅ローンなど将来への不安が共働きのモチベーションになっているのでは」と推測する。

表1 連合組合員の世帯の主な収入源
連合「2016年連合生活アンケート調査」

高年齢層ほどマインド厳しく

家計の主要な構成要素である組合員本人の賃金はどう変化しているだろう。連合の『労働条件調査』によると年齢ポイントごとに異なる変化が生じている。湯浅さんは「25歳のポイントでは上昇傾向ははっきりしていますが、35歳は横ばいで、45歳は横ばい、もしくは低下しています。支出が多く家計が厳しい人たちの賃金が上がっていないので、この層のマインドは若年層に比べると厳しい」と指摘する。

「家計収支感」について聞いた産別の調査を見ると「赤字世帯」(貯金の取り崩しなどでやりくりした)の比率は、高年層ほど高くなっている。このうち家計収支で大きな割合を占めるのが「住宅ローン」と「教育費」だ。「全体としてのマインドは回復傾向ですが、中高年層は上向きになっていません」と湯浅さんは指摘する。

将来不安と節約志向

家計が厳しいと人々の間で節約志向が強くなる。湯浅さんは「節約志向は20年くらい前から広がってきました。それ以前は、毎月の赤字を気にせず、一時金で帳尻を合わせる人がそれなりにいましたが、産業によっては一時金が出なかったり、人員整理など厳しい状況を経験したりしてきました。そのため、家計はどうしても防衛的にならざるを得ない。一時金が出ない産業では毎月の収入でどうしても帳尻を合わせなければならず、節約志向が強まった結果が見られます」と解説する。節約の対象になりやすいのは、日常経費だ。住宅ローンや教育費の支出は仕方ないと割り切り、食費や日常雑貨などの切り詰められるものは切り詰める。加えて、湯浅さんは保険の掛け金が減少したと説明する。

連合の『2016年連合生活アンケート調査』によると、世帯総収入が「増えた」と答えた世帯は2012年(40.4%)から2016年(51.8%)にかけて11ポイントほど増加した。ただ、その一方で家計の消費支出を見ると、支出を増やしたと答えた世帯は2012年から2016年で7ポイントの上昇にとどまっている。労働調査協議会の後藤嘉代・主任調査研究員は「世帯収入が増えたと回答した割合の増加に比べて、支出を増やしている割合の増加幅は小さいことから、節約志向が読み取れる」と指摘する。

一方、同調査によると「貯蓄が増えた」とする世帯も増えている。この調査によると、貯蓄額が「増えた」とする世帯は2012年の22.8%から2016年の28.8%に増えた。後藤さんは「結果を見ると、若い世代で貯蓄が増えたとする比率が増えています。若い世代は賃金が伸びていますが、先行きへの不安が強く、消費行動にはあまりつながっていないのかもしれません」と分析する。

自己責任論の広がり

職場生活に対する不安を聞いた調査によると「倒産などで雇用が守られない」と「今の働き方が続くと体力がもたない」について不安を感じる人がいずれも半数に及んでいる。中川さんは「グローバル競争にさらされ、事業再編なども珍しくない中で、将来に対して不安を感じている人は少なくない」と指摘する。

将来に対する見通しに不安がある中で、自分の生活を守るために連合の組合員はどのような考え方を持っているのだろうか。連合の『2016年連合生活アンケート調査』は、税・社会保障について、給付と負担の関係を聞いている(図2)。これによると、「税・社会保険料の負担大でも社会保障の水準が高い方がよい」と答えた人は45.6%、「税・社会保険料の負担が増えるのであれば、社会保障の水準は低くてもよい」と答えた人は10.9%で、負担が増えても社会保障の充実を優先した人の方が多かった。

ただ、年齢別で見ると若年層になるほど、「負担が増えても社会保障を充実」の割合が少なくなる。50代男性では51.8%だが、20代男性では38.1%まで少なくなる。こうした傾向について湯浅さんは「以前なら年齢を重ねると社会保障の充実を優先する回答が増える傾向にありましたが、今は大きな変化が見られません。若い時に自己責任論にさらされている人たちは年齢を重ねても考え方が変わらないように感じています」と話す。

労働調査協議会では若手組合役員に対するアンケート調査とヒアリング調査を行っている。こうした調査を通じて、湯浅さんは若い世代での自己責任論の広がりを感じている。「自分が厳しい環境を乗り越えてきたために、助け合いや連帯の意識が薄くなっているのかもしれません」(湯浅さん)。しかし、調査では、労働組合の活動を通じて考え方が変わったと話す若手組合役員もいる。労働組合がどのような活動の場を若手組合員に提供できるかで考え方も変わってくると言える。

図2 給付と負担の関係
連合「2016年連合生活アンケート調査報告書」

社会保障と社会の連帯

社会保障の充実は家計に目に見える形で影響を及ぼしている。湯浅さんは、「あまり目立って言及されていませんが、民主党政権時の高校授業料無償化や子ども手当は、子どものいる世帯の家計を好転させました。家計に確実に効果を及ぼす政策はあります」と指摘する。

さらに、社会保障の充実に関して、こう強調する。

「将来に対する不安が強いのは、連合組合員も世間一般と同じです。将来不安は消費やさまざまな行動に反映します。将来不安があると、人々は守りに入る場面が多くなって、非正規雇用労働者の雇用安定や処遇改善をするにしても、まずは自分の環境を確保してからじゃないと行動できない。今の生活はそれほど苦しくなくても、将来を考えると守りに入ってしまいます。社会保障の充実はそうした不安の解消のために重要な役割を果たします」

社会の人々が連帯するためにも、将来不安を解消するための社会保障の充実が大切だと言えそうだ。

(参考:『労働調査』2018年2月号)

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