特集2018.01-02

「草の根」社会運動と労働組合労働相談から労働組合結成へ
働く人が「自信」を付ける労働運動

2018/01/15
労働組合を結成し、仲間を増やしていくことが「草の根」の労働運動だ。労働相談の現場で働く人を支援する今野衛・連合ユニオン東京書記長に労働組合づくりの現状を聞いた。
今野 衛 連合ユニオン東京書記長

組合じゃないと解決できない

「団体交渉じゃないと解決が難しい相談が増えている」と連合ユニオン東京の今野衛書記長は話す。連合ユニオン東京は連合東京直加盟の個人加盟ユニオン。連合東京には年間約1500件の労働相談が寄せられている。

近年、その労働相談の内容に変化が起きている。

「かつては賃金未払い、解雇、就業規則の不利益変更の労働相談がほとんど。しかし最近はパワハラやセクハラといったハラスメント、長時間労働、退職再雇用後の労働条件引き下げの相談が増えている」と今野さんは言う。

「こうした問題は、個人で解決しようとしても難しい。労働組合をつくって会社と交渉するしかない事例ばかり」と今野さんは強調する。ハラスメントも長時間労働の問題も、労働組合を結成して経営者と交渉しないと職場環境を変えられない。人事評価や査定の問題も同じだ。

「こうした問題で相談に訪れた人には、労働組合をつくって集団的労使関係の中で解決しようとアドバイスする」と今野さんは話す。昨年、結成された労働組合の委員長は、「自分だけの問題ではなく、職場の他の人たちも同じ問題を抱えているから」と、労働組合の結成を決心した。

最初は、個人の問題を解決するために相談に訪れた人が、数日後に仲間を連れて再来する場合もある。今野さんの感覚では、若者や女性が組合結成の決意を固めることが多い。「厳しい環境に耐えても明るい未来はないと感じているのでは。だから労働組合をつくって自分たちで環境を変えようとしている」と語る。

自分たちにもできる

草の根レベルで労働組合運動を広げるために何が必要だろうか。

「小さい会社でも労働組合をつくって、自主交渉や自主解決できる場をできる限り生み出していく。それが草の根の労働運動になる」と今野さんは話す。どんな職場でも労使交渉が当たり前になれば、それが市民感覚になり、労働組合が社会に根付いていく。そのために労働組合を新規結成する取り組みが欠かせない。

オルガナイザーとして組合づくりをサポートする今野さんは、相談に訪れた人に労使交渉の知識や戦略をアドバイスして、働く人たちを手助けしている。団体交渉の際、心掛けているのは、組合を結成した本人たちに話してもらうことだ。

「一番大切なのは、団体交渉を初めて申し入れるときに何をテーマに交渉するか。申し入れ前に5~6回は組合のメンバーと打ち合わせをする。交渉では、なるべく本人たちに話してもらう」と今野さんは話す。

「2~3回、団体交渉を重ねるうちに、自分たちにもできるという自信が付いていく。そこが肝だと思う」

こうした営みが草の根の労働運動と言えるだろう。今野さんのような専門家のサポートを受けながら、働く人たちが「やればできる」という自信を身に付けていけば社会は変わる。

実戦経験が大切

組合結成をサポートする側に求められることは何か。今野さんは「オルガナイザーに必要なのは、団体交渉を繰り返し実践して、交渉能力を高めることに尽きる」と強調する。

「相談を受けたときに、相談者に『大丈夫、任せて』と言い切れるか。そういう自信は実践に裏打ちされたスキルがないと身に付かない」と話す。今野さんは、組合結成に向けて、繰り返し打ち合わせをして、団体交渉のイメージづくりをサポートしている。専門職員の経験が発揮される場面だ。

今野さんは「労働組合に大切なのは『力』と『政策』。前者は組合づくりのことであり、労働運動の原点。そこに立ち戻っていくべき」と力を込める。労働組合の結成により、働く人たちが草の根で力を付けていくことで暮らしやすい社会が生まれていく。

特集 2018.01-02「草の根」社会運動と労働組合
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