特集2023.10

介護に備える
介護を支える
「ビジネスケアラー」急増時代に向き合う
介護にかかる
お金はどれくらい?
早めの備えをしておこう!

2023/10/12
介護が始まったら実際にどれくらいのお金がかかるのだろうか。早めの準備のためにもシミュレーションしておこう。
中島 豊一 特定社会保険労務士/
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)

要介護になった場合に備える

ご自身やご両親などが要介護状態になった場合の準備として重要なことは次の三つです。

(1)介護はいつ始まるか・いつ終わるのかわからない

介護はいつ始まるかわからないからこそ早めに準備し、介護が長期間に及ぶことを想定しておく必要もあります。この場合、(1)公的介護保険に民間介護保険を上乗せして準備する、(2)自分の職場の介護休業制度を確認するとともに、介護休業を安心して取得できる職場であるか確認する、(3)兄弟姉妹親戚と仲良くする、(4)介護される人が住む近隣の人たちと仲良くする──ということが大切です。

(2)介護離職はしない

両親などが要介護状態になった場合、「介護離職」はしないことをお勧めします。介護には必ず「お金」が必要です。収入が途絶えて貧困に陥れば共倒れとなります。仕事と介護を両立させることこそ、一見非情に見えて実はお互いの幸せにつながると言えます。

(3)介護休業期間は介護に専念する期間「ではない」

介護はいつ終わるのかわかりません。ですから介護休業期間は介護に専念する期間ではないと捉えることが大切です。介護休業期間は、(1)地域包括支援センターに相談する、(2)介護サービス計画を作成する、(3)地域の介護施設や施設の利用料金を確認する、(4)兄弟姉妹親戚ならびに介護される人が住む近隣の人たちと協力体制を整える──など、介護が長期間に及ぶことも想定して準備する期間です。

介護にはどのくらいの
お金がかかるの?

(1)公的介護制度と自己負担

公的介護保険による介護サービスを受けた場合の自己負担は次のとおりです。

(1)介護保険から介護サービス費が支給されるが、要介護度別に支給限度額が定められており(表1)、実際の費用が支給限度額を超える場合、超えた部分は全額自己負担となる。

(2)支給上限額以内の介護サービス費に対しては所得に応じて1〜3割の自己負担があるけれども、所得区分に応じて1カ月単位に自己負担限度額が定められている(高額介護サービス費制度、表2)。

(3)ショートステイなどの滞在費・食費などは自己負担。

(4)車いすなど一定の福祉用具は公的介護保険の貸与制度がある。

(5)ポータブルトイレや入浴用いすなど利用者の肌が直接触れるものは特定福祉用具購入費の支給対象となる(図表2)。

(6)自宅改修などについても公的介護保険の対象となる場合がある(図表2)。

表1 支給限度額
表2 自己負担限度額

(2)公的介護保険からの給付と自己負担額の具体例

Aさん(66歳、男性、自己負担割合2割)は、1年前、脳梗塞で倒れ右半身まひと言語障害が残り、要介護3と認定されました。そこで、自宅で介護を受けながら「A−1訪問看護、A−2訪問による言語訓練、B訪問介護、Cデイケア(通所リハビリ)、Dショートステイ、E車いす・介護ベッドのレンタル」(図表1)を利用することにしました。また「ポータブルトイレを購入し、住宅改造で玄関アプローチと室内の段差解消」(図表2)を行いました。この場合の自己負担の合計額(目安)は図表3のようになります。

図表1 介護保険からの給付と自己負担額のケース(1カ月単位)
※1所得区分に応じて1割・2割・3割の自己負担があります
※2ショートステイの滞在費・食費(2,500円×4日)、デイケアの食費(550円×13回)は介護保険対象外です。
図表2 介護保険の給付対象となるその他の費用(初期費用の目安)
※所得区分に応じて1割・2割・3割の自己負担があります
図表3 最終的な自己負担額の目安(1カ月単位)
※自己負担割合が3割の方でも年収約770万円未満であれば自己負担限度額は2割負担の方と同額ですので「図表1」の金額は2割の方と同額になります。年収約770万円以上の場合は表2のとおりとなります。
図表1、図表2、図表3は、(公財)生命保険文化センター「介護保障ガイド」(2021年7月改訂版)をもとに作成

電通共済生協グループの
「介護特約」

民間の介護保険・介護特約の加入率は9.5%です(生命保険文化センター「令和4年度生活保障に関する調査」)。そこで、民間の介護保険を検討中なのであれば、「電通共済生協グループ」が提供する「医療・傷害Myセーフティ」に「介護保障特約」を付加する方法があります。

労働組合がお役に立ちます

労働組合は、労働者が安心して介護休業が取得できる職場づくりに向けて、(1)人員配置の最適化、(2)業務プロセスの見直し、(3)部門横断的な協力体制、(4)従業員の介護休業制度への理解促進──など、介護休業を取得しやすい職場環境の改善に向けて経営側としっかりと話し合い、ルール作りや施策の実行に取り組んでいます。労働組合は、この取り組みは企業の社会的評価を高め、従業員のモチベーションを高め、企業業績の向上につながると考えています。経営側もこの点は認識一致するでしょう。とはいえ、介護休業を取得される方も、仲間の理解と協力への感謝の気持ちを忘れないことが大切です。

労働組合は「医療・傷害Myセーフティ」の「介護特約」により経済的支援の仕組みをつくるとともに、経営側との話し合いを通じ職場環境改善に取り組んでいます。介護休業など介護について困りごとがありましたら何なりと労働組合にご相談ください。

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