特集2024.01-02

2024春闘へ
賃上げを勝ち取る
労務費の適切な転嫁で賃上げを
政府の「価格交渉指針」のポイントは?

2024/01/17
政府は11月29日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を取りまとめた。
中小企業での賃上げに向けて、この指針の活用がポイントとなる。指針の概要を紹介する。(編集部)

政府が価格交渉を後押し

賃上げの裾野を広げるためには、中小企業における賃上げが欠かせない。その際に求められるのは、賃上げにより上昇した労務費を製品やサービスに適切に転嫁することだ。そこで生じる価格交渉では受注者が不利になることがあるため、政府は11月29日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を取りまとめた。

概要を紹介しよう。指針は最初に、労務費の転嫁に関する基本的な考え方を示した上で、発注者としてとるべき行動や、受注者としてとるべき行動およびそれらの具体例などを例示している。

基本的な考え方では、物価に負けない賃上げのためには雇用の7割を占める中小企業において賃上げで生じた労務費の上昇を製品・サービス価格に適切に反映できるようにすることが必要と指摘。中小企業が賃上げの原資を確保できる取引環境を整備することが重要であるとした。

その上で指針は、発注者が指針で示した行動に沿わないような行為をし、それが公正な競争を阻害する恐れがある場合は、公正取引委員会で独占禁止法や下請代金法に基づき厳正に対処していくことを強調している。

発注者がとるべき行動

続いて事業者がとるべき12の行動指針を提示している。

発注者としてとるべき行動としては六つの行動指針が挙げられている。一つ目は、価格転嫁の受け入れ方針を経営トップまで上げて決定することなど、経営トップのかかわりを強調する項目だ。

次いで、受注者からの求めがなくても発注者から協議の場を定期的に設けることや、受注者が最低賃金や春闘などの公表資料を用いて価格転嫁を説明する場合は合理的な根拠があるものとして尊重することなどを行動指針として挙げた。

また、受注者から労務費の上昇を理由に取引価格の引き上げを求められた場合には、協議のテーブルにつくこと。さらには労務費の転嫁を求められたことを理由として、取引を停止するなどの不利益な取り扱いをしないことも、行動指針として挙げている。

受注者としてとるべき行動としては、発注者との価格交渉に向けて行政機関などの相談窓口を積極的に活用し情報収集すること。労務費の上昇傾向を示す資料として最低賃金の上昇率や春闘の賃上げ率など公表資料を用いることなどを挙げている。

労働組合の対応

政府の指針の取りまとめを受けて連合は11月29日に事務局長談話を発出。この中で指針について、「2024春季生活闘争における基盤整備の重要課題の一つとして求めてきたものであり、2023闘争を上回る賃上げ実現に向けた足がかりになるものとして評価できる」として、周知・活用を図っていくとした。

また、連合は12月7日に開催した「格差是正フォーラム」でこの指針を中心的に取り上げた。フォーラムの冒頭であいさつした連合の清水事務局長は、「2024春闘は、経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換を図る正念場であり、その鍵は、2023春闘を上回る賃上げを実現することにある」とした上で、「労務費の価格転嫁をいかに進められるかが今次春闘の最大のポイント」と強調した。フォーラムでは、中小企業庁や公正取引委員会の担当者が取引の適正化や指針に関する説明を行った。

このほか連合は、全国知事会に対し「労務費を含む適正な価格転嫁」の実現に向けた要請を実施するなど、労務費の転嫁に向けた行動を積極的に展開している。

情報労連は、2024春季生活闘争方針案において取引の適正化に向けた対応の強化が必要として、政府の指針などを踏まえ、取引の適正化について全国単組に対置する企業を中心に要請を行う方針を掲げている。

「価格交渉指針」を積極的に活用していこう。

特集 2024.01-022024春闘へ
賃上げを勝ち取る
トピックス
巻頭言
常見陽平のはたらく道
ビストロパパレシピ
渋谷龍一のドラゴンノート
バックナンバー