特集2024.05

つながりを生むレク・文化活動を考える
労働組合「レク」図鑑!
レクリエーションでチーム力を高める
レクを職場につなげる工夫が大切

2024/05/14
職場の多様化などが進む中で、メンバーの「チーム力」を高める必要性が高まっている。
レクリエーションはチーム力の向上にどう関係できるだろうか。チーム力を研究する識者に聞いた。
青島 未佳 一般社団法人チーム力
開発研究所 理事

チーム力に集まる注目

これまで日本の教育研修は、個人の能力を高めるOJTを中心とした人材育成が中心でした。一人ひとりの能力を上げることはもちろん大切ですが、一人ひとりが集まってチームになったときに1+1以上の力を発揮するための役割分担や連携の仕方といった教育訓練も大切です。チーム力を高めるための組織開発は欧米では以前より注目されていましたが、ここ10年日本でも力が入れられるようになっています。

チーム力に注目が集まる背景にはいくつかの要因があります。一つは、グローバル化で確実な成長産業がなくなり、組織のメンバーが多様化する中で、チームの役割が高まっていることです。もう一つは、「働き方改革」を進める上でこれまでと同じ人数で生産性を上げるためにチーム力が求められていることです。

チームとは、メンバーが共通の目的を持ちながら、それぞれが持つ役割を超えて協力し合い、目標を実現する集団のことを指します。チーム力が高い状態とは、個人が尊重される感覚を持ちながら目標に向かって切磋琢磨できる、安心と挑戦の両輪がうまく回るような状態だといえるでしょう。

チーム力を高める手法の一つは「組織開発(Organization Development:OD)」です。診断型の組織開発の手法では、まずチームの現状や課題を分析するためにアンケートやインタビュー調査を行い、その結果をチーム全体にフィードバックし、その結果をもとにアクションプランを立てて、実行し、評価するというPDCAサイクルを回すというやり方が取られることが一般的です。製造現場などでよく用いられるQCサークルとの違いは、QCサークルは製品の品質管理などが主な対象ですが、組織開発は組織が行動するプロセスに焦点を当てて改善する取り組みだと言えます。

ストーリーの共有

チーム力を高めるためには、チームのメンバーがその取り組みに対してオーナーシップを持って行動できるようにすることが重要です。

人は、その行動がどんなにいいことであっても、人から言われるとやりたがらない傾向がある一方、自分で決めたことなら好んで取り組む傾向があります。人から指示されたことより、自分たちで決めたことの方が目標を達成する可能性が高まります。

そのためには、その活動になぜ参加するのかという理由について納得してもらうことが大事です。その活動がなぜ必要なのかというストーリーを共有することが欠かせません。そうした土台があってこそ、さまざまな活動に参加してもらえます。労働組合の活動でも何のためにそれをするのかというストーリーの共有が重要だと思います。

レクリエーションとチーム力

ではレクリエーションは、チーム力とどのような関係があるでしょうか。

雑談のようなインフォーマルな場は、チーム力を上げるために効果的であることがこれまでの研究でわかっています。チーム力を高めるためにも、インフォーマルな場を意図的につくっていくことが大事だといえます。

その意味では、レクリエーションもインフォーマルな場の一つといえます。レクでは、職場では知らなかった相手の側面を知ることができます。このことには二つの良いことがあります。一つは、職場で何かあったときに相手の背景情報を推察できること。これによって仕事が進めやすくなったり、互いの許容範囲が広くなったりします。もう一つは、親近感が湧くということ。人は、仲間だと思う人に感情的に近づく傾向があります(内集団バイアス)。仲間内の身びいきが強まり過ぎるとよくないですが、場を一緒に過ごすことには仲間意識を醸成する効果があるといえるでしょう。

また、レクリエーションでは、会社の肩書きを外した関係性をつくりやすくなります。そうした場は、心理的安全性を確保しやすい場でもあります。そこで心理的安全性を高めることができれば、発言しやすい職場づくりにもつながるでしょう。ただレクの場に会社の力関係や肩書きを持ち込んでしまうと特に若手からは敬遠されてしまうため、会社内の序列を意識させないような雰囲気づくりが大切です。

問題は、そこで生まれた関係をレク以外の場につなげることができるのかということです。レクの場では仲良くなっても会社に戻った瞬間に通常の序列に戻ってしまうということはよくあります。レクで生まれた雰囲気を職場にどうつなげていくかが課題です。チーム力を高める手段としてレクリエーションをするだけでは不十分だということです。

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日本では、組織開発にお金をかけるという発想がこれまでは強くありませんでした。それはトップが命令すれば部下はそれを理解して動くだろうという暗黙の理解が前提となっていたからかもしれません。一方で欧米では組織開発にお金を使います。それは人種や宗教なども含め多様な人が働いていることが前提にあります。日本も職場の多様化が進んでいます。意識的にチーム力を高める取り組みが重要になっています。労働組合の活動も同じことが言えると思います。

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