いま知っておきたい「憲法」国民主権、基本的人権、平和主義の理念は今後もしっかり守っていく
─民進党の憲法に対するスタンスを教えてください。
「国民とともに未来志向の憲法を構想する」。これが民進党の立ち位置です。綱領にも盛り込みました。この意味するところは、未来志向で憲法を捉え、懐古主義的な考え方にはくみしないということ。もう一方で、憲法の条文を一言一句変えてはいけないという立場にも立たないということです。
憲法は、国民の側から国家権力を縛るものです。その意味では、将来、国民から憲法を変えようという声が高まることもあるでしょう。その場合は、国会がその声を受け止めて発議します。ただ、現状でそうした声が国民の側から高まっているかといえば、そうではありません。憲法改正は、さまざまな課題について国民としっかり対話を重ねていく中で、将来的にテーマになりうる可能性があるものと受け止めています。
─現行憲法に対する評価は?
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という、日本国憲法の基本理念は、戦後日本の安定と発展に大きく貢献してきたと高く評価しています。その理念は、今後もしっかり守っていくべきです。
─安倍首相は改憲への意欲を高めています。
安倍首相が唱える憲法改正には、断固闘うという立場です。それには大きな理由が三つあります。
一つ目は、立憲主義を理解していない立場で憲法改正を唱えていること。国家権力を縛るという立憲主義の本質に反して、「権力がやりたいことをやりやすくする」ための憲法改正は許されません。
二つ目は、自民党の改憲草案が、戦後日本の歩みを否定するような懐古主義的なものだということ。
三つ目は、憲法9条に対する立ち位置です。民進党は9条に一切、手を触れてはいけないという立場ではありません。しかし、安保法制のようなこれまでの憲法解釈を逸脱した法律をつくっておいて、その延長線上で、平和主義の縛りをさらに弱めるようなやり方は、とうてい認められません。
そもそも自民党改憲草案は、立憲主義や基本的人権の観点からして、大日本帝国憲法よりもさらに後退しています。このようなものを掲げて憲法改正を唱えることに対しては、厳しく闘っていかなければならないと考えています。
─一方で、現行の憲法を生かす観点で取り組みたいことはありますか。
現在の憲法には幸福追求権があり、国民には健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(生存権)が保障されています。この規定は、経済成長で多くの人が豊かになっていくプロセスでは、存在が薄くなりがちでした。しかしバブル崩壊後の20年間、とりわけこの数年間で、必要最低限度の健康で文化的な暮らしすら保障されない人たちが急激に増えています。そのことを鑑みれば憲法の生存権や幸福追求権を生かす状況は強まっていると思っています。
さらには表現の自由を取り巻く環境も、安倍政権下の3年間で急激に悪化しています。この権利を大切にしなければなりません。
─民進党と自民党の基本的人権に対するスタンスの違いはどのような点に見いだせるでしょうか。
「自由」の意味に大きな違いがあるのではないでしょうか。私たちは綱領で、「自由・共生・未来への責任」を掲げています。ここでいう自由とは、一人ひとりが違っていることを前提に、お互いにそれを認め合い、特に、権力によって、一人ひとりの違いに介入されないという意味で用いています。
一方で、自民党のいう自由とは、国民一人ひとりの違いを無視して、権力がやりたいことをやれるようにする自由ではないでしょうか。国民の自由か、権力の自由か。同じ自由という言葉を使いながら本質的な違いがあると考えています。
─安保法制に対する民進党のスタンスはどうでしょうか。
民主党の時とまったく変わらず、安保法制は廃止すべきという立場です。廃止に向けて国会での勢力拡大をめざします。
もちろん、ただ廃止するだけではなく、日本の領土・領海を守るために必要な領域警備法や、自衛官の安全を高めるためのPKO法の改正など、従来の憲法解釈の範囲内にとどまる対案をすでに提示しています。憲法違反であり、日本の抑止力を高めることにもつながらない安保法制は、すみやかに廃止すべきです。これは徹底的にやっていきます。
─暮らしの側面で言うと安倍政権が民進党の政策をまねしたようなテーマを掲げるようになりました。
私たちが言ってきたことが正しかったということを、政権側が認めざるをえない状況に追い込んだのだと思います。私たちはこれまで、安倍政権には、子育て支援や老後の医療・介護、安定的な働き方などに関する視点が決定的に欠けていると指摘してきました。そういう意味では前進したと捉えればいいと思っています。
ですが問題は、そうした政策を本当に実現できるかということです。私は、安倍政権では財源を生み出せずに結果的に失敗すると考えています。なぜなら彼らは、TPPに絡めて農業の基盤整備につながらない農業予算をばらまいたりとか、東日本大震災の復興だけで飽和状態にある公共事業をさらにばらまいたりとか、高額所得者の方が恩恵を受ける軽減税率に膨大な予算を計上したりとか、結局は自分たちの支持基盤を潤すために財源をばらまいているからです。そのような従来型のばらまきを、彼らは変えることができません。
私たちは、現場の実態について、安倍政権より圧倒的に知っているという自負があります。この点で民進党は、自民党との違いをきっちり示していけると思っています。そして、子育て支援と老後の医療・介護、安定した雇用に、しっかりと財源を振り向けていきます。1回限り3万円の給付金をばらまくような選挙目当ての対策ではなく、あるいは、高額所得者に恩恵をもたらす軽減税率ではなく、私たちは、それらの財源を暮らしの底上げにしっかりとつなげていきます。
─「保育園落ちた」を取り上げたときのヤジはひどかったですね。
特に子育てに関する「感度」のズレは恐ろしいと思います。ヤジを飛ばしたような議員は、「お父さんは仕事、お母さんは家事・育児」という40~50年前の社会モデルがいまだに頭に残っていて、そこからの切り替えができていない。男女共同参画の認識が広まり、他方では共稼ぎじゃないと暮らしていけないという世の中の実態が、見えていないのでしょう。そうした感覚のズレは、有権者の皆さんも少しずつ気づいてきているのではないでしょうか。
─今後、このような対抗軸を民進党はどうアピールしていきますか。
政治は、大きな理念を有権者の皆さんに示すことも大切です。ただ同時に、政党の立ち位置の違いを皆さんに見てもらうためには、それぞれの問題に対する具体論を、きちんと提示することもたいへん重要だと思います。実際、待機児童問題をつうじて、各政党がどこを重視するのかという違いが、国民の皆さんに伝わるきっかけになったと考えています。
もう一方で、わかりやすい言葉によるアピールにも力を入れたいと考えています。そのポイントは、私たちのめざす「人への投資」であり、安倍政権の言うトリクルダウンではなく、ボトムアップであるということです。新党へのバージョンアップは、私たちこそが社会を下支えし、底上げしていく政党であることを、明確に打ち出すチャンスだと考えています。
民進党綱領から (私たちの目指すもの)
一.自由と民主主義に立脚した立憲主義を守る
私たちは、日本国憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を堅持し、自由と民主主義に立脚した立憲主義を断固として守る。象徴天皇制のもと、新しい人権、統治機構改革など時代の変化に対応した未来志向の憲法を国民とともに構想する。