特集2016.10

産業別労組の次なる可能性個人加盟型の産業別労働組合の事例からエステ・ユニオンの労働協約に注目

2016/10/21

エステ業界最大手のエステティックTBCと労働組合「エステ・ユニオン」が、8月に「ホワイト求人労働協約」(就活安心労働協約)を締結した。

エステ・ユニオンは、2014年にエステ業界の働き方改善を目的に発足した個人加盟型の産業別労働組合だ。エステ・ユニオンは、日本に多い企業別労働組合とは異なり、エステ・ユニオンがそれぞれの企業と交渉し、労働協約を締結する。

締結された協約のポイントは3点。(1)職場環境の情報公開(2)求人条件表示の共通化・明確化(3)求人条件以下での労働契約締結の禁止─だ。

組合のねらいは業界全体の健全化にある。エステ・ユニオンの佐藤学さんはこう話す。「ブラック企業が、自社の労働環境をそのまま求人票などに掲載したら人が集まりません。それを偽装するためにブラック企業は誇大広告を出します。これは労働市場にとって不健全で、企業も公正な競争ができません」

「経営側も人手不足に悩んでいました。その上で、どうしたら若い女性が働きやすい業界になるか組合と議論を重ねてきました。就労の入り口で協約を結ぶことで安心して働ける業界だとアピールできます。企業と働く側がウィンウィンになれる提案を意識的にやってきました」

エステ・ユニオンは、エステ業界の大手他社にも同様に協約を提案している。協約締結が実現すれば、業界の労働市場が健全化し、企業も優秀な人材を確保しやすくなる。こうした要求を掲げやすいのも産業別労働組合のメリットだと言えそうだ。

佐藤さんは、「一企業内にルールを構築しながら、さらに業界全体にも同様のルールを広める活動をめざしたい」と話す。そのためには、「社会的な共感を得られる要求」を意識している。世論の後押しが交渉力を担保するからだ。これまでにも育休制度を充実させる「パパ・ママ安心労働協約」など賃金以外の要求項目を優先してきた。

佐藤さんは、「賃金のベースアップはもちろんですが、まずは『フツーに働きたい』という声が大きいと感じる。過重労働・使い捨てに対する規制の方が労働者の一致点が見いだしやすいのでは」と指摘する。労働基準の最低規制が産業別労働組合の大切な役割になるということだ。また、「労働組合は企業にとって敵対するものではなく、現場で働く人の声をくみ上げて、それを反映して健全な労使関係をつくった方が企業にとってメリットになる。そういう流れをつくっていきたい」とも訴える。産業別労働組合の新たな可能性として注目すべき事例と言えそうだ。

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