特集2021.08-09

国内外の情勢から
平和を見つめ直す
自由や民主主義、人権から考える
労働組合の平和運動の強みとは?
職場の仲間や家族に平和の大切さを語り継ぐ

2021/08/16
労働組合はなぜ平和運動に取り組むのか。労働組合が平和運動に取り組むことの強みとは何か。労働組合の先輩に聞いた。
安永 貴夫 連合副事務局長
(情報労連・NTT労組出身)

身近な人に語り継ぐ強み

労働組合の平和運動の強みは、組合員のネットワークを生かせることです。

組合員はたくさんのネットワークを持っています。職場の仲間だけではなく、家族・友人。労働組合は、そのネットワークを使って、平和の大切さを語り継ぐことができます。

例えば、見ず知らずの人から聞いた話より、身近な人から聞いた話の方が伝わりやすいですよね。街宣車から聞こえる話より、身近な人の話の方が心に響くものです。

平和行動では、組合員の皆さんにさまざまなことを感じてもらいます。沖縄では米軍基地の広さや戦闘機の爆音、ガマの暗闇や湿気。広島や長崎では、街の中心地に原爆が落とされたことがわかります。北海道では北方領土との距離感を体感できます。

組合員の皆さんに戦争の悲惨さや平和の大切さを体感してもらい、それを組合員から身近な人たちに伝えてもらう。それは、学校教育やテレビなどとは違う形で、社会に広がっていきます。

NTT労組は「ピース号」、通建連合は「ピースフリッパー」という名前で、組合員の子どもに広島や長崎に来てもらい、原爆被害の実相などを学んでもらう活動を展開しています。

その活動に私の長男が小学5年生当時、参加しました。その後、高校生になり、家族で帰省する際、長男が広島の平和記念資料館に立ち寄りたいと言いました。そこで長男は、次男と三男に原爆被害のことなどを説明したのです。次男や三男にとって、兄から聞く戦争の話は、学校で習うものとは違うものだったはずです。身近な人から戦争の記憶を語り継いでいくことの重要性を感じました。これが労働組合の平和運動の強みだと思います。

各地に残る戦争の記憶

私自身の話をすれば、私の祖母は戦争未亡人でした。祖母は、私の母がおなかの中にいるときに夫を日中戦争で亡くしました。祖父の葬式は地域を挙げて行われたのですが、祖母は「葬式はいいから夫を返してほしい」と思ったそうです。そういう話を聞かされてきたことが、私の平和運動のベースにあります。

私は山口県の出身です。山口県は広島県の隣県というだけではなく、県内に造船所があることから、造船業が盛んな長崎県とも深いつながりがあります。そのため、原爆投下後には広島県や長崎県からたくさんの人が避難してきました。

そうした経緯もあり、山口県では、被爆者支援や核兵器廃絶運動が積極的に展開されてきました。山口市の湯田温泉地区の一角には、山口県内の被爆者の保養施設および平和運動の拠点として、「ゆだ苑」が1968年に建設されました。さらには、1973年、山口市内の病院の跡地で、ヒロシマで被爆し搬送された人たちの遺骨が見つかったことから、翌年に原爆死没者を追悼する石碑が建てられました。山口市では、遺骨が見つかった9月6日を「ヒロシマデー」と名付け、毎年式典を行っています。

このような戦争の記憶を語り継ぐ施設などは全国各地にあるはずです。住んでいる地域の戦争の記憶を学び、次世代につないでいってほしいと思います。

平和なくして労働運動なし

労働組合の先輩からは、平和運動においては語り継ぐ活動が大切だと言われ続けました。ですから、皆さんにも、語り継ぐことの重要性を訴えたいと思います。

労働組合がなぜ平和運動に取り組むのかとも聞かれます。私たちが春闘で賃上げに取り組めるのも、そのベースに平和があるからです。労働組合運動の根本にある平和を守らなければ、労働組合活動は展開できません。「平和なくして労働運動なし」。労働運動と平和運動をセットで前進させることが大切だと思います。

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