巻頭言2020.11

コロナ禍で変わる仕事の世界

2020/11/13

コロナで進む労働の自動化「8500万人失業」の指摘も

パンデミック宣言(3月11日)からはや8カ月、世界の感染者数は4700万人を超え、死者は120万人を超えた。至近の報道では、南アジアやアフリカ地域の感染爆発、さらには第2波の拡大期を迎えている欧州各国のロックダウン等も報じられる中、拡大防止と経済の両立に向けた各国の思考錯誤が続いている。

このような中、『世界経済フォーラム』が発表(10月21日)した“仕事の未来2020”が世界の関心事となっているが、このレポートは、約300のグローバル企業(全社従業員の合計は800万人)への調査をベースに、技術革新が労働市場に与える影響をまとめたものである。

その概要は、

(1)コロナ禍により労働の自動化が急伸し、2025年までに8500万人が失職。その職種は、データ入力、秘書、給与・会計、営業や総務

(2)ロボット革命により9700万人分の新たな仕事が創出される。リスクにさらされるコミュニティーに対する企業や政府の支援が必要

(3)2025年には、分析思考力や創造性、柔軟性といったスキルの需要が増大し、データやAI、コンテンツ、クラウドコンピューティングにかかわる求人が増加する

(4)競争力を持った企業として生き残る条件は、従業員のリスキリング(再訓練)とスキル向上への投資

──の4点であるが、多くのメディアが報じた『8500万人の失業』もさることながら、近い将来において需要が高まる仕事やスキルとともに、改めて“リスキリング(再訓練)”の重要性が強調されている点を凝視しておきたい。

特に、公的資金の活用企業が2割にとどまる現状とともに、(1)失業時の強力なセーフティーネットの整備(2)トレーニングシステムの改善(3)投資を呼び込むインセンティブの重要性(4)マネジメント・指導・意思決定・コミュニケーション等のタスクでは人間の相対的な優位性が保持される(5)エンジニアリング・クラウドコンピューティング・製品開発等の分野、グリーンエコノミー、データやAIにかかわる職種の需要が高まる──との指摘であり、介護・保育・看護などの“ケアエコノミー”、第4次産業革命関連の“テクノロジー業界”“コンテンツ創造の分野”で『9700万人分の新たな仕事が生み出される』との推計を含め、今後の重要な視点として留意しておきたい。

危機を乗り越えるため労使の知恵出しが不可欠

さて、この時期、日本企業の多くが「中間決算」を発表するタイミングにあるがコロナ禍の影響を受けて大幅な「減収・減益基調」となっている。

失業・廃業の急増や人員整理、採用内定の取り消しや自死の増大等が連日報道される中、情報労連傘下の各加盟組合、とりわけ、中小組合に対置する企業の業績悪化は顕著であり、まさに“正念場”を迎えている企業も少なくない。

この間、情報労連としては、スケールメリットを生かした支援策等、進めてきたところであるが、今こそ、“乗り越えるために何をなすべきか”労使の知恵出しが不可欠な時期。十分な論議と認識合わせを要請しておきたい。

野田 三七生 (のだ みなお) 情報労連中央執行委員長
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