特集2024.01-02

2024春闘へ
賃上げを勝ち取る
企業の生み出す付加価値を分析し
適正な分配につなげよう!

2024/01/17
春闘を展開するに当たっては、労働組合による経営(財務)分析も重要になる。具体的に何をすればいいのだろうか。情報労連の石井アドバイザーに寄稿してもらった。
石井 繁雄 情報労連アドバイザー
特定社会保険労務士

経営分析の必要性

春闘とは、新しい年度の経営活動の中で生み出される付加価値(パイ)の配分交渉といえます。

労働組合の経営(財務)分析の目的は、春闘交渉に役立てることです。労使交渉の中で、年間の事業計画について話し合い、企業として新たに生み出す付加価値の中から、労働者への配分(賃金、年間一時金)を決めることになります。そのためには経営側の支払い能力を、組合としても見極めることも重要です。

仮に経営状況が悪化していて大幅に付加価値が低下傾向にあるとしても、経営分析によって従業員の削減などの合理化提案が予測でき、早めに対策を準備することも可能となります。

付加価値分析の方法

付加価値とは、文字どおり新たに付加された価値のことです。企業は外部から原材料等を購入し、企業の内部で加工し付加価値を得ることになります。付加価値は、外部からの購入費用を総売上高から差し引いた差額ということになるため、「付加価値=売上高──外部購入費用」という式で表すことになります。

企業の経営状況を考えるとき、売上高や利益に目を奪われがちですが、売上高は、原材料費等の外部の企業が創り出した価値が含まれており、これらを売上高から差し引いて残った価値が、企業自らが創造した価値であり、付加価値こそが企業の真の実力を示すものといえます。

労働組合という立場から経営分析を捉えた場合、付加価値が労働へ、どの程度分配されているか、生産性の上昇分が労働の成果として適正に分配されているかということが重要になります。付加価値の労働への分配が賃金水準の決定に大きな役割を持ち、生産性の上昇分がどれだけ労働へ分配されるかが賃金上昇に影響を与えるからです。

労働と資本への分配がどのように行われれば適正な分配といえるでしょうか。労働者の努力が十分に報われなければ、労働意欲が低下し、モラルの低下にもつながりかねません。質の高い労働力を期待するならば、労働者が納得し得る分配が必要となります。同時に資本への分配を怠るならば、粗悪で魅力のない製品を販売することにもなりかねません。適正な分配について労使双方が十分に論議することが重要です。

付加価値を計算してみよう!

労使交渉で財務データを入手することができたら、日銀方式の計算式(表1)を活用して、付加価値を計算してみましょう。その上で、付加価値計算シート(表2)を作成し、付加価値額、労働生産性(=一人当たり付加価値額)、労働分配率などを計算し、交渉の材料にしましょう。算出方法がわからない場合などは情報労連にご相談ください。

表1 付加価値の算出式(日銀方式)
表2 付加価値計算シート
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