つながりを生むレク・文化活動を考える
労働組合「レク」図鑑!レクが生み出す「弱いつながり」
あいさつできる関係ができれば大成功
──レクリエーション活動をはじめ、つながりをつくる活動の意義はどこにあるでしょうか。
職場などの組織がよく機能するかどうかは、協働の巧拙で決まります。協働の質にかかわるものの一つが情報の伝達ですが、大事な情報は、必要な時にすぐにもらえるわけではありません。大事な情報を必要な時に得るためには、普段から情報の流れを良くしておく必要があります。
例えば、手持ちの情報では解決できないような困りごとが職場で起きた時、誰に相談すべきか知っているかどうかは大切な問題です。多くの場合、初対面の人に深刻な話をするのは難しいものです。そのため労働組合のレクリエーション活動などを通じて、あいさつ程度でもできる関係を備えておくことは、コミュニケーションの下ごしらえとして重要な意味を持ちます。
──あいさつ程度のつながりも大切ということですね。
人と人とのつながりには、アメリカの社会学者であるグラノヴェッターが提示した「弱いつながり(weak ties)」と「強いつながり(strong ties)」に関する理論があります。これは「弱いつながり」の方が「強いつながり」よりも情報伝達などの点において社会的な機能を有することを明らかにした理論で、社会に大きな影響を与えました。
「弱いつながり」のメリットは、新しい情報が流れやすいことです。一方で、「強いつながり」は信頼感を醸成して一体感を生みますが、その中では似たような情報が交換されるため情報があまり変わり映えしないものになるという弱みがあります。
あいさつできる関係は、「一見弱くても、重要なつながり」だといえるでしょう。その関係があることは、組織にとってとても良いことです。
──「弱いつながり」をつくるには?
あいさつできる関係性が組織にとって重要だとはいえ、あいさつを強制されるのは嫌だと感じる人が多いでしょう。そこでレクリエーションのような活動を生かすことができます。例えば、レクリエーションの中で互いの名前を呼び合うなどのルールを設定し、遊びの一つとして行えば、その後の職場においてもあいさつをしやすくなるかもしれません。
労働組合のレクリエーション活動を通じて、新たな出会いの可能性があるのはとても大切なことだといえます。人間関係が広がっていく感覚は、多くの人にとって楽しいものだと思いますから。重要な情報が流れるような信頼に基づく「強いつながり」は必ずしもすべての人と持つ必要はありません。縁があり、タイミングの合う人がいれば、その中で自然と育めばいいのだと思います。
──労働組合は「強いつながり」を求めがちだったかもしれません。
「強いつながり」を強いると、それに対するアンチも生まれます。仲良くなるのはいいですが、仲良くさせるのは違います。レクリエーション活動にしても、参加してみたら楽しかったくらいの感想を参加者に持ってもらえればそれでいいと思います。企画する側からすると少し寂しいかもしれませんが、活動に参加しない人の態度を許容できず、敵対関係になってしまうのはもったいないことだと思います。
──活動に参加しない人への対応は?
レクリエーションなどの催しを企画すると、活動に参加しない人がどうしても出てしまいます。そういう人を無理に参加させようとすれば反発を生んでしまうので、結局は参加してくれる人で開催するしかありません。ただし、そうであっても参加しない人たちに厳しくしたり、敵対したりしないことが重要です。労働組合は、優しい集まりであってほしいと思います。
参加者のネットワークを広げていきたいのならば、職場のキーパーソンのような人への働き掛けがよいでしょう。いわゆる「インフルエンサー」のような人がいると、周囲の人も参加しやすくなります。職場の「連結ピン」になってくれる人を増やしていけるといいと思います。
──レクリエーション活動の主催側に向けてアドバイスを。
レクリエーションをするにしてもあまり肩肘張る必要はないと思います。コミュニケーションは促進しなければいけないと思うほど難しくなってしまいます。まずは主催の方々が目の前のイベントを楽しむことが肝要と思います。また、仮に参加者が少ないとしてもシリアスになり過ぎず、問題解決について楽しく話せる関係性はやはり大事です。
最初の話に戻ってしまいますが、まずは、「あいさつできる関係ができたら成功」くらいの心づもりでいいのではないでしょうか。あいさつをなめてはいけません。
休日に外で集まるような大掛かりなレクリエーションの前に、職場の会議室などで一緒にお菓子を食べるのもよし、そこで今まで知らない人同士の人たちがあいさつできる関係をつくってくれたら大成功。そのように小さなつながりが生まれたことを喜べればいいと思います。労働組合活動における「弱いつながり」を再評価して、活動に生かしてほしいと思います。