UNI世界ICTS部会大会
4月15〜17日、南アフリカ・ケープタウンで、世界49カ国76組織から代議員・オブザーバー・ゲスト約200人が参加し、「UNI世界ICTS部会大会」が開催された。情報労連からは、全国単組からの参加を得て、8人が参加した。多忙な中、参加いただいた各位に感謝申し上げる。
部会大会は、4年ごとに開催されているが、コロナ禍の影響もあり、5年ぶりの開催となった。
情報産業を巡る動向は、テクノロジーの目覚ましい発展により、グローバル化が加速、世界規模での弱肉強食の激しい競争と合従連衡の激しい産業となっている。デジタル化の進展は、人々にとって、これまで想像もつかなかった新サービスにより、雇用の創出や生産性・効率化にも貢献し、社会的課題の解決や今後の経済発展の基盤になると期待される一方で、既存雇用や働き方への影響、プライバシー・人権や倫理面など、負の影響が懸念され、新たな脅威になり得ると言われている。
この変革の流れは止められないだろうが、労働組合には、デジタル時代における技術革新に適応しながら、安心して働き・生活していく労働者の権利確保が求められる。UNI ICTS部会は、この国際的課題に対して連帯して役割を果たさなければならない。
今回のICTS部会大会では、デジタル時代のディーセントな働き方をUNIに加盟する組織の連帯した取り組みの重要性を確認した。とりわけ、AIに対する労働組合の積極的な関与が求められる。大会のセッションにおいて、AIの進化に対する各国労働組合の取り組み状況が報告され、中でもアメリカCWAからの「AI原則および提言2023年」としてまとめられた政策集の報告では、新しいテクノロジーへの労働組合の発言権を持つことが重要として、実施段階から労働組合が関与し、解雇を許さない、福利厚生の低下を許さない、モニタリングの制限、データ使用の制限、教育プログラムの充実──などに積極的にかかわることが重要だと強調された。
日本の産業政策に遅れ
日本においても昨今、急速に進展した生成AIを活用する企業が多く現れており、情報産業の主要会社もAIの開発を強化している。政府も産業・経済発展、優位性の確保などから、AI整備などの支援を打ち出している。今後さらに本格化していくだろう。
しかしながら、前述したAIがもたらす多くの懸念事項を放置したまま伸展していくことは許されない。部会大会では、アルゴリズム管理による労働者への実態も報告された。欧州などでは、すでに法的な整備も進みつつある。日本は、そうした整備は遅れている。人口減少・人手不足が深刻化する日本において、AIがもたらすメリットは大きいが、労働者の権利、倫理的規制、責任の明確化など負の影響に対する措置を急がねばならない。今回の報告を受けて、労働組合においても欧米各国の取り組みからは、周回遅れを実感する。情報産業を基盤とする情報労連において、産業政策・ルールづくりとその実効性を高めていきたい。
デジタル時代におけるディーセントな働き方の重要性とその責任を痛感した今回の部会大会であった。