「推し」の力を組合活動に生かす
組織開発・モチベーションの心理学と労働組合「就業者ファースト」のテレワークで
帰属意識を高める
ツールを活用して関係性を保つ工夫を
事務局長
テレワークの生かし方
テレワークが広がったことで、従業員の帰属意識の低下を心配する声があります。かつては出勤するのが当たり前だったのに、コロナ禍になって、姿が見えなくなったり、声が聞こえなくなったり──。以前の働き方とのギャップが、そうした声につながっているのかもしれません。
ただ、テレワークが広がった今、従来の働き方に戻せばいいというわけではありません。テレワークは人材確保などのためにも大切です。
テレワークを導入する際に大切なのは、「就業者ファースト」の考え方です。テレワークを導入することで、働く人のワーク・ライフ・バランスを実現させ、モチベーションの向上を図り、それが企業業績の向上につながる。テレワークはそうした好循環を実現するために活用するツールです。すべての仕事に導入したり、効率を下げてまで導入したりする必要はありません。
テレワークでも自分の意見を言ったり、相手の意見を聞いたりすることで仲間意識を醸成することは可能です。テレワーク協会が実施するオンライン研修でも、ブレイクアウトセッション機能を活用して、4〜5人で意見交換する時間を意識的に設けるようにしています。
他方、テレワークだと新しいアイデアが出づらいという指摘もあります。そのためオフィスの機能を見直す企業もあります。出勤することにディスカッションや交流するという意味を持たせ、オフィスのレイアウトなどを見直す企業もあります。テレワークの存在を前提にコミュニケーションをどう最適化するかが問われています。
労働組合活動への展開
テレワークが広がる中、労働組合活動はどう変わるべきでしょうか。例えば、オンラインのツールを活用すれば、場所や時間に関する制約が少なくなり、組合活動に参加する選択肢を増やせます。また、オンラインなら違う県域や分会の対話会に参加することで、交流の幅を広げることもできます。
対面よりもチャットの方が意見がたくさん集まるという事例もあります。オンデマンドの説明とチャットでの質問の受け付けなどを組み合わせれば、組合員の意見をより多く集められるかもしれません。オンラインの対話会でも組合側が一方的に説明するのではなく、ブレイクアウトセッションの機能なども活用して、発言の機会を増やすとよいかもしれません。
対面で集まれる機会があれば、説明の時間よりも交流やコミュニケーションの時間を意識的に増やすという工夫も大切でしょう。
テレワークの研修会では、若手社員が上司への連絡をためらう事例をよく聞きます。そのため、スケジューラーやオンライン状態を見て空いていれば、「いつでも連絡してもいいよ」「迷ったらすぐに声を掛けて」というメッセージを若手社員に伝えることが大切だと言っています。労働組合への質問や相談もいつでも連絡してというメッセージを発信することが大切ではないでしょうか。
テレワークの導入によってコミュニケーションのあり方は変わりましたが、その分、使いやすくなったツールもあります。それらのツールを活用して従来と変わらない関係性を保つことが求められています。