つながりを生むレク・文化活動を考える
労働組合「レク」図鑑!「クミジョ」目線でのレク活動
組合嫌いになってしまう出来事とは?
レク活動の実態
厚生労働省の「労働組合活動等に関する実態調査」(2021年)によると、労働組合活動でこれまで重点を置いてきた事項(複数回答主なもの五つまで)のうち、レクリエーション活動を含む「組合員教育学習活動・文化活動」が挙げられた割合は、7.2%でした。「賃金・賞与・一時金」の90.8%に比べるとかなり低い数値だとわかります。
その一方、多くの組合ではレクリエーション活動が実際に行われています。つまり、多くの組合で行われているのに、重点項目ではないというのが、レクリエーション活動の実態ではないでしょうか。このことからはレクリエーション活動が前例主義になっていることが読み取れます。
レク活動の有用性
かつての労働組合は、レクリエーションを有効に活用していました。例えば、私が調査・研究しているチェーンストア業界では1970年代以降、スキーやバーベキュー、キャンプのような集団型のレクリエーションを山のように開催されていました。当時のチェーンストア業界は成長産業で組合員は休みを取れないくらい忙しい中、組合員が自分たちではできないレジャーを労働組合が引き受けてくれたことで組合の求心力になっていました。
また、1950年代の近江絹糸争議でもレクリエーションは有効に活用されました。この争議では何千人もの女性組合員が100日以上にわたって争議行動を展開しました。しかし当時といえども長期間にわたって組合員の統率を維持するのは簡単ではありません。争議を中断している最中に海水浴レクが行われるなど、組合員の連帯を維持するためにレク活動が使われました。近江絹糸では争議解決後、たくさんのレク活動が展開されました。組合員の団結力の強さの表れだったともいえます。
情報労連の加盟組合もレク活動を有効に活用してきました。それがKDDI労働組合です。KDDI労働組合は、かつてオープンショップになった時代にレク活動を積極的に展開して組織拡大につなげました。最近ではコロナ禍でのオンラインレクが労働組合に組合員をつなぎとめるツールの一つになりました。
このようにレクリエーション活動は、労働組合活動にとって有用なものでしたが、近年は組合員の多様化・個別化などに伴って組合員のニーズにマッチしていないともいわれるようになっています。それはなぜでしょうか。そこで、女性組合役員や女性組合員、つまり「クミジョ」の視点から考えてみたいと思います。
「クミジョ」視点でのレク
私はこれまで100人以上の「クミジョ」からヒアリングをしてきました。その中で今回はレクリエーションに関する意見を紹介します。
まずは公平性に関する問題です。レクには組合費が使われます。レクに参加する人には組合費が使われますが、参加しない人には使われません。そこに公平性の問題が生じます。女性組合員は、家庭責任を抱えて参加できない人も多く、その点で公平性が問われるという意見があります。お金の使われ方も問題です。男性ばかりが参加するイベントにお金が使われていれば不公平感が生じます。
次に企画に関する意見です。先ほど見たようにレク活動がルーティンになり、いつも同じ内容で、同じメンバーしか集まらないということが起きがちです。「クミジョ」はこれを変えないといけないと思って発言しますが、最後は「クミダン」(労働組合の男性役員)の意見で同じ内容になってしまいます。「クミジョ」からは、レク活動すら変えられないのなら組合活動を変えるのは無理というメッセージに見えてしまいます。
お酒が入ることを嫌う「クミジョ」もたくさんいます。労働組合のレク活動にはお酒がつきものです。もちろんお酒が好きでそれによって参加する人もいるのですが、嫌がる人も多くいます。例えば、男性だけだとつまらないから女性にも来てほしいとか、何のために呼ばれているのかと感じる「クミジョ」の意見があります。また、バーベキューなどもそうですが、配膳やお酌など、なぜかみんなの世話役になるような性別役割を求められるのが嫌だという意見もあります。
それから、よく聞く意見は、お酒の場ではハラスメントが多いということです。「クミジョ」からは労働組合内でのセクハラの話をよく聞きます。そういうことが起きるとレク活動どころか組合活動に参加することが恐怖になってしまいます。
このほかにもさまざまな意見がありますが、これらの経験があると「クミジョ」は、組合嫌いの「ユニオンヘイター」になってしまいます。「クミジョ」のヘイトは女性組合員に伝播しますし、「クミジョ」の成り手が減ります。
レク活動の意義
レクリエーション活動には、労働組合に根強い「縦関係」を壊したり、仲間づくりにつなげたりなど、労働組合にとって有用な側面は今も存在します。単なるルーティン活動にならず、なぜそれをするのかという意識をはっきりさせた方がいいと思います。その意味では、組合員の生活や仕事に役立つ学習活動もレク活動の一つになるはずです。「クミジョ」の意見を反映したレク活動を労働組合の活性化に積極的に活用してほしいと思います。