特集2020.07

新型コロナウイルスとICTリモート覆面座談会
テレワークで労働時間や仕事の仕方はどう変わる?

2020/07/10
情報労連の加盟組合に対置する3社で、テレワークで働く組合員4人に働き方の実態などについて語り合ってもらった。テレワークで労働時間や評価制度はどう変わる?

テレワークのメリットは?

──業務の概要とテレワーク歴を教えてください。

A 通信ネットワークの運用・保守を担当しています。テレワークは、東京オリンピック・パラリンピックの予行演習で数回経験しましたが、本格的なテレワークは今回が初めてです。回線工事のため現場に行かなければならない場合もあり、今はテレワーク8割、出勤2割です。

B フルクラウドの業務システムの基盤を開発しています。テレワークは、東京オリンピック・パラリンピックの影響で、昨年から週1回は実施してきました。今回はそれにドライブがかかっただけで特に不都合はありませんでした。約50人の開発チームは、委託先のメンバーも含め3月末から全員テレワークです。

C 業務は営業推進です。テレワークの環境は以前から整っていて、部署によってはすでに導入済みでしたが、私の部署はコロナの影響で初めて導入しました。4月からはほぼ在宅です。請求書が会社に届くという理由で1〜2回出社しただけです。

D 法人営業を担当しています。テレワークは昨年以降、数回経験しましたが、本格的なテレワークが始まったのは3月末からです。私は健康上の理由で、他の人より早めに在宅勤務になりました。ただ、それが突然始まったので会社のパソコンがしばらくない状態でした。後日、会社にパソコンを取りに行きました。

──テレワークのメリットは?

A 通勤時間が2時間弱かかっていたので、それが減ったのは大きいです。出勤時は帰りが遅く、夕食が遅いことも多かったのですが、早くなりました。生活リズムが規則正しくなったのがメリットです。

B 同じく通勤時間が減ったことがメリットです。「中抜け」の時間や、家族との時間も増えました。それまでは、休みの日しか子どもと触れ合えませんでしたが、テレワークになって、子どものサッカーの練習に付き合えるようになりました。

C 通勤時間が減ったメリットは大きいですね。満員電車のストレスがないのは助かります。業務的には必要のないものがはっきりしました。

D 私も通勤時間が1時間30分くらい掛かるので、そこに時間を費やさなくても済むのは大きいですね。在宅で、仕事により集中できます。

テレワーク環境の整備

──テレワークが突然始まったことで不便はありましたか?

A テレワークが長く続きそうだったのでパソコンを性能の良いものに自費で買い替えました。私の場合、現地での作業がどうしてもあるので、テレワークで準備を整えて現場に行くというやり方で対応しています。なんとかこなしている感じです。

B 私の場合、会社がテレワークの基盤を整えていたので特にありませんでした。

C 早ければゴールデン・ウイーク明けには普段どおりになるかと思っていたので自宅のテーブルと椅子で作業を続けていたら腰が痛くなりました。長く続くなら環境を整えようかと考え始めています。

業務はテレワークで問題なく対応できますが、会社に届く書類がどうしても残っていたり、リモートだと意図が伝わりづらかったりする課題はあると感じました。

D テレワークで困ったのは、社内コミュニケーションです。自分の言ったことがきちんと伝わっているか、相手の行動が見えないので信頼が大切だと思いました。お客さまとのコミュニケーションは問題なくできました。テレワークでも営業はできるという感触は得られました。

A 「はんこ問題」はありました。会社の業務ではなく、組合業務ですが……。

C 確かに「はんこ問題」はありました。部署によっては曜日を決めて押印対応していました。

労働時間はどう変化?

──テレワークで労働時間は変化しましたか?

A パソコンのログで勤怠時間を管理しています。時間外労働をする場合はそのつど申告するようになっていますし、時間外労働が長くなると上司からチェックが入ります。

B 総合的には変わらないです。ただ、際限がなくなるというのはその通りで、深夜2時までやることもあれば、早く終わるときもあります。管理の難しさは感じます。チームメンバーがどれくらい働いているのかも見えづらくなるのも課題です。

裁量労働制で働いていますが、労働時間は端末のオン・オフでチェックされます。オンにしたまま子どもと一緒に寝てしまったときがありました。残業が多いと思われたくないからずっと開きっぱなしにしているのではと疑われて困りました。

C 労働時間はテレワークでもあまり変わらないですね。従来フレックスタイム制だったので。

勤怠管理はこれまで入退館記録も使われてきましたがそれがなくなったので、チャットで勤怠報告するようになりました。報告を忘れてしまうこともありますが……。時間外労働は少なくするよう元々厳しく言われていたので、周りの人もできていると信じたいです。

D 私の場合、4〜5月は残業が減りましたが、6月に入って少し増えました。普通の日勤帯に働いています。時間の管理はパソコンのオン・オフです。

──仕事とプライベートの区別がつかないようなことは?

