いま知っておきたい「憲法」憲法の原則をゆがめる改憲勢力による憲法改正は許されない
三役会議での確認
まず、憲法とは「権力を拘束するための法律」であることを押さえる必要がある。間違えてはいけないのは、法律と同じように国民が守らなければならない規範ではないということだ。憲法を守る義務があるのは権力者であり、どんな権力も憲法に基づき国を統治しなければならない。
2006年9月に発足した第一次安倍政権の時にも、権力の側からの憲法改正に警鐘を鳴らした論調が多くあがっていた。第二次政権では、憲法解釈をねじ曲げて集団的自衛権の行使を可能とし、虎視眈々と憲法改正を狙っていることはすでに明らかになっている。私たちは、この危機を認識しなければならない。
2006年7月に開催された情報労連第45回定期大会の中央執行委員長あいさつの中で、「憲法改正」に関して、三役会議における3点の意見の一致について紹介している。
(1)近代立憲主義の立場に立つべき。立憲主義の本質は第99条のとおり、権力は無制限ではないということである。たとえ、国民の多数意見によって正当化される政治権力であっても、法的・制度的に制限されなければならない。
(2)現憲法に貫かれている国民主権、平和主義、基本的人権の三原則は尊重されなければならないし、不変の原則である。
(3)過去の戦争責任を明確にし、平和国家日本としてアジアおよび世界に平和をアピールする責任がある。
憲法の原則を守る
あれから10年が経過しようとしているが、安全保障をめぐる情勢は大きく変化している。特に、中国の軍事力強化、北朝鮮の核保有、ISの台頭等の脅威と、グローバル社会における日本の立ち位置、米国一強基盤の揺らぎが、憲法改正を後押しする声にもつながっているが、上記の3点については変更する必要性はないものと考える。なぜなら、あくまでも軍事とその強化にのみ興味を注ぐ安倍政権のもとでは偏った憲法改正となることはもとより、自民党をはじめとする改憲論者には「現憲法には国民に課す義務が少ないので義務規定を盛り込むべきだ」との主張が存在しており、憲法を守る義務があるのは権力者であるとの原則が歪められる可能性があるからである。
また、9条に関しては、専守防衛を堅持することを基本に据えるべきで、集団的自衛権の行使は負の連鎖を生むとの考えを持ち合わすことが国際社会にとっても重要である。
3分の2を阻止する
アメリカではトランプ旋風が吹き荒れており、日本に対する安全保障の考え方もこれまでのものとは異なる。彼が大統領にならないことを望むが、時の権力者の意向で日米安保の考えも転換する恐れがあるということである。時の首相が権力者であり続けることはないわけであり、権力を縛るべき憲法が権力者に対して緩くなった時、次にこれを引き継いだ者が、憲法のもとでどのように権力を使うのかを念頭におかなければならない。
情報労連は、憲法改正をタブー視するものではないが、先に述べた3点を基本に据えるとともに、次なる選挙では国会議員3分の2の改憲勢力をつくらぬよう取り組みを強化する。