産業別労組の次なる可能性「自立した組合」に向けた活動を産別労組が支援
中小労組にとっての産別とは?
産業別労働組合(産別労組)の基本的な目的は、同じ産業全体に共通する労働条件向上や産業政策の課題に取り組むことである。
しかし、例えば過去の春闘においては大手組合が賃上げを獲得したのち、その結果が中小組合の交渉にもそれなりに波及する効果があったが、今やそのようなトリクルダウンは見ることができない。
今でも大手企業の動向が同業種に少なからぬ影響を与えるのは間違いないが、中小企業は日本の企業の99.7%(約381万社)、従業員数の70%(約3361万人)と圧倒的な多数派であり、この中小労働者の労働条件や政策的課題(特に公正取引問題)をきちんと受け取り反映させなければ、産業で働く人を代表した真の産別組織ではないと言えよう。
自立した組合に向けた支援
しかしながら、その中小労働組合の現状は厳しい。組合活動への気概は高くとも、それを支える資源(ヒト・モノ・カネ)は大手組合と比べることはできない。
例えば、情報労連傘下の県協加盟組合では、専従役員を配置している組合は現在ゼロである。かろうじていくつかの歴史のある組合で組休が認められている程度であり、ほとんどの役員は就業後や休日を使って組合活動・事務作業を行っているのが実情である。組合事務所のある組合も少なく、職場への連絡は不可など連絡手段も限られる。また、労使関係も没交渉や対立関係にあるところも少なくない。
こうしたハンディを当該労組の努力不足のみに帰することはできない。むしろ、その現状を理解し、中小労組が少しでも参加できるように運動のスタイルを合わせることが産別組織には求められている。ただしその現状を固定化するのではなく、一歩でも前に進め基本的な組合活動では支援が必要のない、「自立した組合」をめざして指導することが産別としての重要な役割と考える。
2013年からこのためのツールとして活用しているのが、「組織診断表」である。診断結果からは、従業員の過半数を確保できていない組合や大会や会計報告が未実施等、組合として最低限必要な要件を欠いている組織もあることがわかる。組合活動が二の次になりがちな県協加盟組合に、目の前の明確な「目標」を設定し、その実施に向けた各県協の指導が産別労組としての役割のカギになる。
連帯のコアをつくり出す
そして、もう一つの大きな産別労組の役割が組織拡大である。組合組織率は大手企業が45%程度に対し、中小企業(100人以上1000人未満)は12.2%しかない。99人以下の企業に限っては1%未満である。これもワークルールすらない職場で一から人づくりをし、妨害をはねのけ、理解・協力を得て、辛抱強く進めることが常であり、こうした時間と体力の必要な取り組みは産別労組しかできない。
そもそも力の弱い者の連帯組織が労働組合である。大手・中小問わず欠けている点を補い、連帯のコアとなる運動をつくり出していくのが産別労組の任務と意識し、各加盟組合の活動を支えていくこととしたい。