C すごく感じます。業務が終わってパソコンを閉じても家にいるので、仕事が続いている感じがして微妙な気持ちです。しかも、外出自粛要請があって平日も土日もずっと家にいたので余計にそう感じました。

今は月に1〜2回会社に行っています。通勤は嫌なのですが、家に帰ってくると仕事が終わったという感覚はあります。テレワークでも外出できれば気持ちもだいぶ違うのですが……。

B 妻が時短のテレワークで働いています。出社していれば退社後に仕事を頼まれることは少ないのですが、テレワークだといつでも連絡を取れるので仕事を頼まれがちです。

──「つながらない権利」も検討する必要がありそうですね。

業務上での工夫

──業務上、工夫したことは?

B テレワークだとちょっとしたコミュニケーションができなくなるので、話したことを言語化する工夫を推進しました。

会議の際は打ち合わせの目的や出席する人を明確化するようにして効率化を図っています。

C 会話を積極的にするよう心がけています。例えば、雑談をする時間や進捗確認をする時間をあえて設けたり。週に1回はカメラをオンにして顔を見て話す時間もあります。

A ウェブ会議ツールが浸透しました。日々工夫しながら使っている感じです。チャットのやりとりが長く続くなら電話するとか。

4月から新しい上司になったのですが、フリートークの機会を設けて、メンバーがお互いを知る機会をつくったり、いろいろ工夫しています。

D 「報・連・相」に加えて、「確認」を徹底しています。直接会えないので、意思疎通はより手厚くするようになりました。メールだけではなく声での確認は大切ですね。

評価の仕組みは変わるか

──テレワークで仕事の評価は変わっていくでしょうか。

B その人の仕事の出来をより評価する方向に変わると思います。外資系のような評価スタイルが広がっていくのではないでしょうか。

C まだわかりません。現場作業のようにテレワークができない職種もあるので。一方でテレワークができる職種向けに新しい評価基準ができるかもしれません。

A 今の評価制度は、期初に上司と目標を決めて期末にそれを評価するというプロセスです。目標の立て方は変わるかもしれませんが、テレワークになったから評価のプロセスが変わるようには思えません。

D テレワークだと仕事のプロセスが見えづらくなるので、評価のあり方も、仕事のプロセスではなく結果で評価する流れが強まるのではないかと感じています。

──テレワークができないことによる職場の不満はありますか?

B 委託先のメンバーも含めて全員がテレワークをしているので、そういう不満は聞いていません。

C テレワークそのものより、ウイルスの感染拡大という状況で職場に行かなければいけないことに対する不満はやはり多いです。一方でセキュリティーの関係で出社しないと業務ができない職場もどうしてもあり、会社も対策はしていますが、不安をゼロにすることは難しいです。

A 雇用形態で対応が異なるようなことはありませんが、労働組合にも不安が寄せられるので会社と協議しています。

──外出自粛要請の中での組合活動の難しさも顕在化しましたね。

A 社員が会社の上層部に自分の思いをダイレクトに伝える機会が増えています。労働組合としても組合員との新しい交流のあり方を検討していきたいと考えています。

テレワークを続けたい?

──最後になりますが、今後もテレワークを続けたいですか?

B 続けたいです。個人的にもチームとしてもメリットがあったと思います。テレワークが一般化したこともよかったと思います。テレワークを続ける人がいれば、社会の雰囲気も変わっていくと思います。

C 続けていきたいのですが、毎日ではなく週に1〜2回とか回数を決めた上で続けていきたいです。

A テレワークでも仕事ができることがわかったので、私もバランスよく続けていきたいです。

D 本音と建前があって。個人的には続けたいですが、仕事的には出社しないといけない場面も増えるだろうと思います。

──本日は貴重なお時間をありがとうございました。

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